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■「百条委員会ってこういう使い方もできるよ!」とハックしたとある町議会の話をネットの海に書き残しておきたい。

〇はじめに

お疲れ様です。あいなです。
最近、地方自治体の首長がパワハラやセクハラや窃盗の告発をされ、議会で百条委員会が設置されて…などというニュースを頻繁にみるような気がします。気のせいでしょうか?

百条委員会自体は今までも色んな議会で設置されているので、特別珍しい事ではないとは思うのですが、私が百条委員会と聞いて思い出すのは、今のところ草津町議会のものです。

草津町議会は、2021年12月の議会中に、百条委員会を設置しました。
個人的には、その設置理由も内容も、首長の議会の私物化なのでは?としか思えずに未だにモヤモヤしています。
そのモヤモヤをなんとか具体化しようとnote記事にまとめようと思いましたので、どうぞよろしくお付き合いのほどお願いいたします。

※注:このアカウントは2020年11月の草津町議のリコール投票のあたりから草津町議会をそれとなくウォッチしているアカウントになります。

草津町や草津町議会のことについて書いた他のnote記事は下記をご確認ください。

〇そもそも『百条委員会』ってなに?

百条委員会は、地方自治法で定められている議会のルールの一つです。
名前は地方自治法第100条に基づくところからの通称です。

自治体の事務に関する調査のために、議会が設置する特別調査チームです。
その特別チームには、関係者の出頭や記録の提出を請求できるというかなり強い権限があります。
具体的には、証言者が嘘の証言をしたときには、偽証罪に問われることもあるというぐらいです。

参考リンク(goo辞書)

かつてのワイドショーで話題になったぐらい有名な事例を挙げますと、2013年に、当時の猪瀬直樹都知事が徳洲会グループより5000万円を受け取った件について、同年に東京都議会が百条委員会の設置を決定しています。
設置決定の翌日に猪瀬都知事は辞任を表明しました。
証言の際に嘘がつけないからではないかという見解の報道がされています。

最近?の事例を挙げますと、2021年7月に起きた熱海土石流について、不法に投棄された大量の盛り土が土石流の被害拡大の原因となった可能性があるということで、2022年11月に熱海市議会では原因究明のための百条委員会を設置していました。
2023年3月には「市側に責任があった」という委員会報告書がまとまり、争いの舞台は司法へと移ることとなりました。
2024年6月現在も裁判は継続中です。

今回は、令和3年第7回草津町議会定例会にて開催された『文書改ざんに関する百条委員会』についての話になります。

現在、この百条委員会について閲覧できる記録としては、議会だよりHarmony159号のみになります。
以前は動画アーカイブがありましたが動画へのリンクが外されてしまい、2024年6月現在はアクセスできません。
また、議事録は(現地に行けばあるのでしょうが)、ネット上には公開されていません。

参考リンク(議会だより Harmony 159号)

https://www.town.kusatsu.gunma.jp/www/contents/1485397209534/files/gikaidayori159.pdf

〇何が問題だと思うの?

この機会に、モヤモヤポイントを大きく5つの要点にまとめましたので、それに沿って解説していきたいと思います。
要点は下記のとおりです。

要点
①性被害そのものではなく文書改ざんに関する調査
②関係者は全員が、偽証罪に問われない『参考人』として証言
③証拠は関係者の証言と手書きの手帳のみでPCのログなどは取らず
④百条委員会の報告を議会が承認した3日後に、委員会報告と齟齬がある新情報が公開されてしまう
⑤それを皆がスルーしている

①性被害そのものではなく文書改ざんに関する調査

まずは、今回の百条委員会は何のために開催したのか?というところを説明します。

設置が決まった当時は、性被害告発の内容が記載された電子書籍を書いたライターと町長が名誉棄損で争っている裁判中でした。

その『裁判の準備書類』の中で、ライター側から指摘があった『町役場では町長の指示で文書改ざんが行われている』という内容に基づいて開催されたものです。

なぜ町長個人が行っている裁判の内容を知り得たか?といいますと、議会は、町の代理人弁護士から町長の裁判記録を定期的に受け取って内容を確認していたそうです。

その確認をしていた際に、ライター側から当該の指摘をされているということを知ったために、文書改ざんについての真偽を調査したい、というものでした。

文書改ざんだけで百条委員会を開催するなんておかしい!とは決して思いません。

ですが、議員が文書改ざんの情報を知るよりも先に、町の代理人弁護士(=町長の告訴を担当している弁護士)がその情報を知りますし、もっと言うなら議会よりも先に町長が知りますよね。

議会と町長の関係が悪ければ、百条委員会を開催するよりも前に、町長の不正を『告発する』という方向で動くでしょう。

議会と町長の関係が良ければ、百条委員会を開催するよりも前に、町長に直接確認するなどの根回しが先でしょう。

ではなぜ『百条委員会を開催する』という方針で動いたのでしょうか?

