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可愛くない後輩の話

エッセイや日記でちょくちょく登場する職場の後輩くんの話です。
今年の春に人事異動で私は別の部署へ移りましたが、それまで前職場で9年間所属してました。
最初は違う係で仕事をしていましたが、私自身が精神的心身症との診断で病気休暇となり、3ヶ月の病気休暇後復帰したのが別の係での仕事でした。
当時はその業務はもう底辺の底辺で、立て直しが必要な状況でした。
何がなんだか解らない中で、一から勉強し悩み…ある時は上司に放置されていた担当でしたが、結果的に自分には「合っていた」仕事だったと思います。最初の係で仕事していたのがベースで、その人達のアドバイスをするのが仕事でした。時には「何故それをやらないのだろう」と思うこともありましたが、やはり人相手の仕事は何があるか解らず、いつも自分のペースで仕事が出来ないことを知っていたので、その人達に寄り添う立場でいようとしていました。

その担当もいろいろありました。
3人のチームですが、当初1人の男性先輩が仕事をしないのを注意するも結局進展せず、負担が全部私に来てしまった時や(そういう時に限って監査とかある…。)
ある日新規採用で配属された子が、人事の指示で途中にその子が別の部署へ異動となり、別の係にいた業務に問題がある男子をチームに持って行くという話が出ていた時に、「その男子を担当にするなら、今年度は2人で担当します。」と上司と戦ったり(その男子は発達障害があり書類を紛失することで問題視されていました。)、その時にシステムの大幅入れ替えがあって、新システムでのバッチ処理がうまく回らず残業が続いたり、
ある年は、自由な後輩女子ちゃんと、やはり発達に難ありの後輩男子くんとのチームで、その後輩男子くんから「これ以上僕は仕事出来ません」と爆弾発言があったり(結局大幅な分担は私と後輩女子とで分けた…)
一番は、平成30年。
3人のチームで2人が人事異動となった、『衝撃の平成30年度』。
ここだけの話をすると、これまでタイミングを見ては自分も異動希望を出していました。けど受理されることはありませんでした。
本当だったらもっと早くにさよならしてたはずだったのに…。
新しく来る2人を1年でどこまで引き継いでどこまで指導出来るかにかかっていました。
1人はすぐ決まったのですが、もう1人をどうするかで課内は揉めました。揉めた結果、新採を取ることになりました。
その2人が『可愛くない後輩』たちです。

特に一番『可愛くない後輩』である彼は、新規採用後初の人事異動でした。
その彼を仮に『ネコくん』とします。
年相応には見えない童顔で、最初は彼が今年の新採かとよく間違われていました。
前情報で「賢い、仕事出来る、優秀…けれど、冗談が通じない、我関せずなところがある」と聞いてました。確かに第一印象はクールでした。目が笑ってなかったですね。
彼はマスク姿でした。
後で、重度な花粉症だということを知りますが、初めましての挨拶をした際もマスクを取ることなかったので、ちょっと違和感を覚えました。
今は新型コロナウイルスのことがあり、マスク必須の風潮になりましたから注釈も不要ですが、挨拶時に「花粉症なので」って注釈してくれればと思いました。(と後に彼にそう告白しましたけれど…笑)

もうひとり。『可愛くない後輩』として、新規採用された大卒ピチピチの新人がやってきました。その彼を仮に『イヌくん』とします。
そのままバイトに来たお兄ちゃんという印象。
社会人であるという自覚ゼロ…笑。本当に幼く世間知らずな別の意味で可愛い男子がやってきました。
バイト経験はあるというものの、電話応対、言葉遣い…「え?ヤバっ!」「これムズいっすわ~」という口癖。言葉遣いをうるさく言うつもりはなく、とりあえず電話応対だけは気をつけて欲しいと、最初に接遇についてマンツーマンで一から指導しました。

