Haruka Nakamura PIANO ENSEMBLE - SIN 1 Ransen 2021年1月8日 09:56 この音を聞くと、懐かしく狂おしく愛おしい、そういう何かが自分の中にあることを思い出す。はっきりと「なに」かはわからない。心の奥底の、記憶の片隅の、茫漠とした霧の向こうの、誰にも知られていない、自分自身さえも気づいていない場所で、美しく、醜く、儚く、浅ましく、獣のようで、神々しいその「なに」かは、震え、鼓動し、熱を帯び、冷え固まり、刻々と形を変える。忘れてしまった方がよかったこと、覚えてないふりをしたこと、違うものに書き換えてしまったこと、なかったものになったこと。記憶という装置からは記録を消され、改ざんされ、違うフォルダにいれられたまま、それでも、心という部分や、肌や、細胞や、そこに含まれる水が覚えている。音の振動が、「なに」かを思い出させる。忘れてはいけなかったこと、ちゃんとそこにあって、ずっと待ってくれているもの。体が覚えていて、心が震えて、わけもなく涙が出たり、苦しくて辛くて、甘く切なく、愛おしい。「なに」か。 いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #音楽 1