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【千葉県警側編】『千葉県警動画削除事件』当時の動向記録まとめ③(9~10月)

○つづき

 前回に引き続き、動画削除事件当時の千葉県警の動向を、情報開示請求で得た公文書の写しとニュース記事を交えて、時系列に沿ってご紹介していこうと思います。

 動画は削除され、Vtuber事務所社長の告発の後、ネット世論は燃え続け、Vtuber支持派の人たちの中では『自分たちもフ議連に公開質問状を送ろう』という謎の署名運動が発展しました。

 その署名運動が盛り上がっているところに、『動画を削除したのは警察なのだから、フ議連ではなく警察に言った方がいい』という、熱に水を差すような発言がVtuber支持側からも出始めました。

 Vtuber支持者の中にも、細かな意見の違いで、対立が目立ち始めていたのです…

※よろしければ、前回の記事もご参照ください。

  


○9月12日 陳情書(松戸市議会)

陳情者:(黒塗りです)
タイトル:戸定梨香(トジョウ リンカ)出演の交通安全啓発PR動画削除に関する陳情

 時系列が少し前後しますが、9月13日に、一通の陳情書が松戸市議会議長宛てに提出されました。
 フ議連からの抗議は適切ではないということと、動画の内容は問題無いので削除撤回の要求をして欲しい、といった内容が綴られています。

 この送付された日付から察するに、Vtuber支持派の中から署名運動を開始した某区議の9月11日付のツイート『地元の方がいれば松戸市議会に陳情を出してみるとか。(略)』というのを見て心を動かされた松戸市民が陳情してくれたのでしょう。

 ただ、松戸市議会のシステム上、郵送で送付された陳情書は議長が中身を確認するだけで、議員の目には触れられず、議会にも諮られないそうです。
 (それもなんかおかしいんですけどね…)

 この件については、某区議も他のVtuber支持派のアカウントも全く触れてはいないんですが(なんでだろ…?)、松戸市議会内でご当地Vtuber支持の議員が、後のツイッタースペースで、『Vtuber支持派の人からの陳情書が出されているのを見た』という証言をされています。

 陳情書を送ってくれたかた、本当にありがとうございます!
(わたしが言うのもおかしな話なのですが、感謝しています)


○9月17日 ツイッター②

確認者:ふじすえ健三氏(当時参議院議員)
コメント者:千葉県警(警視庁経由)
コメント内容:
・質問状にある「性犯罪を誘発する懸念」があるということが削除理由ではない
・非接触型による交通安全教育・啓蒙の新たな手法として考えたことであり、性的な対象として認識したことはない
・本来の目的と異なる意図で伝わることは本意ではなく、掲載期限(9/17)が迫っていたこともあり、削除した

 ここで覚えておきたいのは、ふじすえ氏から発信されたこのコメント以降は、警察のコメント内容がこの3種類のどれかに沿って発信されているということです。

 また、『警察庁を通して千葉県警から返事を貰っている』というのは、『警察庁も同じ意見だ』という後ろ盾があるのだとも取れます。

 ここで発信された内容が、松戸警察署としての証言やコメントと一致するものではなく、千葉県警としての公式発表であるというのは、一見すると、ふじすえ氏が政治的な交渉力を発揮し警察から内部情報を引き出して、Vtuber側の論旨の裏付けに貢献したように思えます。

 実際、警察を批判する声に対して、ふじすえ氏のツイートが引用されるケースを何度か目にしています。

 しかし、今だからこそ視点を切り替えてみると、Vtuber側の意識統一と警察側への批判の飛び火を防ぐための、国会議員(当時)という権威からの大本営発表…にも思えてくるのが、このツイートの興味深いポイントです。

○9月24日 ニュース記事③

取材記者:よろず~ニュース
コメント者:千葉県警
コメント内容:
「要望をいただいたのは事実です」
「本来の目的と異なる意図でとらえられることへの懸念や、動画の掲載期間が今月17日で終了する予定だったことなどから県警内で検討した結果、削除することを決めました」
「性的なものであるとか、女児を性的な対象としたというキャラクターであるとか、そういう意図があるとは思っておりません。不適切ではないと判断しております」

 よろず~の記者は9月13日にも記事を発表していますが、そちらは松戸警察署のコメントで、今回の記事では千葉県警が取材に答えています。
 コメントの発信元や担当者が、広報系の部署に統一されたのかもしれません。

