三重水素(トリチウム)を1 mg摂取するには?
こんにちは。エアーです。最近は処理水の海洋放出の話題がたくさん上がってますね。様々な議論が交わされておりますが、中には本当に?と考えさせられる意見も散見されます。
《ノーベル物理学者の小柴昌俊氏とマックスウェル賞受賞者の長谷川晃氏が2003年に連名で、「良識ある専門知識を持つ物理学者として、トリチウムを燃料とする核融合は極めて危険で、中止してほしい」との「嘆願書」を当時の小泉純一郎総理大臣あてに提出している。そのなかで、トリチウムはわずか1㍉㌘で致死量になり、約2㌔㌘で200万人の殺傷能力があると訴えている。》¹⁾
上記は海洋放出反対の方々が根拠としている記事の一部分です。
「(致死量1 mgというのが本当に正しいのか?という疑問が残るが…)
三重水素(トリチウム)を1 mg…処理水を何リットル飲めば摂取したことになるんだ?」
この分野には素人ですが概算してみました。
①計算結果
三重水素(トリチウム) ³H 放射能 : 3.56 × 10¹⁴ Bq/g ²⁾
ベクレル Bq : 放射能の強さを表す単位であり、1秒間に崩壊する原子核の数で表される
海洋放出される処理水は三重水素(トリチウム)濃度が1500 Bq/L未満となるように海水で薄められます。(ここではトリチウム濃度 1500 Bq/Lとして計算します。)
2)から三重水素(トリチウム) 1 mgの放射能は3.56 × 10¹¹ Bqとなりますから、
3.56 × 10¹¹ Bq / 1500 Bq/L = 2.37 × 10⁹ L 計算間違いでした
正確には 2.37 × 10⁸ Lでした、訂正してお詫び申し上げます。
23.7億リットル2.37億リットルの処理水を飲むと三重水素(トリチウム)を1 mg摂取するという計算になります。ええ、無理ですね!何年かけて飲むつもりですか!
②生物濃縮について
ここで生物濃縮されるんじゃないの?とか、有機結合型(OBT)のトリチウムが~とかの反論が来そうなので調べてみました。
まず、東京電力によるALPS処理水を用いた海洋生物の飼育試験結果です。³⁾
ヒラメ体内のトリチウム濃度は、
育成しているALPS処理水を含む海水のトリチウム濃度以上にはならない。【トリチウム取込試験】
一定期間で、育成環境の海水と同じくらいの濃度に保たれる。
【トリチウム取込試験】
その後、通常の海水へ戻すと、時間の経過とともにヒラメ体内のトリチウム濃度が速やかに下がる。【トリチウム排出試験】
以上から《ヒラメ体内において、トリチウムが蓄積・濃縮されないと考えています。》との見解でした。
さらに東京電力では処理水の海洋放出から海域と魚類・海藻のモニタリングがされており、いずれもトリチウムの有意な変動はないという結果が出ています。
次に、生体内の有機結合型(OBT)トリチウムについて触れられている資料があったので紹介します。⁴⁾
《トリチウム水から有機結合型トリチウムができる反応は、光合成と同位体交換反応が考えられます。》
《どちらの反応も反応速度は非常に遅いので、簡単にはトリチウム水と同じ濃度にはなりません。》
とされています。
こちらの資料では、イギリスやカナダで報告されている生体へのトリチウムの取り込みに関する研究についても触れられています。
《海水のトリチウム濃度変化に対して、魚のトリチウム濃度変化は遅れます。この濃度差によって、トリチウムが濃縮して見えている可能性があります。》
との見解です。
逆にどうやって生体濃縮されるのか記事、文献等があればご紹介いただきたいと思います。