さらにもっと細かく突っ込むと、
A【議会が町の代理人弁護士から町長の裁判記録を受け取って】
B【「文書改ざんが日常的に行われている」という記述を知って】
C【百条委員会を開催する必要があるという意見が出る】
…という流れに大きな違和感があります。

個人的にはAとBの順番が逆で、しかもCありきの話で、Bの主語も「町長が」なんじゃないの?という邪推をしてしまうんですよね。

だってコレって、もともと町長の個人的な裁判の話なんです。

もし、個人が、【町議会で百条委員会設置して調査したので文書改ざんの疑いは晴れてますよ】という記録を町議会で作成できたとしたら…

個人的な裁判なのに、【町議会の公文書】という強い証拠が資料として提出できますよね?

それって、町長個人の答弁内容の信用や責任の所在が、町長じゃなくて町議会に移ってしまうじゃないですか…?

これって町長から見れば、性被害告発に対する町長個人の名誉棄損の裁判に、町議会も巻き込んで一蓮托生にさせることができるし、議会から見れば『町長の文書改ざんを疑ったけど潔白でした!町の名誉回復のために仕事してます!』というアピールができるという、Win-Winの策なんじゃないでしょうか…?

②関係者は全員、偽証罪に問われない参考人として証言

町長は委員会の聴取で以下のように述べたそうです。

「(略)私は、隠さないウソを言わない、事実と違ったことは言っていません。天地神明にかけて私が文書改ざんを指示したことは無い」
 と明確に答えられたため、当委員会としては文書改ざんの指示をしたことは無いと認定した。

議会だより引用

議会が百条委員会を開く重要なメリットは、調査のために証人を呼ぶための強い権限があることと、嘘があった場合は罪に問われるという証人側への強制力があるからだと思っています。

穿った見方をすれば、『参考人』は証言に嘘があっても罪に問われないということです。

もし町長が『天地神明にかけて潔白』を本当に証明したかったのならば、議会は、町長を証人として出頭要請するべきでしたし、議会はそれだけの権限を有していました。

議会がその権限を行使せずに、町長(と元副町長)を『参考人』として出頭要請したこと、それ自体が、この百条委員会の存在自体を非常に疑わしいものに変えていると感じます。

③証拠は関係者の証言と手書きの手帳のみ

過去に、アーカイブ動画から委員長報告の際の答弁のうち、気になった個所を書き起こししていました。
まずはそちらをご紹介します。

・56:10~
(委員長発言)
町長スケジュールは秘書のPC管理で後から付け加えることは無い。PCには当日10時から11時のアポは記録されて無かった。新井氏と会った記録を削除したのではない。唯一秘書の手帳にメモとして書いておいたものだけ。何しに来たのかは未記載。

・57:40~
(委員長発言)
(新井氏は)町長へは選挙前に後援団体関係者との関係が悪くなっているという相談に行った。
副町長のところへは副町長の姉の所有するアパートに入居したいという相談をしに来ていた。その相談後、町長に会いたいということで町長室に行った。
町長も新井氏が町長室へ来たことは認めている。

・58:25~
(委員長発言)
新井氏は10時から11時の間と言っているが、その1時間を町長は認めていない。
新井氏は10時頃に役場に来て、副町長との話をした後、10時15分ぐらいに町長室を訪問したのだと、委員会では認定した。

・1:01:00ぐらい~
(町長説明)
電子書籍での告発があった後、すぐに秘書に確認したがPCのスケジュールにはアポの記載は無いということだった。しかし秘書自身の手帳には『新井氏10時』というメモが記載されていた。秘書に理由を聞いたらプライベートな事は手帳に記載しているのだと。それだけの事。

・1:03:10ぐらい~
(町長発言)
前副町長の手帳というのは、(告発)当時、私も本人も存在を知らなかった。前副町長が問題の件について色々調べているうちに自分の手帳を見つけた。「この日に新井氏が私(元副町長)に会いに来てると分かりました」ってかなり経ってから来た。

・1:04:20ぐらい~
(町長発言)
秘書の手帳はプライベートのもの。
庁内(?)LANで役場にいる者は皆PCでスケジュール情報を共有&確認できる。
この手帳の改ざんを私が指示したのなら、警察に証拠として提出できるわけがない。

議会のアーカイブ動画の書き起こしです。出典はリンク先が不明のため載せられません

委員会の中で証拠や証言として挙がっているポイントは2つです。

1つ目は、『新井氏が訪問した時間』を証明する【元秘書の手帳】。

そして、2つ目は、『新井氏と町長が(元副町長と)3名で少しの間会っていた』という人数と滞在時間を証明する【元副町長の手帳】です。

〇元秘書の手帳について

元秘書の手帳に『新井氏10時』という記載があり、PCのスケジュール管理アプリには面会記録が無かったというときに、確認するべきなのは(可能であれば)PCのアクセスログのほうじゃないですかね?

