
【読了】うつくしい人 西加奈子
お疲れ様です。
二年振りくらいに読書記録をしようと思います。
読書自体はまあまあしていたんですけど感想を文章化することに苦手意識があったもんで人に話したり読み終わって満足みたいな状態が続いていまして…
ただ、この本読んだ時に感じたことがかなり多かったことと、文章に起こすべきだと何となく思ったので記録として久々に書くことにしました。
あくまでも全体を通じての感想を書きたいんですけど読んでいる途中の感想、読み終わってからの感想がそれぞれあるため便宜的に物語を①と②で区切らせていただきます。
①初め〜登場人物がある程度出揃うまで
・主人公が仕事を辞め、5日間の一人旅に出て飛行機に乗る場面
主人公が抱える苦しみとして誰かが怒っている時に自分が怒られている訳でもないのにくらってしまうことや、色々考えすぎてしまうこと、飛行機で騒ぐ中年女性集団に対しハラハラしたり周りを気にせずいるのが羨ましいと思ってしまうことが描かれていました。
まあこの苦しみに対して自分は共感できる方で、誰かが怒っていると嫌な感情になったり、静かな場所とかで周りに無頓着でギャーギャー騒いだりできる人間が羨ましいと思うのでなるほどなとなりました。
主人公は飛行機で騒ぐ中年女性集団にハラハラしたといっていて、だいぶ共感はできるんですけど自分事ではないため主人公ほどは気にならないかなと感じました。
自身と照らし合せるとそれよりも、僕は「誰かに怒られたくない」という感情がかなり先行して行動している人間なので、あの人怒られないかなと考えてしまうことよりも自分が怒られないか心配してしまうことの方が多いなと感じました。
主な例だと、接客のアルバイトで売場に立っていてお客さんや社員が周りにいる中で他のアルバイトとかに業務の会話以外で話しかけられるのが凄く嫌だと感じてしまうことが挙げられるかなと思います。別に会話すればいいじゃんと思うかもしれないんですけど(社員の人に関係ない話してるの聞かれて怒られないかな…)とかめっちゃ考えてしまうので周りの人が怒られないかハラハラするよりも自分が怒られないかにハラハラすることが多いなと感じましたね…
本の話に戻ると、
・空港に到着しスーツケースが流れてくるのを待つ場面
ここの場面は主人公が飛行機で騒いでいた中年女性集団よりも自分のスーツケースが先に来て欲しいと考えることと、自分以外の他の荷物に対し凄く負の感情を持っていたことが印象的でした。
他人の荷物をボロボロのだの安っぽいだの言っていてかなり余裕がねえなと思いましたね…。
自分に余裕がないと周りの見方が変わってくるなとひしひしと感じました。また、自分のスーツケースが中年女性たちより先に来て欲しいという気持ちは分からんでもないがそこまでか?って思いましたね。先に来ないと負けというか自分は周りに迷惑をかけているわけでもないし、あいつらより上だというか。ここまで読んでいた感想として主人公は自分が仕事を辞め、社会的地位というか人間レベルというか、決して自分が「上」の人間ではないと分かっていながらもこいつは自分よりも「下」だなと周りを若干下げながら生きてるなあと感じ、自分もそうだなあと思いましたね…
決して「上」では無いけど自分より「下」はいるなというか、周りに無頓着な人間が羨ましいとは思いつつも同時にああはなりたくないなと感じたり…
むこうからしたらこっちのことなんか全く気にしてないんだろうけど。
主人公の苦しみに対して65%共感、35%流石に考えすぎなんじゃないかなと思いました。
・ホテルに到着し、ある程度登場人物が出揃う場面
ホテルの人間や宿泊客、バーテンダー坂崎、外国人マティアスなどが出てきた場面。
苦しみの場面から物語が進んだことに対して少し嫌だなと思ってしまいました。
いつか物語が終わることで苦しんでいる主人公が救われたり改善エンドがやってくると、苦しみに共感していた自分が追い越される、主人公が救われても自分は救われないなという感覚になり読んでる途中結末まじで頼むぞと思いました。
あと一番嫌だったのが登場人物の外国人マティアスと恋愛エンドとかになったらもう最悪だなと。
そういう緊張の中この場面を読み進めていきましたね…
結果からいうと杞憂だったんですけど…
