見出し画像

【Buyer's Voice】施工メーカー-ERP及び営業支援システム導入

Buyer's Voiceは、企業がどのように課題を整理し、解決策を把握、比較し、決断を下すのかという、Buyerの意思決定プロセスに焦点を当てた新しいメディアです。

第六弾は、施工メーカーの情報システム部門にて責任者をされている方に、ERP及び営業支援システムを導入した際の意思決定プロセスについてインタビューを行いました。

■決済者プロフィール
企業規模:500名〜
業界:施工メーカー
部署:情報システム部門
検討SaaS:ERP及び営業支援システム
導入結果:全社
購買プロセスにおける役割:推進者


ー ERPを検討するにあたってのきっかけを教えてください。
まず、当社が上場することになったのが最初のきっかけになります。 上場にあたって、様々な内部統制に対応する必要があります。売上利益が適切かどうかも確認されます。その過程で、社員一人当たりの売り上げや利益率が、業界の標準に比べてあまりよくないことが分かりました。

これに対して、経営陣が原因分析を行う中で、利用している社内の機関システムがについて、現場から非常に事務作業が手間がかかるという声が上がりました。
当時、専任の情報システム部門のような主管部門がなく、改善や最適化が進まなかったのですが、上場をきっかけに、適切にそういった部門を設立し、情報システム担当を置くことになりました。
こうして社内のITインフラの最適化を進める動きが生まれたのです。

ー 部門を作るところから始まったのですね。
そうですね。
それから様々な部門からのヒアリングを行い、
その結果を踏まえて、システムを刷新することにしました。

ー この時点で(ERPを提供する企業の)営業との接触はありましたか?
この時点では、当時使用していたシステムの保守ベンダーさんがいたため、その方々とコミュニケーションを取りながら、
既存システムの改修に重点を置いて検討していました。

つまり、リプレイスをまだ想定していませんでした。

ー ありがとうございます。
基幹システムは全社に関係するため、部門によって課題の優先順位が異なり、 合意形成が難しいと思うのですが、その点いかがでしたか?

まさにおっしゃる通りですね。
大きく4つの部門が関わっていたんですけれども、
優先順位の折り合いが付かず混乱が生じました。
また、それぞれの部門を代表する人が存在しなかったため、
状況はますます複雑になりました。

ー どういうふうにまとめていったのですか?
決定を下す必要があったため、
社長が誰かを任命する形で各部署から代表者を選出し、
その方に意見を集約するように依頼しました。
しかし、皆想いがあって代表者になったわけではないため、
結局意見まとめが上手くいきませんでした。

最終的にはシステム担当である私が、
最適なアーキテクチャを設計するというミッションを与えられていたので、それを後ろ立てにしてゴリ押ししました。

ー 課題の整理について理解ができました。
次の解決策の調査はどのように進めていかれましたか?

最初は現場の意見や当時の社内ルールに合わせたシステムを
作ろうと考えましたが、改修にはお金と時間がかかることが分かりました。
また、既存システムは紙書類があることを前提として作られており、そのまま改修しても理想的なオペレーションが実現できると思えませんでした。

ですので、今のオペレーションを全部捨てるつもりで、
世の中のパッケージソフトが前提とする業務フローに一旦合わせてみましょうという話をしました。
ここで既存システムを捨てるっていう選択肢が出ました。

要は型に自分たちをはめに行こうと思ったんですね。

ー その解決策に対しての現場の反応は?
反対意見はその時点ではなかったですね。
現場も今のやり方が正しいとは思っていないので、
より良い方法があるなら「それで良いのでは」というリアクションでした。

ただ現場の課題感を整理する中で、営業管理の課題も浮き彫りになり、
その点においてはERPではサポートできないので、
同時に営業システムも並行して考える事になりました。

ー 何社ぐらいを比較検討しましたか?
ERPパッケージだと情報収集したものも含めれば多分15から20社ぐらい。
営業支援システムで言うと4、5社ですかね。

ー 比較検討する上での軸及び、要件定義はどのように整理しましたか?
まず、既存の業務フローを可視化しました。
次に、その業務フローの中でシステムが担う作業部分を抽出しました。

ー それをベースに比較検討を進めたのですね。
はい、製品ごとにFit&Gap*をしました。
※Fit&Gap:どれだけ適合(Fit)し、どれだけズレ(Gap)があるかを明らかする分析手法

ただちょっとややこしいのは、
我々が業務の形も変えようっていう思いがあったところです。
Fit&Gapだと現状維持のままなので迷走しました。

ー そもそも根底から業務のオペレーションを変えようということですよね。
そうですね。
そういう意味では、我々もちょっとアプローチを間違えたんですね。
本当はコンサル屋さんに支援仰ぎつつ、
新しい業務の姿っていうのを考えた上で、
ベンダーさんにご相談すべきだったなと思うのですが、
そこをスキップしてしまいました。

ー 比較する軸が定まりきってない状況だったので、そ迷走してしまったということですね。
おっしゃる通りです。

ー その迷走期間はどれぐらいだったんですか?最終的に導入するまで、時間がかかりましたか?
二年ですかね。

ー 長いですね。
一回失敗してやり直しているのが理由です。
一度とあるパッケージを選定して、より詳細な要件定義の構築を開始したのですが、選択したパッケージが、当初我々が期待してた明確な業務フローがあってそれを実現する為のシステムではなく、お客様の要件に合わせてカスタマイズできますよっていう製品だったというのが遅ればせながら発覚しました。

