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秘密基地の思い出と、大人になって知る優しい真実
子供の頃、実家の近くにある跨線橋の下に大きな資材置場があって、近所の子供達にとっては格好の遊び場所でした。
自動車は橋上を走っているので安全、さらに歩行者用の細い通路以外は広々と使えて、しかも雨が降っても濡れることはない全天候型です。
そんな恵まれた環境に建築会社の資材が大量に置いてあるのなら、もちろん作りたくなるのが自分だけの「秘密基地」ですよね。
穴を掘り柱を立て、床と屋根も作ります。中に入って居るときに屋根の板が崩れたら大変ですが、そんなことは気にしません。
ちなみに近所の子供達と言っても、実家の辺りは駅裏の飲み屋さんやホテルが集まっている特殊な場所のため、近所に住んでいる小学生は私も含めて10人も居なかったと思います。
みんなで思い思いの基地を作り、また明日遊ぼうと約束して家に帰りました。
翌日、みんなで一生懸命作った基地は跡形も無く、使った資材もすべて元の場所に戻っていました。せっかくあんなに頑張って作ったのに…きっと悪い大人が嫌がらせをしたに違いありません。
私達はめげずにもう一度資材を集め、前の日と同じように基地を作り「また明日」と約束して家に帰りました。
また翌日、やはり同じように、基地はひとつも残っておらず、資材もすべて元の場所に戻っていました。私達もさすがに気落ちして、静かに秘密基地ごっこは終わってしまった…そんな思い出。
その時は、自分たちの夢の城を壊されたようで、とても哀しい思いをしましたが、大人になってやっと分かったのです。本当にいけなかったのは自分達の方だったのだと。
たくさんの資材は子供のおもちゃではなく、建築会社の持ち物であること。そして社員さんが仕事終わりに散らかった遊びの跡を見つけて、手間であろうに綺麗に片付けてくれていたこと。何より、寛大にも私達を見逃して怒らないでいてくれたこと。
もしもその時に怒られていたとして、きっと本当の意味は理解出来ずに、いつまでも嫌な記憶として残っていたかも知れません。
「子供だから気付かなくても仕方ない」ではなく、やはり今思えば当時の私の思いやりと判断力が欠けていたということです。
そっと見守ってくれた心の広い大人の方に感謝して、せめてその優しさを無駄にしないように、この経験を忘れずにいたいと思います。