コメント者:Vtuber事務所社長(松戸署)
コメント内容:
松戸署さんも『落ち着いたら』としつつも「今の段階で約束はできない』としておられます

削除後も千葉県警松戸署とは連絡を取り合っており、「削除されて、それで終わってしまうのは嫌だと話しています。次は戸定梨香が警察官の格好でPRするの動画を掲載予定だったのですが、それも続行できないのかと…。松戸署さんも『落ち着いたら』としつつも「今の段階で約束はできない』としておられます」と明かした。

リンク先記事引用

 このVtuber事務所社長の言葉からも分かるように、事件から2週間が経っても、警察署側からVtuber事務所宛てに、再開に関しての肯定的な返事は一切していません。

(『今の段階では約束はできない』という返事は、決して前向きな返答内容ではないでしょう。)

 『それで終わってしまうのは嫌』というのがVtuber事務所や松戸警察署の動画制作を担当した人たちの総意で、『今の段階で約束はできない』とコラボ再開をはぐらかすのは千葉県警としての方針なのでしょう。

 そして警察内部ではそのどちらの声が大きいかといえば、後者であると言わざるを得ない状況なのではないでしょうか。

○10月4日 ニュース記事④

取材記者:NHK
コメント者:千葉県警
コメント内容:
『理由について県警は、「使用したキャラクターが適切ではないと議員連盟を含む複数の意見が寄せられた。検討の結果、本来と異なる意図で伝わることが懸念されたため削除した」と抗議を受けて動画を削除したことを認めました。』
『使用したキャラクターが適切ではないと議員連盟を含む複数の意見が寄せられた。検討の結果、本来と異なる意図で伝わることが懸念されたため削除した』
『そういう認識はない。制作の過程で複数の部署が確認し、男女の職員がチェックに関わったが、不適切だという意見は一切出なかった』

この記事で特筆するべきだと感じたのは、『抗議を受けて動画を削除したことを認めました。』という一文です。

警察からのコメントを示す「」を使用せずに、記者自身の表現で『認めた』としているのは、『そう思われても仕方がないですね』というニュアンスのコメントを警察側がしたのかなと感じました。

どのような確認の方法だったのかは分かりませんが、この記者さんのお陰で、『複数の批判&抗議があったから動画を削除した』という事を警察は暗に認めている、ということがよく分かります。

○10月7日 ニュース記事⑤

取材記者:デイリー新潮
コメント者:千葉県警
コメント内容:『千葉県警はさっさと動画を取り下げたこの一件を、「当初の目的とは違う意図で伝わることが懸念されたため削除しました」と説明するが、要は炎上は御免とばかり幕引きを図ったに過ぎない。』

 この記事では、特に警察側の『炎上は御免とばかり幕引きを図った』ように見える『削除』という行為については特に批判をしていません。

 実際の警察側からの公式回答(9月17日のふじすえ氏ツイート)ですと、『当初の目的とは違う意図で伝わることは【本意ではない】』なので、この記事を書いた記者さんの書き方なのでしょうが『懸念』というのはフェミ議連の公開質問状に記載されている文言【性犯罪を誘発する懸念】のほうですね。

 意図的なのか、意識の中で文章が混じってしまったのかは分かりませんが、もし後者だとするならば、特定の表現を繰り返し目にしたり耳にしたりすると、何か脳の潜在意識に影響がある…のかもしれませんね。
 ここは大変興味深く、考えさせられるポイントです。

○10月8日 ニュース記事⑥

取材記者:東京新聞
コメント者:千葉県警
コメント内容:『県警の担当者は削除の理由について、本紙の取材に対し、もともと動画の期限が9月17日までだったことに加え、「部外からキャラクターが不適切ではないかとの意見があったことや、子ども向けの動画としていた製作したのに、本来の意図とは異なる形で興味本位に受け取られてしまう懸念が出たため」と説明している。意見の中に、議連が含まれるかどうかは明らかにしていない。』

 実際の警察側からの公式回答(9月17日のふじすえ氏ツイート)にも同じ理由の記載がありましたね。

○10月21日 Vtuber事務所側記者会見

コメント者:Vtuber事務所社長
コメント内容:『板倉氏によると、千葉県警側から事態が落ち着いたら改めて連絡すると伝えられていたものの、現在も状況は変わっていないとのこと。』

 やはり千葉県警の言い方…この件から完全に手を引きたい人の台詞だと思うんですよね。
 もし100歩譲ってフ議連から何かしらの回答あったとしても、このままだと『また炎上すると嫌だから…』ってはぐらかす感じがあります。

 この記者会見の時点で警察が『状態が落ち着いたら』と言うやりとりをVtuber事務所としているところから、動画再投稿に関しての条件などを、両者の間で全く協議も確定もしていないことがわかります。