イヌくんについては、まったくの新採だし、会社の組織について、会社での常識、接遇、係での立ち位置、もちろん業務のこと…と丁寧に教えたつもりです。すぐ理解しようとしますが、彼の特性でしょうか忘れるのも早い…。何度も何度も同じことの説明と指導をしてきました。
また、ネコくんは…教える方が首をかしげることが増えてきました。どうやら前職場では基本的なことを教えてもらってないようで、半ば新採のように一から教えるような場面も。更に「前職場では先輩が途中で産休に入り、教えてくれる人がいなかった」と愚痴を話してくれましたが…ネコくんから積極的に「教えて下さい」ということはほぼなく、とにかく教えるのに必死だったので、いつも私から「次はこの業務を教えるから」という状況でした。「手伝いますよ」という声かけも最初だけ。業務を教えながら時々眠そうにしてウトウトしはじめ「眠いなら止めようか?」と聞くと「大丈夫です」と言いつつもやはりウトウトする、教えている最中で「それって面倒くさくないっすか?」というように、可愛くない場面がちらほら見えるようになってきました。

後に解ったことですが、ネコくんは私の仕事に対して納得していないことが多かったようです。私の仕事振りも確かにまわりくどい感じなところもありましたから。プラスして、私が「高卒」であることにも若干のプライドがあったようです。

ネコくんもイヌくんも高学歴です。なので高卒である私をちょっと見下していたのもあったのでしょう。若手飲み会で文句を言ってたと情報も入りましたし。

結果的に1年では2人にすべてのこと、全部を引き継ぎすることは出来ませんでした。そのため例外的に残留を希望し上司に報告書を提出しました。

その間、2人には申し訳ないと了解を得て、業務後に勉強会と称して2人に業務を教えることもしていました。そのテキストやレジュメを作成するために自宅で遅くまで作業していたのは今となってはいい思い出です。
(その勉強会資料集は私がこっそり持ってそのまま異動しました。いらないって言ってたし…笑)

2年目。ネコくんと衝突することが増えてきました。
大きな衝突は、昨年の秋。
元々仕事の取りかかりが遅く、締め切りを決めると締め切りギリギリに仕上げる(またはちょっと過ぎる)、丁寧なようでミスが多い、かつ相談しない、報告もない、連絡もない。間違った解釈のまま質問に答え、私に指摘されて慌てて訂正するetc…かなり細かな失態が見られるようになってきました。
私がイヌくんの指導にかかりっきりになっていた原因もあり、また覚えが早いネコくんに対して「大丈夫だろう」という謎の安心感もありました。
そのため、意思疎通がうまく図れていませんでした。
仕事は進んでいないし、溜まっていく一方。対応を放置していたことが判明し思わず「何でやってないで持ってるの?」と怒ってしまいました。
業務後につい説教してしまいました。
説教というか、ちょっと強い口調になってしまいました。冷静になれなかった自分も今覚えば反省しなければならないことです。
その時にネコくんが発したことが今でも忘れられません。

「どうせ私が遅かったのがいけなかったから」
「どうせ私が悪いのだから」

私が叱責したことに対して拗ねたのです。

「相談して、聞いてと言ってるのに聞いてこないし、そんなに私頼りない?」

「頼りにしてますよ!」

挙げ句の果て、彼は最後にこう呟きました。

「だって…あおいさん…忙しそうだから」

聞いて確認しようとしなかった理由を、私が忙しいせいにしました。
この時思いました。
ネコくんは、クールかつ、いつも冷静で
時に冷めた回答をすることもあれば、私が雑談するのが仕事がはかどらないから嫌だの、文句を言うこともあったのに
叱責したら拗ね、挙げ句の果てに私のせいにして…

子供だ。子供と一緒だ。素直になれない子供だ。

そう思いました。
彼はツンデレなところもあります。けれど他の係の人と対応している様子を見ていると笑顔で人当たりよさそうですが、何故か私に対してだと180度態度が変わります。私には言葉遣いも投げやりになり、彼なりに心を開いてくれていたのかと思ってました。
けれど、それなりに気遣っていたのか、それで聞けなかったと言い出しましたが…私は常に手を差し出していましたけれどね。

