コラム#6 忘れられない店員さんの話
皆さんにはなんだか記憶に残っている、印象深い店員さんはいますか?
今日は私の忘れられない店員さんのお話をしたいとおもいます。
新宿歌舞伎町の珈琲店
ある日、PC作業をする場所を探していた私は、以前友人におすすめされていた「コスパの良い」珈琲店を見つけ、入ることにしました。
その珈琲店はギラギラした新宿歌舞伎町のアーケード看板のすぐ横にあり、一つのビルの1~3階までを使っていました。
恐る恐る中に入ると感じの良いマスター風の店員さんが柔らかい笑顔で出迎えてくれ、一気に安心感。彼は、何やらインカムでやり取りをした後、私を二階の席へと案内。
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二階へ上がると、それぞれの席はソファーが高級そうな布で包まれ、まるで喫茶室ルノアールのような高級感がありました。
(喫茶室ルノアール=「名画に恥じぬ喫茶室」というコンセプトの喫茶店。都会のオアシス。梅昆布茶だけで700円位する)
しばらく席で待っていると、カチッとした襟のYシャツとベストを着こなした別の店員さんが現れました。
彼は目に見えぬ速さでコースターと冷えたグラスを音もなくテーブルに置き、休む間もなく今度は片手でスマートにメニューを広げて、私の前にさっと広げてくれました。
メニューを差し出す手の袖ボタンが、きっちりと上品に閉められていたことが、なぜか印象に残っています。
「お決まりになりましたらお呼び下さいませ。」
その颯爽とした立ち居振る舞いは、高級レストランやホテルのウェイターを彷彿とさせました。
そして、メニューを決めて視線をあげると、その店員さんと目が合うという、これまたスマートな流れは完璧そのもの。
その後も、水を飲み干しそうになると、さっと新しいものが出てきたり、少し寒そうにしていたら、「少し空調弱めましょうか」と声をかけてくれたりしました。
そしていずれの場合も全く足音をさせなかったので、声をかけられる度にちょっとだけ驚きました。。
結局、コーヒーとロールケーキを頼んで食べ、両方とも期待通りに美味しかったけれど、一番印象に残ったのは、あの店員さんのスマートな姿でした。
「もしこれが海外のレストランだったら、Tipとして高額を渡していたな。」
と思いながら、レシートに目を落とす私。
「コーヒー(プレミアムリッチ) 850円」
…?!??
そういえばコーヒー850円は、まったく安くない。むしろあのルノアールよりも高いしスタバの2倍もする。
しかし、私の友人は確かに“コスパが良い”というようなことを言っていた気がする。。。はて。
もしかしたら友人も彼のサービスを受けたのかもしれない。
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確かに。あのサービスは高級ホテル並みのホスピタリティーにあふれていたし、それも含めると850円は安いと感じる気がします。
もし日本がTip制なら彼のサービスに1000円払う人がいてもおかしくありません。
吉祥寺のインドカリー
他にはこんな経験もあります。
吉祥寺にSajito Cafeというカレー屋さんがあります。
そこは11時の開店で11時20分に着いてしまうと既に2-30人が並んでいるようなかなりの人気店で、小さな店内はカウンターとテーブル合わせて15席ほどのこぢんまりとした作りになっていました。
今人気の古民家を改装したような外観で、木枠のガラス戸の近くには流行りの多肉植物が植えられている感じ。
その漂うおしゃれ感と吉祥寺というおしゃれな立地、そしてお客のほとんどが20~30代の若者というところを見ると、一見よくあるお洒落なカフェ風のカレー屋さんなのかと思っていた私の予想は、、、いい意味で打ち砕かれました。
店内はナンを焼くオーブンの熱で少し暑く感じられ、更にインド人のウェイターさんや厨房で働く本場から来たシェフ達の雰囲気が相まって、吉祥寺の真ん中のインドという感じ。
特にそのウェイターさんがとても元気がよく、
ギンギンの笑顔を光らせながら
「お勧めこれ!チーズナン。あとこっちのラッシーも!!」
とメニューを元気よく我々に渡しながら、スラスラとおすすめを紹介してくれました。
水を持ってくる時は、私が受け取ろうとすると、スイスイと避けて取らせないようにするというギャグまで披露。
彼は厨房と客席をいったり来たりしながら、その途中でほかの客にもメニューを早口で説明したり、親指を立てて「グー?」と確認したり、水を渡さないギャクをまたやったりしながら、華麗に踊っているようでした。
満員の客に対して、ウェイターは彼一人でしたが、実に見事な客捌きでした。
そして彼の発する元気100%の笑顔や立ち居振る舞いが、カレーと同じようにスパイスが利いていてエネルギッシュで、いつまでも記憶に残りました。
引き付ける人のエネルギー
これはレストランに限った話ではないのかなと思います。
通っていた銭湯や、美容院の店員さん、皆何かしら引き付けられるエネルギーがあります。
提供しているものだけではなくて、それを作っている人や、接してくれる人の生き生きした雰囲気が人の心をつかむ力になっている気がしています。
そしてこの状況でなかなか外出の機会が少なくなってこそ、また彼らに会いたくて仕方がないことに気づかされます。
(後日談)
あの珈琲店について調べるためにインターネットで検索してみて、驚きました。
なんとあのクオリティーと個性をだしていた珈琲店はチェーン展開していたのです。
名前は「珈琲茶館~集~」。
もしかしたらご存じの方もいるかもしれません。
しかし、もし、全ての店員が彼のような接客だったとすると、恐るべきコーヒー店だと思いました。
コーヒー800円が安いと感じるか、高いと感じるか、今度最寄りの~集~に行ってみようと思っています!
(おわり)
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