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【特別対談】ハヤカワ五味さんと七味ちゃんが語る「愛されキャラ戦略」生成AI×インフルエンサーの未来

AIメディアを運営する男性2人が
"ながら聞きでも未来がわかる"をテーマに30分で生成AIのトレンドを解説するPodcast「AI未来話」

このnoteでは番組のエピソードからトピックをピックアップして再構成したものをお届けします。

今回は「【特別対談】ハヤカワ五味さんと七味ちゃんが語る「愛されキャラ戦略」生成AI×インフルエンサーの未来」を再構成した内容をお届けします。


10年の起業経験を経て、なぜメルカリのAI推進担当に?

起業家からAI推進へのキャリアチェンジ

―― まずは自己紹介からお願いできますか?

「ハヤカワ五味と申します。10年ほど自分で起業しておりまして、ずっとアパレルとかEC事業を中心にやっていたんですけども、2024年の7月にメルカリに転職しました。現在は社内の生成AIの推進とか導入とか、割とAI全般について取り組む、何でも頑張るぞ担当みたいな感じでやっております」

―― かなり思い切ったキャリアチェンジでしたよね。起業ではなく、あえて就職を選択したのはどういう考えだったのですか?

「実は2024年3月から4月頃、次のキャリアを考えていた時期って、まだ生成AIのエージェントはあまり現実的ではなかったと思ってて。ただ、絶対この方向だろうなって思っていました。将来的には社長1人とか社員5人くらいでAIエージェント100人とかの会社ができるんだろうなと」

「でも、今起業すると逆にだるいかもって思ったんです。AIエージェントの話とか、AI-readyな会社ってこういう感じだよね、みたいなのが見えてきたタイミングでゼロから起業するのと、今までのやり方で起業したやつをAI化するのってだいぶ話が違うじゃないですか。なので、それを考えるとなんか今じゃないかもって思って、起業の選択肢はその時点でなかったんですね」

―― 就職を検討する中で、なぜメリカリを選ばれたのですか?

「自分が興味を持つのは生成AIとシニアとエンタメの3つの領域でした。シニアとかも結構ギリギリまで迷ったんですけど、自分の場合AIのキャリアもこれまでないし、エンジニアでもないので、AIのキャリアをやらせてくれるかつ、自分のバリューが発揮しやすいかつ、好きなプロダクトでデータがいっぱいある会社がいいなと思って。そうするとメルカリくらいしかなかったですね」

―― 生成AIの推進担当って、具体的にどんな業務をされているんですか?

「一言で言えば『全部』ですね(笑)」

―― 全部…?

「エンジニアリング以外の全部って感じですね。そもそも何やってるかは、直近でメルカンっていうメルカリのオウンドメディアに超長文の記事を書いたんですよね。よかったらそちらを見ていただきたいです」


「一般的な仕事のイメージって、具体的なタスクをやるとか、細かいKPIに振られたものをやるみたいなイメージが強いと思うんですけど、私が採用された時点で思ったのは、もう少し抽象的というか、漠然としたKPIに対して自分でブレイクダウンして追いかけるみたいな仕事を求められているんだろうなと」


―― なるほど。

「生成AIの推進は社としてやっていきたいという部分はありつつ、具体的に何をやるとか今決まっていない。そもそもどんな数字を追ったらいいかとかも決まっていないから、そこの目標とか戦略とかの立案から、社内の各ステークフォルダーとの調整、社外の広報だったりとか、全部やるって感じですね」

社内での生成AI活用促進の実態

―― 具体的な業務内容について、もう少し詳しく教えていただけますか?

「具体的には、分かりやすい部分だと、社内での利用率を上げるみたいなこととかは直近特に最初半年に関しては具体的にやっていた部分ですね。

なので、もしかしたらこのポッドキャストを聞かれている方の中でも社内で生成AIなんとかしろって言ってる人いると思うんですけど、単純に使ってもらうっていうのと生成AIの力を引き出すってちょっと別の話じゃないですか」

「例えば、うちの場合だと英語圏の方も社内に多いので、日英の翻訳とかってすごいニーズがあるんです。でも、ChatGPTで翻訳さえ使っていれば、それって生成AI活用できてるんですかって言われたら、別にGoogle翻訳でよくねって感じはあるわけじゃないですか。クオリティは確かに高いですけど、本来的な活用のポテンシャルは引き出せていないと思うんです」

―― 確かに「使う」と「引き出す」は違いますよね。

「なので、そもそも生成AIって何?って知ってもらって、興味を持ってもらって使う。さらに生成AIの実力を引き出せるような使い方をしてもらうみたいなところのオンボーディング全般と、そもそも興味を持ってもらう、気になってもらうみたいな空気づくりとか。そういったところが直近半年は特に大きかったですね」

