何故ジオンはオデッサ作戦後に敗北したのか
機動戦士ガンダムにて描かれた一年戦争。
この戦いの中でジオン公国はサイド1.2.4.5.の四つのサイドを壊滅させ、地球にコロニーを落とし、大損害を与えた。
さらにその後のルウム戦役にて地球連邦軍に壊滅的損害を与え、大勝利し、さらに地球へと侵攻して地球の半分を支配下に置いた。
連戦連勝し、勝利したジオン軍の勢いは凄まじかったのだが、この後に開始された地球連邦軍による大反抗作戦、オデッサ作戦によってジオン軍は敗北する。
そして、このオデッサ作戦によってジオン軍は地球の占領地を失い、二か月足らずで敗北してしまった。
今回はその原因を確認していく。
まず、オデッサ作戦の部隊になったオデッサだが、ウクライナにある黒海に面した港湾都市である。
古くから港湾都市として栄えた都市であったが、それはどうも宇宙世紀に入ってからも同じであり、ジオン軍はこのオデッサに大規模な基地を作り、ユーラシア大陸周辺にある鉱山から物資を集積していた。
そして、この物資をジオン本国へと送るという物量で劣るジオンにとってはまさに生命線であった。
その資源の量は莫大なものであり、キシリア・ザビ配下の突撃機動軍に所属するマ・クベがこっそりキシリアのために物資を横流ししても気づかれないほどであった。
こうして、ジオンが戦争継続を行う上で欠かせない重要拠点がオデッサなわけだが、このオデッサはジオン本国へと物資を送るだけの基地ではない。
というのも、事実上オデッサはジオンにとって地球方面軍総司令部と言っても過言ではないからである。
一応名目上、ジオン軍の地球攻略軍の司令官はガルマ・ザビだが、彼の担当区域は北米であり、このオデッサを統括していたのはマ・クベである。
そして、オデッサは単にジオン本国へ物資を送るだけではなく、逆にジオン本国から地球へとMSなどを含めた兵器を、地球各地へと輸送する拠点としても機能していた。
ランバ・ラルやザンバジル級巡洋艦で地球に降下したのも、黒い三連星が最初にやってきたのもこのオデッサだ。
オデッサは地球からジオンへ物資を送るのと同時に、ジオン本国から地球へと物資を送り、各地へと輸送する上でのハブとしての拠点の役割を担っていた。
地球連邦軍は何故、反抗作戦を行う上でオデッサを選択したのは、オデッサを攻略すれば必然的にジオン地上軍を追い込むことが出来ると考えたからである。
地球に点在するジオン軍へと物資を供給し、同時にジオン本国へと物資を供給する最重要拠点。
オデッサが陥落すれば、地球のジオン軍の補給を断ち、孤立する点にして各個撃破できる。
こうして、連邦軍はオデッサを陥落させることを決断した。
オデッサがいかに重要であるかはこうして述べたが、問題は何故オデッサ作戦後にジオン軍は砂山が崩れるが如く、崩壊していったのかということだ。
実際のところ、ジオン軍は連邦軍が反抗作戦を行うことを掴んでいた。
実際、マ・クベは連邦軍がオデッサへと攻め入ることを、連邦軍の将軍の一人、エルラン中将を内応させ、情報を集めていた。
にもかかわらず、ジオン軍が敗北したのは連邦軍が空前絶後とも言うべき総動員をかけ、圧倒的な物量によりジオン軍をすりつぶしたことにある。
地球におけるMSのアドバンテージは決して戦車や航空機と遜色ない。
特に、61式戦車に関しては背面を取られたり地の利を生かした戦いで撃破されていることも珍しくはなかった。
マ・クベもそのことは百も承知であり、このまま戦ったところで負けは見えている。
そこで少しでも有利な戦いを展開するべく、スパイ活動を行っていたわけだが、総司令官であるレビル将軍はマ・クベの予想をはるかに超えた圧倒的な戦力をかき集めて戦いに挑んだ。
最終的にマ・クベは水爆まで使ったが、それでも連邦軍は止まることなく、最終的には水爆まで無力化されてしまい、マ・クベは脱出を余儀なくされる。
だが、彼のように脱出出来た場合は良かったのだが、実際には大半のジオン軍の将兵たちは脱出することもできず、地球に置いてけぼりにされた。
その中にはマ・クベよりも階級が上である、ユーリ・ケラーネ少将までいた。
そして、これがジオン軍が敗北した最大の理由であったと言える。
ジオン軍にとって、オデッサの敗戦は大敗と言ってもいい戦いではあったが、総指揮官であったマ・クベは降格も処分もされていない。
というのも、ジオン軍自体は地球での戦いが泥沼化しており、撤退するか連邦軍総司令部ジャブローを攻略するかのどっちかを考えていた。
ルウム戦役から地球の半分を手に入れても、連邦軍は屈服することなく戦いを継続しており、ジオンが恐れる消耗戦へと巻き込んでいった。
元々国力で劣るジオンにとって、最悪の状況になりつつあったのだが、さらにここでザビ家のプリンスであり、四男であるガルマ・ザビがホワイトベース隊との戦いで戦死する。
これにはジオン軍総帥であるギレン・ザビが急遽国葬をし、戦意高揚のための演説をする羽目になったほどだ。
そんな状況の中でオデッサでの戦いは、ジオン軍にとってはある意味好機であったという見方もできる。
圧倒的兵力を動員され、ケチの付いた戦いから仕切り直して、ジオン軍有利な宇宙での戦いに専念するつもりでいたのだ。
だが、ここでジオン軍にとって計算違いの状況が起きていた。
地球に兵力の大半を送っていた中で、実戦経験豊富な将兵たちを置いてけぼりにしてしまった結果、MSパイロットを含めた軍人たちを失ってしまった。
ソロモン攻略戦時に宇宙攻撃軍司令官であるドズル・ザビ中将は「戦いは数だ」とギレンに援軍を要請していた。
だが、ギレンは新型MAビグザムを送るだけで兵力を送ることなく、ドズルはその後も悪態をつき「リックドムを6機送ってほしかった」と愚痴をこぼしている。
これはギレンがソロモンの死守に拘っていなかったことなどの戦略的要素があるのだが、一番の問題は単純に兵力が不足していたからに他ならない。
何しろ、MSが大量にあってもそれを動かせるパイロットたちが不足し、最終的にア・バオア・クー攻防戦では学徒動員するほどに追い込まれていたからだ。
こうした形で、オデッサ作戦の影響は確実にジオン軍を弱体化させていった。
ジオン軍はマ・クベに責任追及をすることも処罰することもなく、オデッサの敗戦を軽視していたのだが、この戦いはジオン地上軍だけではなく、ジオン軍全体にとてつもないダメージを与えていたのである。
最後に、一年戦争におけるオデッサ作戦は第二次世界大戦におけるノルマンディー上陸作戦であり、バグラチオン作戦、そしてミッドウェー海戦であったといえる。
戦争を行う上で、ある戦いでの勝敗が戦争そのものを変えてしまうことは決して少なくはない。
その一つが、オデッサ作戦であり、この戦いによって一年戦争は連邦軍の勝利で終わったのである。
もし、オデッサ作戦が失敗したら、一年戦争は一年で終結することはなかったかもしれない。