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将来ガイド志望の学生とのトークからの独り言

先日、知り合いのガイドさんから「ガイド業に興味がある大学生がいるんだけど、個別に話をしてくれないか?」という内容の問い合わせをもらった。
よくあるような「1対大学生たくさん@講堂」ではなく一人の大学生とのオンライン対談。

「僕が?」と思いつつ、断る理由も特になかったので引き受けることにした。インバウンド業界で働くガイドとしては自分がだいぶ「アウトロー」である自覚があるので、自分がこのオファーにふさわしい人材かどうかは微妙ではあったが、個人的な興味も承諾にひと押しした。
どうやら自分を推薦してくれた理由としては、年齢がいくぶんか当大学生に近いことや同性(男性)としてより近しい立場で話してほしいからということらしい。
小一時間のオンラインでのインタビューを断らないといけないほど忙しいわけでもなかったし、なによりもせっかく若い世代がガイドという仕事に興味を持ってくれているという事実自体貴重であることは間違いない。
ただでさえガイド業界に若手が集まらない状況が続いている中で、こうした芽は潰さないようにしないと思ったりもした。

ロングツアーを終えた直後にオンライン通話にて時間を作った。
僕のガイドとしての現状や、僕から見たインバウンド業界の状況など、聞かれたことには答えられる範囲ですべて答えた。
あの時間が彼にとって有意義な時間であったかどうかは定かではないが、受けた側として個人的に思うこともあったので、ここでそれをシェアしておくことにする。

ガイドへの道が属人的すぎる

オンライントークを通して、聞かれた質問に答えながら思ったことが、「ガイドってどうしたらなれますか?」という問いに対しての答えが属人的すぎるということ。
おそらく自分を含め多くのガイドが「自分で情報収集し、その取捨選択をし、トライアンドエラーを繰り返し、気が付けばガイドとして食べていけていた」という道を歩んできたのだと思う。(← これ自体偏見かも…)
ガイドは個人事業主なので、そういうものといえば全くそうなのだが、とはいえ、その当たり前をまだ社会の道理もあまり知らない大学生やその世代に強要するのは業界としてあまりにも投げやり感が過ぎると感じている。
業界内は正直、弱肉強食的な構造は多少なりともあると思っていて、通訳案内士の試験に合格したからといって、仕事がすぐにもらえるとも限らないし、当然オイシイ仕事から強者(=先輩方)がさらっていく。それはまだ致し方ないにしても、未経験から仕事を受けて、こなして実績として積み上げるというプロセスをほぼほぼ自分一人で消化しなければ行けないところに、一人前のガイドへの道の難しさがあると個人的には思う。
もちろん、最初から本業としてのガイド一本で食べていくばかりが方法ではなく、週末だけの副業ガイドや他の仕事と兼業しながらする方法だってある。それ自体を否定するわけではないが、業界や国として若い本業ガイドを本気で育成したいのであれば、ある程度中長期的なスパンで(特に金銭的に)守ってあげることが必要ではないだろうか。
そうでなければ、僕自身のようにたまたま運が良く、ロングツアーの人手不足のタイミングで仕事を受けることができ、それをたまたま卒なくこなせた結果、実績として積み上げることができたので、独り立ちできたというように、個々人の能力値や偶然的要素に依存し続けることになってしまう。

ガイドの知名度、ショボすぎ…

今回のオンラインで大学生と話をして改めて感じたことは、ガイドの知名度の低さ。僕から「周りで他にガイドに興味を持っている友達とかいる?」と聞くと、「自分以外には誰もいない」と返ってきた。これが全てを物語っている。
前述しているとおり、ガイドの業界内が個の集まりで、(それも個人的には少し変わり者の集まりだと思っている)、組織ではないがゆえに全員が同じ方向を向くのは、難しいのかもしれない。
見方によっては、新規参入が増えれば、仕事が無くなり自分の足元を掬われると危惧している人もいるかもしれない。
個人的は、過去から続く流れがそうあるだけで、変える動きがないだけで、知名度を上げることに真っ向から反対の人は、ほぼいないと思っている。
SNS運用やPR不足を個々人の努力不足と断罪してしまっては、何も前進しないので、こういうときこそ日頃個人で活動するガイドが集まってやってみるのも一つの手かもしれない。
下手なガイド研修で講義を聞くよりも、若者のSNS運用プロから実践的に学ぶ方が今のガイド業界には求められているのかもしれない。

名ばかりのガイド育成ではなく…

ということで、ガイド業界では「ガイド育成」という節の研修や謳い文句を耳にすることがしばしばあるが、実際ガイドは目論見通りに育っているのだろうか。
たしかにガイドという仕事が属人的で、育成が簡単なものではないことはよく分かる。「じゃあ、お前がやってみろよ」と言われてしまえばぐうの音も出ないのだが、あえて言っておく。
優秀な外国語ガイドを育成したいのであれば、国家主導のもと予算をつけてやってほしいというのが本音。
通訳案内士を説明する表現として「民間外交員」というワードが使われることがあるが、これは実際そのとおりだと思う。そして、昨今、政府が観光産業を国の主要産業に位置づけるという目標を掲げているが、それを推進するのであれば、当然ながら今まで以上に通訳案内士の存在が重要になる。
そこで、優秀なガイドを育成するために国が十分な予算をつけて、育成プロジェクトを立ち上げ、現場を想定した人材育成を行ってほしい。それは、既存の単年の予算の育成ではなく、複数年度を想定したものであるべき。
具体的な内容で例を挙げるとすれば、初年度には外国へと留学をさせて語学を徹底的に磨き、同時に現地では旅行会社やコンシェルジュなどと太いネットワーク構築も行う。翌年には日本にてこれからインバウンド需要が見込める地方都市などに派遣し、地域の歴史や文化を学びつつ、地元の人とコネを作る。
上記の内容を、20代など若い年代からすでにガイドとして活動をしている者で将来ガイドとして活動する意志のある人から選抜するなどして行う。
この育成プロジェクトの目的をあげるとすれば、以下の2つ。
1.圧倒的に稼げる基礎を構築すること
2.ガイドという職業の知名度と地位向上

と、ここまで思ったことを書きなぐったが、将来ガイド志望の現役大学生とのトークは個人的には新鮮で有益なものだった。
もしまた機会があれば、ぜひやってみたい。


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