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山田えみるの本棚

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2021年5月の記事一覧

『こっくりさん代行、はじめました!!!』

『こっくりさん代行、はじめました!!!』

 奇想天街のはずれ、四十三段の石階段を登った先にある鳥居をくぐると、もはや何を祀っていたのかすら定かではない寂れた神社があります。春が終わっても散らない万年桜の咲き誇る境内には、日がな酒を呑んでは花見を楽しんでいるぐーたらな神様が。狐耳に狐しっぽ、ケモノな青年の姿をした神様は、午後のうららかな陽気を浴びて、ひとり、気持ちよさそうにあくびをしましていました。
「おっと。神様の数え方はひとりじゃなくて

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『こっくりさん代行、はじめました!!』

『こっくりさん代行、はじめました!!』

「こっくりさん! 石版鳴ってますってば! 早くそれを貸してください!」
 43段の石段を登った先にある、寂れた神社。伝承は風化し、いまでは何を祀っていたのかすら定かではないこの社には、力を喪った『こっくりさん』が棲み着いている。人々の信仰によってかたちづくられるかみさまは、忘れ去られればそのまま消えていってしまう。こっくりさん。令和の時代に、どれほどのひとが彼のことを憶えているだろう。
 かごめか

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