雨降りに飛ぶ面影
aiさんのお題は雨降りに飛ぶ面影です
くすくすと笑い声が聞こえる。心が喜んでいるのが分かる。しとしとと雨は降り注いで、まるで傘が生まれるみたいに、楕円を抱く、水たまり。
アメンボが飛んで、さらなる孤を描いた。君の面影は、真っ黒くて、まるでなにかの使者みたいだった。魔法使いとかになったら、黒いマントを羽織って、もっと大きく、黒くなるのかな。
まあでもいいか、君は、君のままで。
さようならだ。小さいものほど、見失いやすい。僕も大きくなったら、見つけてもらえるかな、なんて思った。もっと、勉強して、賢くなれば。あの子の会話についていけるくらいになれたなら。
でもきっと、あんなふうに、自由気ままに走り去り、飛び移るほうが、スパイダーマンみたいで、あの子は好きかもしれない。僕は賢くなるより先に、賢さを忘れるほうが先だったかもしれない。自由に遊びたかったなあ。
ところで今、僕は傘をさしていない。
ああ、びしょぬれだ。冷たい。
ああ、こんなときのために、傘というのは晴れている日の内に作っておくものかもしれないな。
雨を使った遊びって、そういえばあるんだろうか。
目の前の日常がなんともつまらないものに見えてしまうけれど、あんなに楽しそうにしている小さな虫があるならば、一人だけつまらないふりをする僕の見え方も、濁っていたのかもしれない。
ワイパーかけて、きれいにしなくちゃ。
そしたら君の姿がまた見えるかな。