美しい型が心を育む
私は社会人教育のお仕事をさせて頂いていますが、やはり一番の課題は、
「動機付け」にあります。きっと子育てをされている方も同じではないですかね。
「大人になっても勉強は好きじゃないんですよね」とおっしゃる方は多いですし、
企業研修では、業務の一環として我慢をされている方も沢山います。
会社が研修費を払ってくださる上に給与も保証され、勉強までできるんだから、
何を贅沢なことをと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、
これが現実ですし、そんな方も楽しく充実した時間を過ごして欲しいという
祈りの心を持って、一所懸命自問自答しながら向き合う毎日ですね。
人材育成の目的は言うまでもなく、「幸せに生きる」ことにあります。
全ての仕事の目的は、みんなが幸せになることですもんね!
お金が欲しい理由だって、きっとそれが幸せに必要だと思われるからでしょう。
でも、案外その目的は共有されていないし、人材育成のベースとなる基礎は、
耕されることなく荒地のままになっていることが多いんですよ。
だから、動機付けが難しくて、人材育成に悩まれている方も多いのだと思います。
私が思う人材育成は大きく2つあります。
それは、「信頼関係を構築する能力」と「強みを発揮するための能力」です。
もちろん具体的なコンテンツは山のようにあるのですが、大きく分けて、
人が幸せに生きるために必要な能力は、この2つだろうと考えています。
ただし、その前があるんですよね。家で言えば「基礎」の部分です。
実は、まず学ぶべきこと、教化すべきことは、「感謝に気づく感性」なのです。
当たり前ではなく、身のまわりにある「有り難いこと」に気づく力。
これを鍛えることが最も大切だと思います。
私はこの分野に関して「気づき」を提供することが役割だと認識していますが、
鍛えることは現場でしかできないんですよね。
しかも理論・理屈で教育することができない分野でもあるんですよ。
いやむしろ、理屈で教育しようとすると失敗してしまう分野だと言われています。
では、どうすれば良いでしょう?・・・先人は、その答えを与えてくれてます。
親が子供の前でお手本を示すように、師匠が生き様や作法でお手本を示すように、
リーダーはその生き様で、お手本を示すことが大切なんですね。
例えば、子供が小さい時から、必ずお彼岸にはお墓参りに連れて行き、
親がご先祖さまへ感謝する姿勢をみせたり、仏壇や神棚に向かって手を合わせ、
感謝する姿勢をみせたり、年配者を敬って大切にする姿勢を見せたりすることで、
なんとなく子供は、感謝する感性を磨いていくのだと思います。
茶道や弓道など様々な「道」がつくものでは、必ず基本となる「型」が
大切にされていますよね。美しく無駄のない所作が、心を育むわけです。
神社に行って手を浄め、作法に従って神様に感謝する姿勢も、子供は見ています。
同じように経営者から直属の上司まで、人を敬って大切にし、
整理・整頓・清掃などの一つひとつに対する所作を、新入社員は見ているのです。
そしてそれが美しければ、何となく感じて、何となく感性が磨かれ、
それが人間の基礎となって、学ぶ姿勢に現れてくるように思いますね。
最近イチロー選手が疑問を呈したように、親子の間も師弟の間もなにもかも、
意味のわからない悪平等に侵害されているように感じます。
それぞれが「敬う心」と「礼の所作」を立ち位置と役割に応じて正しく認識し、
美しい心が育まれれば、人材育成のベースは心配ご無用になってくると思います。
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