さらに我々の予算感にまるでフィットしないということも分かりました。
その当時の我々のイメージとしては、
そのパッケージが前提としている業務フローに自分たちも合わせに行こうと思ってたんですが、
逆にベンダーさんからはあなたたちはどうしたいんですかって聞かれてしまうみたいな。

なのでこれはもうあかんということで、
要件定期工程が終わった時点で一旦契約を解除して改めて選定する流れに戻りました。

ー その時点では費用もお支払いしていたのですか?
そうなんですよ。特別損失を出しました。

ー その後は、同じ失敗をしないように時間をかけて精査されたのですか?
そうしたかったのですが、急いでいたため十分な選定ができたかと言われると、そうではありませんでした。
一旦、全てのプロジェクトを停止して、コンサル屋さんの支援を受けながら理想の形を求める提案を経営陣にしましたが、受け入れられませんでした。
結局は、それまで比較した業者に再度アプローチして、ある一社を選定し、そこに依頼することになりました。

ー わかりました。
話戻りますが、サービス比較に関しては全ての企業にFit&Gapで比較したのですか?

いいえ、まずは予算感が合うところや、弊社と伴走してくれそうな会社を軸にERPと営業システムで3社ずつ計6社に絞った上でFit&Gapをしました。
また、Fit&Gapもさることながら、当社と同じような課題を抱えた企業さんのご支援経験はあるところを優先的に考えていました。

ー 事例が重要ということですね。
そうですね。
外部のベンダーに期待することの一つは、自社と同じような課題を抱えている企業にどのようにアプローチしたかということです。
当社は建設業に分類されますが、その建設業の取引にフィットしたベストプラクティスのようなものがありますか?という話をしました。

カスタマイズ前提の会社では、「おっしゃる通り合わせます!」と言ったりすることがありますが、特定の業務領域に特化したSaaSやパッケージを提供している会社では、業務コンサルレベルまで深い知識を持っている方がいるため、そういった会社を選びました。

ー ただ、最近はどこの会社も事例を豊富にお持ちだと思うのですが、 その中でどのように1社に絞り込めたのですか?
営業支援システムだと、営業支援システムAの一択でした。 その会社さんは、売上を上げていくために、営業はどのような活動をすべきかっていう方法論をきっちり持って語ってくれる会社さんで、それが当時の当社にはフィットしてたんですよ。

現場至上主義でいわゆる業務の標準がないような会社だったっていうところが、その元々のシステム導入の最初のモチベーションだったこともあることから、「これが勝ち筋です」っていうのをしっかり持ってシステムとセットで提供してくれる会社がすごく理想だったんですね。
実際その営業マンの方々の振る舞いは、当時の弊社の営業責任者が、 この人たちの動きこそ理想だよねみたいなことを言ったりするぐらいでした。

ー ERPに関してはいかがですか。
ERP製品Aに決めました。
比較検討したERPパッケージの中では、比較的我々が求めているものに近かったです。
ただ、営業支援システムAほどの強い決め手があった訳ではないですね。

ー 相対的に良かったイメージですか?
相対的ですね。一回失敗しているので、できるだけ費用も節約したいしたいと考えた場合に、コストとバランスが良かったっていうところがありました。 ERPのところは正直ちょっと失敗していたので。

ー 導入後はどうでしょうか。
ERPに関しては、やはり我々の中で理想的なオペレーションを固められてない状態で、ツールを入れてしまったので綻びが出始めております。

ー では、ERPに関しては今後社内で変わる可能性があるということですね。
いいえ、流石に費用を掛け過ぎたので、合わせに行くしかないと思います。

ー 検討全体を振り返って特に苦労された点はございますか?
あります。検討行為自体がしんどかったです。
ちょっとお恥ずかしい話なんですけど、プロジェクトのメンバーを集めたんですが、どうしても専任の担当者を確保できなくて片手間になってしまいました。
専任の体制を整えて、それぞれ担当領域で責任を持って要件検討や理想像の考察を行うことが理想でしたが、それができないまま、表面的な課題の検討だけで終わってしまいました。

もう一つの課題は、メンバーが全国に散らばっていることです。
当時はコロナ禍前だったので、リモートツールやコラボレーションツールを使った遠隔での共同作業が上手くいっていませんでした。
ですので、一ヶ月に一度物理的に集まって検討する形で、コミュニケーションが不足していました。

ー 合意形成で苦労されてる企業は多いと思います。
その点において、営業に求めることはありますか?

営業マンの方に伝えておきたいことは、世の中には特定の誰かが意見を集約するような完璧な構造は存在しないと思って欲しいです。
営業目線では営業先の窓口の人がいて、その窓口の人とやり取りする事が多々あるかと思いますが、彼が上手くまとめられていない状況はよく見られます。

ー 他に、営業に求めることはありますか?
「御社に合わせますよ」というベンダーさんが意外と多かったのですが、 我々自身迷走していたので「合わせます」って言われちゃうとちょっと辛いですね。 「あなたたちはこうすべきです」と語ってほしいというのが率直な意見です。

寄り添ってくださっていることは分かっているのですが、
こちらから何か仕事を提供できるかを考えなければならないというのは、煮詰まっている時ほどストレスを感じるのですよ。

ー 本日はありがとうございました。
ありがとうございます。


当メディアは、バイヤーイネーブルメントSaaS「GRiX(グリックス)」
を提供するAimyTech株式会社が運営しております。


いいなと思ったら応援しよう!