本当に可愛くない後輩です。

イヌくんも、何とか仕事を頑張っている様子は見られましたけど、残念ならが結果に繋がらないことが多く、折角作った私の勉強会資料集を無造作に放置、探せない、書類を無くす…と何度か書類を片付けなさいと注意したことも。

こちらはお子ちゃま。

いい年だけど子供な素直じゃないネコくん。
「バイトのお兄ちゃん」が抜けないお子ちゃまなイヌくん。

前途多難でした。

ですが、彼らなりにペースは違えど、一所懸命やっていこうという努力は見えました。細かな気遣いは出来ないのと、やはり高学歴のプライドは恐ろしいです。反骨心もあり…笑、今振り返れば内容の濃い2年間でした。

私が春に異動したところは、私自身が彼らのことを考え
関連する部署を希望しました。
引き続き同じ仕事をしています。違うのは彼らはアドバイザー、私の仕事はその実働部隊です。
彼らの仕事ぶりは前職場の実働部隊から情報提供もらってます。
今年度は更に年度途中で人事に動きがあったり、イレギュラーなことになっています。一番不安で仕方がないはずなのに、私が差し出す手を相変わらず振り払うネコくんの姿があります。
そこに来て、イヌくんの仕事の悪い噂を耳にし、ネコくんは新しい方に教えるので精一杯なところをイヌくんのミスや対応振りまでは注視出来ていないようです。

ネコくんの話を聞こうかなと一緒に帰る?と提案したことがありました。
それも丁重に断られました。
彼は遠距離通勤のため、帰りの電車で爆睡するルーティンになっているのでそっちを優先したのでしょう。
その時にもらった返事は
「帰る件はナシでお願いします。ただし頼りにしてない訳ではないので、誤解のないようにお願いします。」
真意の程はわかりません。彼は典型的なAB型なので、軽い嘘つきでもあります…笑。けれどこのLINEの返事から疑問に思ったことはLINEでしかも長文で来るようになりました。

ネコくんは「ある程度自分でやらねば」という想いと
相変わらず自身の仕事は停滞しているようなので、焦りと
異動した私に迷惑をかけたくないと思っているかも知れないのと
でも、私はいつもウエルカムであることを、ネコくんは解っています。

だから相変わらず『可愛くない後輩』なのです。

イヌくんも夏を境に質問の電話を一切してくることはなくなりました。
あのイヌくんが、完璧に出来てるとは思っていません…笑
ネコくんがいるから、ということもありますが、ネコくんにあまり負担をかけたくないのなら、私に電話で聞けばいいのにね。
私はいつもウエルカムであることを、イヌくんも解っています。

ネコくん、イヌくん、私。
恐らく3人がそれぞれ相手に想っていることを
はっきりと口にして相手に伝える機会はないかも知れません。
私は、彼らがこの先成長していく様子を楽しみにしているのです。
ネコくんは、今年昇任試験1次合格し、2次結果がもうすぐ出ます。合格したら私と同じ主任になります。
先日、前職場に立ち寄った時に、ネコくんに

「私より先に係長になるんだもんね?」

と嫌みを伝えてきました…笑
彼は昨年12月、飲み会で来年の抱負を聞いたら、仕事のことじゃなく
「早く主任に受かりたい」
と発言しました。
ああ。私がムカつくから早く同じ立場になりたいのか…とひねくれながらそう思いました…笑。

素直に甘えればいいのに。
ツンデレな子供のままのネコくん。
相変わらず幼いお子ちゃまなイヌくん。

彼らの活躍をいつも願っています。

何故、トップ画像がポケモン「フシギダネ」なのかという理由は
ネコくんがフシギダネに似ているからです。
前職場の鍵にフシギダネのキーホルダーをつけたのは、この私です。

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