2015年当時のログの入手は難しいかもしれませんが、もしこの調査が2019年当時に行われていたとしたら『電子書籍が発売された後に、2015年1月8日のスケジュールを操作したかどうかのログ』は入手が可能だったかもしれません。

さらに言うならば他の『手帳に記載があるけどPCのスケジュールに記録が無い』パターンの面会記録を複数比較するべきなのではないでしょうか?

『10時』という幅のある時間の記載や、元副町長の名前の記載が無いことなど、他の面会記録と比較することで、記載の正確性を証明することは可能だと思います。

〇元副町長の手帳について

これは、町長が電子書籍の件で名誉棄損で告訴する!と宣言した後に、副町長から出てきた証拠です。

当時、新井氏は副町長にアポを取っていて、副町長に会いに来ていたということを証明するものです。

2人の会話の中で、町長への面会が必要になり、町長室で3人で面談をしたという証言があるのですが、これは2019年11月以降の議会において、町長側の有力な証言として、たびたび話題に登場します。

町長と元副町長は、『この手書きの記録をもとにして警察にも同様の証言をしているため、手帳の内容に改ざんは無い』と主張しています。

なぜ既に警察に証言しているという事が、改ざんの有無の判断材料になり得るのでしょうか?

『警察に嘘を言ったことになると困るからこのまま通してほしい』ならまだわかるのですが。

これって幼稚園児が「おかあさん、クラスの子に、うちでワニ飼ってるって言っちゃったからワニ飼ってることにするね」と言ってるのと同じぐらいの話ですよね。

そもそも、委員会の議員たちはなぜ元秘書たち関係者が『明確に答えた』だけで「改ざんは無かった」と認定したのでしょうか…?

今回は証言内容や物的証拠の改ざんが疑われているわけですから、第三者や科学的な観点から改ざんがされていない証明が必要だったのではないでしょうか?

④百条委員会の報告を議会が承認した3日後に新情報が公開。

この委員会報告が議会の承認を得たのが12月10日でした。

そして、その3日後の12月13日に、衝撃的な事実が町長側、元町議側双方から公表されました。

元町議のPCが警察に押収された際に、当時の秘密録音データが完全復元されていたのです。

そして、そのことによって、今までの元町議の言い分であった『町長室で性加害を受けた』という内容が、まったくの虚偽であったことが明らかになったのです。

このニュースはすぐに地方紙や全国紙に掲載され、ネットの議論が過熱しました。

そして、それと同時に、秘密録音データの文字起こしが元町議側からマスコミに配布されました。

そこで明らかになったのは、町長側の主張していた
『元町議をあだ名で呼んだことはない』
『元町議は10時過ぎに来た』
『元町議との会話は15分程度』
『副町長と3人で会った』
…という証言が嘘だったという(個人的に衝撃の)事実でした。

そもそも町長は、この秘密録音データの【15分版】が元町議の顔本で公開された時から、元町議が告発している事件当時のものであるというのは認めていて、【性加害が無かった証明】として自らも使っていました。

しかしそれが逆に、1時間強ノーカットの【完全版】が出たことで、町長と副町長が百条委員会で嘘の証言をした(注:罪には問われない)という証明になってしまったのです。

⑤それを皆がスルーしている

でも、その『町長の虚偽の証言』を主張したり批判したりしにくい理由も、わかりますよね?

その町長が現状で立ち向かっているのは『虚偽の告発をしている虚言癖女』と『ネットの風評被害』なので、めちゃくちゃややこしすぎるのです。

そう。
今この話を大っぴらに指摘しても、誰にもまったくメリットが無いんです…

いかがでしょうか?
町長は百条委員会を使って議会の記録に残してまで【不正は無かった】という証拠を作ったけどこれって『議会の私物化』って言うんじゃないの?
…とモヤモヤしている理由が分かってもらえましたでしょうか?

〇おわりに

なんとも不毛なモヤモヤにお付き合いくださってありがとうございます。

最後に、2019年の性被害虚偽告発の事件を目にするときに気を付けておきたいことが何点かありますのでお伝えしておきますね。

まず、町長は、①【冤罪で告発された人】であり②【内部告発された組織の長】なんですよね。

①があまりにも悲劇的すぎて、②が透明化されがちになっていますが、可哀相だからといって②の側面を無視していいわけではないとは思います。

そして、元町議のほうも、視点や論点が多層化・多面化していてバキボキに屈折しまくっています。

電子書籍で告発した性被害の内容の信ぴょう性が無いことは、完全版の録音データや、今までの報道や裁判の証言からも明らかです。

ですが、それが【彼女だけを批判して、町議会を批判しなくてもいい理由】には決してならないはずです。

もうひとつ。
町議会の議員たちが、電子書籍での性被害告発以降に行っていた議会での元町議に対する発言や振る舞いは、無自覚でしょうが二次加害です。

たとえ、個人として怒りの感情が抑えきれなかったという部分に、個人に対して同情はするにしても、議員として公にしてはならない言葉や振る舞いは、議員に対して周囲から評価・批判されるべきです。


ありがとうございました。

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それでは。また。

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