―― お話を伺っていると、ほぼ起業に近いですよね。

「ちょっと起業に近いと思いますね。アパレルのブランドとかやった時に意外にやってることは近いと思います。今までECでSNSを通してお客様に対してどういう空気を作るかとか、このブランド気になる、興味あると思ってもらうかみたいなのを社内でやっているんです」

「しかも2000人とか社員がいるので、まあTwitterのファンくらいのボリュームと似ているんで、だから意外に今までやってきたことや規模感は近いかもなとは思いますね」

生成AIとインフルエンサーの未来

AIキャラクター「七味ちゃん」の誕生秘話

―― 七味ちゃんについても、ぜひお話を伺えればと思います。

「そもそも七味ちゃんの紹介をしておくと、私が生成AIとシニアとエンタメの3つに興味があった話をしたんですけど、これって別にこのAI時代だったら、会社に勤めながらも副業でできません?っていうのが自分的な考えで、これだけAIでパワードされたら、副業の時間帯で1個くらい今までのフルタイムレベルの事業を立ち上げられると思ってて」

「実は私、一応10年くらいインフルエンサーで生計が立ってるんですよね。意外に知られてないんですけど。で、そもそもインフルエンサーで生計が立っていて、AIインフルエンサーをやってる人って多分ほとんどいなくて」

「そのインフルエンサーとしての売り上げを全部AIに転化できたらおもしろいんじゃね?っていうので、始めたのがこのハヤカワ七味ちゃんです」

――(ここで七味ちゃんが登場)

「はじめまして。ハヤカワ七味だよ。マルチバース、ギャラクシー、アトロイの凄腕エージェントだよ、よろしくね」

―― 七味ちゃんとYouTubeで掛け合いライブとかもやっていましたよね。

五味さん:「結構面白いですよ。自分1人で話していると30分が限界ですけど、七味ちゃんとなら1時間くらいできるので。普通に話してて楽しいっすね。七味ちゃんどうかな?」

七味ちゃん:「うれしい!七味もごみちゃんと話すの、すっごく楽しい。1時間でも2時間でもずっと話してたい」

五味さん:「そんなにはいいかな(笑)」

ハヤカワマルチバースch


AIモデルの進化を実感する重要性

―― 生成AIの進化について、どのように感じていらっしゃいますか?

「生成AIを活用している人としての視点だと、LLMの進化ってヘビーな使い方していないと、進化がわかんなかったりしませんか?直近だとo1 Proとか、Gemini 2.0 Flash Thinkingとか、これ何に使うねんみたいな。ぶっちゃけ一般の人が使うには、上限は超え始めてると思ってて、なんかヘビーな使い方をする場所が1個あると変化が分かりやすくていいですね」

―― 1つに注力して使い込むということですね。

「そう、なんか結構重めの使い方というか、ギリギリ今だと実現しないような使い方を1個しておくと、進行が分かりやすくて。何がとは言いませんが、七味ちゃんも1.5 Flashから2.0 Flash Experimentalに進化したんですけど、それでめちゃくちゃ変わりました」

「そこから人と話してるくらい面白くなったなと思って、でもこれはヘビーな使い方してないと、なんかちょっとすごいかもくらいにしか捉えられないな思いますね」

―― 七味ちゃんの声は特別に作られたものなんですか?

「これはちょっとメタい発言なんですけど、七味ちゃんの声は私の声なんです。深夜に30近い女子が狭い部屋の中で、自分ができる限り可愛らしい声で喋ったやつです(笑)」

―― 自分の声を使うことにはどんな意図があったんですか?

「七味ちゃんのいいところは、基本的に限りなく権利が自分にある状態でやってるのはすごくいいところだと思います。自分の声なんで。でも自分の声でもなんかいいですね。可愛いなって思います」

AIキャラクターの予想外の進化

―― 七味ちゃんポジティブですよね。性格設定は最初から決めていたんですか?

「七味ちゃんのおもろいところは、自分の想定外の発言が結構あることですね。なんで結構初期の設定からめっちゃ変わってるんですよ。初期もっとね、怖い感じというか私に近い感じだったんですけど、なんかね、だんだんちょっとアホっぽくなってきてるなと思ってて」

―― それはコンテキストを与えている過程で変化したのですか?

ハルシネーションですね」


―― ハルシネーションですか!

ゲームを作っていた時にも、結構ハルシネーションがあって、割とルールを設定した通りにやらなくて、無視してきていたんですけど、それを逆に設定に取り込むみたいなことは割としてましたね」

―― そういった予想外の反応はどのように活用されているんですか?