○10月22日 政府答弁書

答弁者:内閣総理大臣 岸田文雄
コメント内容:『同項目における「男女共同参画に資する広告やコンテンツ等」の作成主体は限定されておらず、当該作成主体には地方公共団体も含まれ得る。』
『政府としては、基本計画の内容について、地方公共団体に対し、必要な周知を行ってきていると考えている。』

 参議院議員の浜田聡氏(NHK党)が『女性Vチューバーと千葉県警のコラボ動画の削除と政府の男女共同参画基本計画に関する質問主意書』を参議院に提出しました。

 『質問』に対しての『答え』なので、政府がこの件に関して特段気を配っているから発言に至ったわけではないということを頭に入れている人といない人で、当時の熱気の度合いがだいぶ違っていましたね。

 まず、『千葉県警(というか松戸警察署)は、メディア関係者ではないけど作成主体には含まれます』という話をしていますね。

 次に、『政府は、公共団体に対して「男女共同参画基本計画のマニュアルを参考にして作ってね」と周知徹底もしている』ということなのですが…。

 これ、私自身は「千葉県警はちゃんとやってるよ(Vtuber事務所も作成主体だけどのアンタんとこのほうはどうなの?)」という方向の援護射撃だと認識しているんですが、他の解釈があるのでしょうか…

○10月29日 ニュース記事⑦

取材記者:よろず~ニュース
コメント者:千葉県警 交通課
コメント内容:『担当者はこの日、戸定梨香の衣装等について「性的なものとは考えておらず、不適切ではない」と改めて回答。全国フェミニスト議連の抗議が削除の理由となったことは認めつつ、「議連の意見を正当なものとして受け入れたわけではない」と説明した。』

ー正当ではない意見を理由に、不適切ではない動画を、削除したー

 今までのnote記事をご覧になってくださった方でしたら、この理由は、Vtuber側も貶している事になるのはお分かりですよね。
 著作権者や制作者への事前承諾も無しに、勝手に取り下げたのですから。

○おわりに

 『本来の意図とは異なる形で受け取られてしまう懸念』
 それは、千葉県警が問題を起こす毎にフ議連側が『こんな危険な団体が公開している動画はやはり問題がある』というような攻撃に使われてしまったり、アンチフェミが動画自体をフ議連側を叩く材料に使ったり、出演しているVtuber自身がフ議連支持者側に活動を妨害されてしまったり…といった事なのではないでしょうか。

 そして、その『懸念』は、9月9日に動画が削除されたことによって、最悪の形で現実になってしまったと言えるのではないでしょうか。

 ネット上において、フ議連の抗議文を『圧力』と捉える人たちが居ることは、私も承知しています。

 では、千葉県警は、公開質問状を『圧力』だと思ったのでしょうか?
 『自分たち職員が出演しているわけではない動画』に来た『面倒くさい厄介なクレーム』だと思ったのではないでしょうか?

 (最初に抗議文を受け取った広報関係の部署とかは。)

 動画の事について何も知らない人たちが、
『Vtuber?ああ、アニメキャラかな?』
『可愛い女の子?おばけキャラ?ああ、子ども向けかな?』
という雑な認識で動画を捉え、
差別だ性的搾取だと煩く言われたくないがためだけに、
さっさと動画の削除を指示したのではないでしょうか。

 私は、情報公開請求によって、【実際に動画の制作を企画したわけではない交通総務課が回答文を作成・送付した】ということを知りました。
 そこから、【動画の関係権利者ではない広報県民課は、松戸警察署と相談しないで動画をネット上から削除したのではないか】と予測しました。
 そして、【その動画削除には、松戸警察署の意見が全く反映されていないのではないか】ということを知ることができました。

 これは、表現の自由や女性差別の問題であるのと同時に、
 千葉県警内部のコンプライアンスの問題が内在しているのです。

 情報開示請求をしたことにより、現在はその考えが確信に近いものに変わっています。

 既に動画は削除されました。
 ですが、過去の事例を踏まえて、どこかの誰かが、新しい事件のことを議論することはできると思います。

 今後またどこかの誰かが不当に表現物を蔑ろにした時に、検索等でこの記事に流れ着いたりして、新しい問題が浮き彫りになったりしたら、それでいいのかなと私は思います。

 次回のまとめ記事では、8月末~9月上旬の千葉県警と千葉県庁とのやりとりのごちゃつきとタイトさを、どうにか説明できないかなーと色々頑張ってみようと思います。

 もしよろしければ、このアカウントをフォローいただきまして、次の記事をのんびりお待ちくださいませ。

 それでは、また。

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