冬のひまわり🌻(第10話)
おはよーっス❣️と、会社のバックヤードに裏口から入った福田は、そう声に出しながら進んだ。
「おはよ〜ございます」涼やかな声の方を見ると、有本泉が声を掛けてきた。
(おっ!)
と、心の中でニヤけながら、
「あ!泉ちゃん!おはよう」
と、答える。
「ねぇねぇ、福さん知ってます?」
「ん?何?何?」
泉ちゃん相手だとつい顔が綻んでしまう。
「ウチのお風呂にTVの取材が来るらしいですよ?」
「え?マ、マジ?」
TVの取材と聞いて心底ビックリして、素っ頓狂な声で聞き返す福田でだった。
「ええ。なんだか日帰り温泉特集で、3箇所だか?4箇所のお風呂の取材にウチも選ばれたらしいです」
「へー?凄いじゃん!俺も映ったらどうしよう?」
と、ドキドキしながら答えると、泉がキャハハッ!と、笑いながら答えた。
「やだー。福さん!何か、朝早くお客さんが入る前にTVクルーが来るらしいです。で、映るのが、店長だけだという話しですよ?」
「あ?そう。店長だけか。」
と、少し残念な気持ちで答える福田だった。
「泉ちゃんもTVに出たら人気出るのにね?」
と、なかば本気も込めて言うと、
「え?私?私は無理ですよー」
と、笑いながら答えた。
「いやいや、そんなことないって」
と、泉ちゃんと絡めるだけで福田は嬉しかった。そんな些細な出来事だけで、幸せってこんなことなのかもな?とも感じた福田であった。
仕事を済ませて、スマホのスイッチを入れた。
と、見知らぬ番号からの着歴を見て福田は驚いた。
(え?10件着歴?見たことない番号だけど?)
と不安を感じつつ、店内にある公衆電話へと急いだ。今の時代、知らない番号に安易にかけ直す程バカではない。どんな悪質なキャッチセールスがかけてくるかわからない時代だからだ。
ツルル〜。ツルル〜。
電子音が鳴っている。
ガチャッ。
「はい。」
年配の女性の声だ。
間髪入れず、その女性は話した。
「あ!福田さんの息子さん?」
「はい。福田です。あの…。」
「私、福田さんの。ああ。お母さんの同僚の谷敷という者です。息子さん!すぐお母さんのところへ来てください。お母さんが倒れたのです。病院は、石田病院です。すぐに!!」
「え?お袋が?」
「そう。そうなの。容体が芳しくないみたい。」
切羽詰まったかのような声で、その谷敷さんという女性は早口で捲し立てた。
福田は頭が真っ白になったが、とりあえず店長に話をして、しばらくの間休みを取った。
(お袋!お袋!何で…」
すぐさま家へ帰り、身の回りの簡単な支度をして駅へと向かった。
(あんなに元気だったのに…。正月の時は)
(どうして…。回復してくれお袋!親父の所へいくにはまだ早い。まだ68歳じゃないか!)
福田の田舎は同じ県とは思えない程の田舎だ。
田畑が並び山に囲まれていて、夏は暑く、冬は寒い盆地だ。
けれど、都心からさほど離れていないからか人気があり、老若男女に好かれるスポットになっていた。
つづく。
〜〜〜〜
体調不良のため、一周抜かしてしまい申し訳ありません。ご配慮ありがとうございます。
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