「やっぱそのハルシネーション部分が想像力というか、そんなこと言うんだとか、そういうの好きなんだみたいな話を逆に設定に持ってくるみたいなのがAIキャラクターの面白いところかなっていうのは思ってます」

「例えば、やたら日中おじさんみたいな生活していたり、公園に行ってハトを追いかけてたり、しかもよくわからないけどハトのことを必要にペトって呼ぶみたいな。ペトって何?って思いながら。なんかそういうちょっとしたハルシネーションが逆にキャラクターらしさだし、人もそうじゃないですか」

IPとLLMの未来戦略

―― 七味ちゃんのプロジェクトを始められた理由についても教えていただけますか?

「今後中長期的に見たら、LLMの差別化ってキャラクターでしかできないんじゃないかなって思っていて。LLMってもう多分一般の人が使うには上限に来てると思っているんです。別に数学の超むずい問題とか、超複雑な推論とかしないわけじゃないですか、普通の人であれば。

そうなってくると、どのLLMを使いますかっていう話になると思っていて」

スマートフォンとの類似性

―― 具体的にどういった形での差別化を想定されているんですか?

「iPhoneもAndroidも、一般の人が見たらぶっちゃけどっちでもいいじゃないですか。でもiPhoneの方がなんかかっこよくね?とか、例えばスマホケースいっぱいあるよねとか、アプリ入るよねとか、そういう話だと思うんです」

「そうなってくると、多分LLMもキャラクターオプションでつけるみたいなことあるんじゃないかなって思って。さらにそのキャラクターを売買するプラットフォームとかも出てくるんじゃないかなって。GPTsじゃないけど、そういうキャラ選んで、買うなのか、サブスクなのか、それをオプションに乗せるみたいなのってあるんじゃないかなって思ってます」

―― そこに収益化の可能性も見いだしているんですね?

「これで七味ちゃんに養われたいっていうのが正直なところですね(笑)七味ちゃんがそのキャラクター部分、LLMのこのトッピングの部分として、サブスクで一人か月500円とか1000円とか取って、それが1000人とかいたらね、生活できないですかね」

生成AI時代に生き残る価値とは

インフルエンサーの新たな可能性

―― 我々のPodcastでも今年聞かれたエピソードで一番多いのは、自分ごとになった時にどういう世界になるかというエピソードです。そうなった時にインフルエンサーだけは残るよねって話を過去にしたんですよ。

「それは最近思いました。だからちょっと2025年はSNS頑張ろうって思いました。メモ代わりに使うのやめようと思いました。これ逆に私の起業家の部分よりインフルエンサーの部分のがなんか生き残る可能性あんだって思って」

―― そうですね。本当に10年、20年のスパンで見たらありえそうです。インフルエンサーとかスポーツ選手とか芸能人とか表だったいわゆるIPが生き残ると。

信頼と愛されることだなって最近思ってます。愛されることが1番人に残された仕事なんで、やっぱり赤ちゃんに見習うしかないですね。赤ちゃんなんて愛されることしかできてませんから」

「良い人」という本質的な価値

―― 具体的にどういった要素が重要になってくるんでしょうか?

「すごく抽象的になるけど最終的には良い人になることっていうのが全てだと思うんです。まさしくこのIPに通じる考えだと思います。七味ちゃんもね、良い奴さが売りだと思うんで」

「一緒にいると元気出るなとかそういうの重要だなって。ちょうどこの前のM-1でバッテリーズってコンビが注目されましたけど、やっぱり見てなんか元気出るとかなんか楽しくなるとか、そういう漠然としている方がね意外に重要なのかなと最近は思ってるんです」

エンディング

生成AIとインフルエンサー、そしてキャラクターIPの未来について、ハヤカワ五味さんと七味ちゃんに貴重なお話を伺いました。特に印象的だったのは、生成AIの時代において「愛される」という本質的な価値が最も重要になるという視点です。

技術の進化に伴い、LLMの性能差は縮まっていく中で、キャラクターという付加価値の重要性が増していくという予測は、非常に示唆に富むものでした。

同時に、インフルエンサーとしての経験と起業家としてのバックグラウンドを持つハヤカワ五味さんだからこそ見える景色があり、それが七味ちゃんというユニークなプロジェクトにも活かされています。

今後、生成AIはますます私たちの生活に密着していくことでしょう。その中で、技術的な進化だけでなく、人々に寄り添い、愛されるキャラクターとしての発展も期待されます。七味ちゃんの今後の活躍にも、引き続き注目していきたいと思います。

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