納涼
7月にもなり、本格的に厳しい暑さになってきた。
ということで夏らしい本のおすすめする。本のおすすめばかりしているけれど、私が出来ることなんて本を読むそして人に勧めることくらいしかないので。
季節は春夏秋冬の4つなので夏らしい小説なんて山ほどあるが、5冊に絞ったので良ければ手に取ってください。
「オーダーメイド殺人クラブ」辻村深月
辻村深月の中でこれが一番好き。というかこれを読んで辻村深月が好きになった。
私は物騒な話を期待して物騒な題名の小説を手に取りがちだけれど、物騒な題名の小説の大半は題名のインパクトだけでそんなに物騒じゃない。これも物騒さはそこまでない。
リア充女子グループの主人公が、陰キャ男子に自分の殺害を依頼する話。クラスカースト頂点と底辺の人が共通点を見つけてこっそり関係を築くの青春ぽくていいね。私にはそんな青春はなかったが。特別な存在に憧れる気持ちも廃退的な美に惹かれる気持ちも中高生特有の厨二病って感じで懐かしく恥ずかしくなる。
ナツイチで毎年ピックアップされている小説なので今なら多くの本屋に並んでいるのではないだろうか。
「悪い夏」染井為人
クズとワルしか出てこない!と帯が付いていたけれど本当にクズとワルしか出てこない。
ケースワーカーとケース(生活保護受給者)の話だったはずが、いつの間にか名ばかりのケースワーカーとケースとヤクザが社会のドン底で腐っていく話にやっていた。ケースワーカーの不正受給の時点で既に底辺なのにそこから更に落ちるのだから吃驚する。茹だるような暑さが本から伝わってくる。
暑い日に読んだら此方が腐乱死体になりそう。
「サマーサイダー」壁井ユカコ
文庫の表紙がみんな大好き「宝石の国」の市川春子。
たしか高校の頃に人に借りた本なのだけれども、ずっと借りパクしてていつか返したいと思いつつ返せていない本。
幼馴染の三人、廃校舎、変死体。
夏っぽいね。やっぱり夏と言ったら青春と死体だね。ない青春を思い出す。
青春小説風なのに後半はSFホラーに近い。蝉が苦手な人は読むの厳しいと言われていたりするが、まあ本なので飛び出してこないし安心してほしい。
「残り全部バケーション」伊坂幸太郎
伊坂幸太郎といったら裏稼業。父親の浮気告白から始まるのが印象的。伊坂幸太郎らしく爽快感がある。
表紙とバケーションという響きで夏のおすすめに選出したが、夏の話だったかは覚えていない。短編としても長編としても楽しめるタイプの小説。
車はアクセルを踏まないでも進むみたいなフレーズが印象に残っている。
そういえば「マリアビートル」がブラッド・ピットでハリウッド映画化したね。伊坂幸太郎の殺し屋が大好きだけれど、伊坂幸太郎の殺し屋達は普段の面とのギャップとかちょっと冴えない感じが良いのでブラッド・ピットのイメージではないな〜って思ってしまうな。
「向日葵の咲かない夏」道尾秀介
やっぱり夏と言ったらこの小説!って思う。この小説もまあまあ気持ち悪いね。初っ端から死んだ友人が虫になって出てくるし。夏休みに生まれ変わった友人の頼みを聞いて事件を解決させる小学生の物語というあらすじの爽やかさに対してこの気持ち悪さは一度読んだら忘れないと思う。
私は気持ちの悪い作品が大好きなのでこれも大好きだ。叙述トリックが盛り込まれているのもミステリーの醍醐味で美味しい。
夏の話の小説は爽やかな皮を被った気持ちの悪いものが多く、それは夏そのものだと感じる。夏も海や祭りで楽しいイメージを持つのに実際は灼熱地獄なので。
ホラーはあまり開拓できていないけれど、折角夏になったのでホラーも読みたいと思う。おすすめあれば教えてください。
それでは。