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エピソード#10  病棟看護師との連携で叶えられた退院


 
前日の夜に急遽決まった退院の送迎をさせて頂きました。
元々は、違う日時で退院の予定でしたが、どうしても早く自宅に帰りたいという、患者さんの強い希望があったそうで、前日の夜に、その患者さんが入院されている病棟の看護師から、対応可能かどうか連絡がありました。
 
歩行が難しい方で、入院の時にも対応させて頂いていましたので、住環境は把握していました。車を停められる場所から、形状が不規則な石の階段を昇り、そこから玄関までは、10メートルほどの通路を移動、玄関の上り框は高め、そしてベッドがある居室が2階という住環境、そして移動中も点滴を継続という依頼内容でした。
 
依頼があった時点で、当日の天気は雨風が強く、気温も低いという予報でしたが、それでも、どうしても自宅に帰りたいのだろうと、患者さんの強い気持ちを感じました。
病状が不安定な方でしたので、ご本人様が帰りたいと思ったタイミングを逃すと、戻れなくなってしまう可能性もあり、それだけはどうしても避けたいと思い、対応させていただきました。
病棟の看護師が、ご自宅にもどってからご本人様とご家族が困らない様に、往診の先生や、訪問看護師さんなどにも連絡を入れて下さっていましたので、私たちは、何しろ安全に、そしてご本人様を極力濡らさない様に、ご自宅のベッドまで送り届ける事に専念しました。
 
病室にお迎えに行くと、ベッド上に居たのは紛れもなく患者さんでした。
覇気が無く、言葉数も少なく、退院出来る喜びと、不安な気持ちが交錯しているようなご様子でした。それが、リクライニング車椅子のまま車に乗車して、ご自宅に向けて出発すると、車中では色々なお話をしてくださいました。
 
ご本人様のすぐ側に看護師が座って、点滴の管理をするとともに、会話を通してご本人様の観察をしていましたので、ご本人様が心配されていた気分不快も無く、ご自宅に着いた時には「もう着いたの?」と言われるほど、順調に到着しました。
 
ただ、私たちにとっては、ここからが重大な任務でした。ご自宅前に屋根付きのガレージがありましたので、そこで降車介助し、リクライニング車椅子のままですと階段介助が出来ない為、幅の狭い介助式車椅子に移乗介助。ここまでは屋根の下で出来ました。ここからは、ご家族に傘と点滴を持って頂き、外階段を引き上げ、玄関までの通路は前輪を上げて後ろ向きで移動して玄関へ。
一気に屋根下に移動しました。ここで、濡れた雨具などを外し、玄関の上り框を引き上げ、階段に移動しました。
ここから居室のある2階までの階段介助を行うにあたり、点滴はどうしようか?と一瞬考えていると、ご本人様が「持つよ。」と言って持って下さったので、安全に2階の居室まで移動出来ました。
 
ベッドに座ると希望されたので、ベッドへの移乗介助を行い、笑顔が見られました。
訪問看護師さんも来て下さって、車内でのご様子など引き継ぐ事が出来ました。ご本人様が希望した日に、無事ご自宅にお送りする事が出来て良かったです。


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