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わたしの武器


「武器をたくさん手に入れたね」

たくさん歩き、たくさん笑い、たくさん写真を撮りあったある夏の日、仲の良い友人がポツリとそう言った。

あと三日で、職場が変わる。

常にフレッシュな気持ちでなんかいられないし、べつに落ち着いてなんかいないし、自分のことを好きでいられなくなる瞬間なんていくらでもあるわけで。

あらゆるものにばかやろう、としか言えなくなったら、以下を召喚することに決めた。
忘れてしまわないうちに、ここに記録しておく。
















・自分の部屋
・お母さんの車
・おばあちゃんのクローゼット
・映画館
・冷やご飯
・カレー
・一度だけ行った先輩の部屋(彼女は喫煙者である)
・手紙

・ポケットの中のカイロ
・夕方のにおい
・深い色の口紅
・餃子
・緩めの生クリーム
・10分前後の電話
・長袖
・最寄りのコインランドリー
・薄い毛布

・静かな夜道
・カラオケ
・本屋の通路
・ガラガラの総武線各停三鷹行き
・よく冷えた果物
・熱々の野菜
・ミュージアムショップ
・早朝の海

・シンチェリータのジェラート
・長風呂
・深夜のコンビニ
・西加奈子さんの文章
・ドリンクバー

・狭い居酒屋
・カラーマスカラ
・柔らかなキス
・具だくさんの味噌汁
・フレッシュチーズ
・夜明け

・カルディの乾物コーナー
・公園
・最寄りの銭湯
・カウンター席の一番端
・それいゆのバタートースト
・夜の古着屋

・平日夕方のパウダールーム
・海苔
・待ち合わせ場所に向かう時間
・つめたい水
・鉄のフライパン
・石鹸の匂い
・伊藤紺さんの短歌



24歳の私が持つ武器、

の、一部。

これらは増えるかもしれないし、減るかもしれないし、変わらないかもしれない。

時折ふと思い出して、この記録を見返して、
なんや、無敵なんじゃねえか、自分、
という気になる。

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