西加奈子を舐めてたな…まじですみませんって感じ。
②登場人物がある程度出揃う〜帰宅まで
ここから物語が進むにつれて主人公の抱える苦しみ、呪縛、姉に対する向き合い方が変わっていき旅行が終わり元の生活へ戻っていきます。
元の生活へ戻ることを俗世に帰るとまで表現していた主人公が戻りたくなかった自分の人生に向き合えるようになり帰って行けたのがすごく良かったです。
また登場人物のバーテンダー坂崎、外国人マティアスと打ち解けたにも関わらず挨拶をせず別れたり、去り際に振り返らなかったりときっぱり帰宅することができたのは主人公がこの場に自分の抱えていた何かを置いていけたからだと思うし、状況が劇的に改善された訳でもないが自分の思考を緩やかに良い方向に転換できていた感じがして終わり方が自分が危惧していたかたちと全く別のものになってほっとしました。
そして全体を通して表題にもなっている「うつくしい人」とは何かについて読んでいて考えることが多かったです。
③「うつくしい人」とは何だったのか
物語の中で度々でてきた「うつくしい人」という単語について、超拡大解釈しながら考えました。
まず、登場人物の中では「うつくしい人」として美人で良い子であり、そのまま大人になってしまった姉と若くして両親を亡くし母親の残した言葉、教えに縋る外国人マティアスの2人が挙げられていました。この2人は容姿が優れていること、異性との経験がないこと、自身で考えるのを辞めていること(姉は物語や趣味に逃避している、マティアスは亡くなった母から言われたことだけを頼りにしている)が共通すると思われます。綺麗な感じというよりかは穢れを知らないというか。この2人に対する主人公の感情を考えつつ、自分が解釈した「うつくしい人」とは、
・周りが傷つけようと思ってしまう人、つまりは嫉妬の対象となる人
これは誰からみても嫉妬の対象となるような容姿や運動神経だけでなく、自分が嫉妬の対象とするかどうか。つまり、
誰から見ても「うつくしい人」とは存在せず見る人の価値観や考え方によって見られる人が「うつくしい人」かが決まる。
自分が「うつくしい人」だと思っている人が皆から見て「うつくしい人」だとも限らない、自分にとって自分は「うつくしい人」でないかもしれないが、誰かにとっては自分が「うつくしい人」であるかもしれない。
という考え方になりました。また、「うつくしい人」とは他者評価により生まれるため、
「うつくしい人」にはなれない。ただし、誰かから見たら自分は「うつくしい人」である。
が自分の結論です。
何言ってるかわからないかもしれないんですけどこれが結論です。つまりなんだと言われたら、「うつくしい人」になることが別にいいことではないし、「うつくしい人」でありたいのなら誰に「うつくしい人」だと思われたいか考えるべきであるということです…
自分は周りに無頓着で公共の場で騒ぐことができる人間に対して、「神経が図太くて羨ましいな」「あんまり病んだりしないんだろうな」とか思ったりするのですが、じゃあああなりたいかと言われたら別にそういう訳でもないので自分からみたら「うつくしい人」ではあるが、自分がああいう人間になりたくはないと思ってしまう訳です。
人には誰しも羨ましいと思う面とそうでない点があると思います。
例えばあなたが今容姿でも才能でも能力でもなんでも良いので「うつくしい人」だと思う人を1人思い浮かべてみて欲しいです。確かにその人のことを羨ましいと思う反面、そうでない点も出てくるはずです…
主人公も姉やマティアスを「うつくしい人」だとしていたが、ああはならないようにしようと考えていたため、嫉妬の対象とする一面もあればそうでない一面もあるという…
結局人はないものねだりしてしまうものなのかなと思いました。
物語としてすごく良い終わり方をしていて、登場人物も魅力的なので皆さん読んでみて欲しいです。また、もし読んだら自分にとって「うつくしい人」とはなんなのか、どういう人なのかぜひ聞かせてください。
だいぶ久しぶりに長文読書記録をつらつらとしてみて、結果楽しかったので継続できたらいいなと思います。
あとこの本友人に借りて読んだんですけど、ちょうど1人で旅行に出る日に読めたのはすごい奇跡的で良いタイミングだったなと。ありがとうございます。
それでは。