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学園生活

少年、颯太(そうた)は高校2年生。彼は普通の学生生活を送っているように見えたが、心の中では自分の居場所を探し続けていた。部活にも入らず、放課後は本屋で過ごすのが日課になっていた。

ある日の放課後、颯太はいつものように本屋の隅で雑誌を眺めていた。そのとき、ふと隣の棚で熱心に本を選んでいる少女に気づいた。彼女は颯太のクラスメート、七海(ななみ)だった。

七海は明るくて誰とでも仲良くなれる性格で、クラスの中心的な存在だった。そんな彼女が、颯太がいつも行く本屋にいることに少し驚いた。

“ねえ、颯太君もここによく来るの?”

突然話しかけられ、颯太は少し戸惑いながら頷いた。

“まあ…時々ね。”

“私も本が好きで、特にこのコーナーが大好きなんだ。”

七海は微笑みながら、手に取った本を颯太に見せた。それは旅行写真集だった。

“これ、すごく綺麗じゃない?”

颯太は頷きながら写真集を眺めた。異国の風景や自然の写真が鮮やかに映し出されている。

“確かに…綺麗だね。”

その日から、二人は本屋で顔を合わせるようになり、少しずつ会話を交わすようになった。七海の明るい性格は颯太にとって新鮮で、彼の中の閉じた世界を少しずつ広げていった。

ある日、七海は颯太に提案をした。

“ねえ、一緒に写真部に入らない?”

写真部は学校でも地味な存在で、部員も少なかった。颯太は最初迷ったが、七海の目が真剣だったので断ることができなかった。

写真部に入部してから、颯太の生活は一変した。カメラを手に取り、風景や日常の瞬間を切り取る楽しさを知った。七海は颯太にとって初めて“何かを共有できる”存在になり、二人はますます親密になっていった。

文化祭が近づくと、写真部も展示を準備することになった。颯太と七海は一緒に撮影スポットを巡り、たくさんの写真を撮った。ある日、七海がふと呟いた。

“写真って不思議だよね。一瞬を切り取るだけなのに、その裏にある物語まで感じられる。”

颯太もその言葉に頷いた。カメラを通して見る世界は、自分の目だけでは見えなかった新しい一面を教えてくれる。

文化祭当日、二人の写真は多くの人に注目された。特に、颯太が撮った七海の笑顔の写真はクラスメートからも好評だった。

放課後、展示会場を片付けながら、七海が颯太に言った。

“颯太君、本当に写真が上手になったね。これからも一緒に撮り続けよう。”

颯太は少し照れながらも笑顔で答えた。

“ありがとう。七海のおかげで新しい自分を見つけられた気がする。”

こうして、颯太と七海の学園生活は新たな色を帯び始めた。カメラを通じて広がる世界と、互いを支え合う関係は、二人にとってかけがえのないものになっていく。

未来を描く写真の中に、二人の絆が深く刻まれていた。

次第に、颯太は写真を通じて他の部員やクラスメートとも交流するようになり、自分の世界がさらに広がっていった。

冬が近づくと、学校で写真コンテストが開催されることになった。七海は颯太に出品を勧めたが、彼は最初自信が持てず迷っていた。

“颯太君ならきっと大丈夫だよ。”

七海の励ましに背中を押され、颯太は自分が撮った中で一番気に入っている写真を選び出した。それは、夕陽の中で微笑む七海の写真だった。

コンテスト当日、颯太の写真は見事に最優秀賞を受賞した。壇上で表彰される颯太を、七海は誇らしげに見つめていた。

帰り道、七海が言った。

“颯太君、本当にすごいよ。これからもいろんな景色を一緒に見に行こう。”

颯太は感謝の気持ちを込めて頷いた。

“うん、ありがとう。七海がいてくれたからここまで来られたんだ。”

こうして、颯太と七海の学園生活はさらに輝きを増していった。写真を通じて紡がれた二人の絆は、これからも色褪せることなく続いていく。

未来のアルバムには、二人の笑顔と、彼らが見たたくさんの景色が収められていくだろう。


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