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高崎はパンの町

一年前に引っ越してきて、高崎が「パスタの町」だと知った。年に一度、パスタの王者を決めるイベント「キングオブパスタ」で盛り上がる。いつかは歴代王者のパスタ屋さんを巡りたいと思ってはいるが、今回は同じく小麦を使う「パン」の話。

高崎に来るまで、ここまでパン屋さんのレベルが高いとは思わなかった。東京や千葉でさんざん美味いと言われるパンを食べてきた私が、まいりましたと天を仰ぐ程のすごいパン屋さんが知るだけで片手に余るほどある。ドイツパン、フランスパン、惣菜パン、ベーグル…高崎に住む人は、皆さん近所にご贔屓の一店を擁しているのではないだろうか。

現時点での私の「推し」は2店。
一店目は、駅から車で10分の中居団地にあるドイツパン「シュヴァイン」。ドイツパンなので質実剛健、余計な主張はしないが、粉の上質さが噛めば噛むほどよくわかる。
まだ全部は試してないけど、私のおすすめは、料理の付け合わせに最適なシンプルなライ麦パン。
同じ並びにフレンチビストロ「ビストロクー」がある。シュヴァインのパンを使っているなら間違いないと食べに行って、すっかり月一のメニュー替えのたびに通うようになってしまった。ドイツパンと絶品フレンチ(写真)との相性はもちろん最高だ。
ビストロクーのオーナーがぽそりとこう言っていた。他のパンを食べても結局はシュヴァインのパンに戻ってしまう。シュヴァインのような素朴なパン屋を15年間支持し続ける客層があるのなら、きっと自分の店もこの場所でやっていけると思ったと。一見地味だが、フランス料理店を引き寄せ、客を呼び寄せる底力。それがシュヴァインのパンの魅力なのだ。

もう一店は環状線から少し入った住宅街にある「ももパン」。こちらはフランス人のご主人が焼く、もう無茶苦茶ボナペティ!なフランスパンの店。朝10時の開店から小さなお店の前に行列ができる。
バケットもハードなライ麦パンも美味しいけど、私はクルミ食パンをついつい頼んでしまう。そのままちぎって食べても軽くトーストして食べても元気な酵母と小麦の香りが鼻腔をくすぐりトレビアーンなのだ。いやいや、フィッセル(細いフランスパン)はパリのムフタール市場のパン屋さんで食べた思い出のあの味だし、カヌレなんて、本場ボルドーの有名店をあっさり超えている。
小さな店内は、まるでどこでもドアを使って、フランスがはるばる高崎までやって来たみたい。

ももパンもシュヴァインも、店からの帰り道は、後部座席に置いた新鮮なパンの香りが車内に広がる。
運転席の家人は「すごいいい匂いだねぇ」と毎回嬉しそうに言う。
「お腹すいたねぇ、早く帰ろう」
焼きたてパンがあれば、週末のお昼ご飯がいきなり贅沢なものに変わる。

こんな素晴らしいパンだけど、2人分のランチで好きなものを好きなだけ買っても千円いかないくらいの値段だ。だから毎回「買いすぎちゃった」と言うことになる。でも、美味しいから気がつくと、その日のうちになくなっている。

高崎のパスタ巡りも始めたいけれど、パンの魅力に取り憑かれているうちは、これ以上の体重増加を防ぐためにも、少し先送りにした方がよさそうだ。高崎のパン万歳!

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