散文
私は、冬の寒い日の朝の空気が好きだ。
マイナス7度くらいがいい。
踏み込む雪が「ギュッ」と音がするくらいの湿度でさらには雪がうっすら5センチくらい積もっていればなお良い。
冬の晴れた日の夜も好きだ。
澄んだ星空の中を月明かりに照らされながら歩く。
コンビニに寄ってアイスを買っても大丈夫。いくら寄り道したってアイスは溶けない。凍てつく寒さをも味方にして、夜の雪道を独占する。
冬の雪道…思い出す光景…。それは、私の財産だ。
泣きながら飛び出した私を追いかけてきてくれたK。
真夜中の初詣。
ソリで用水路に落ちたT。
Sの家まで歩く道のり。
全国大会前日のランニング。
夜中に家を抜け出してYの家でこっそりすごした。
ティーニュで朝イチ走ろうとしたら、温度計がマイナス20度だった。
肺に入る冬の匂いと、吐くときの鉄の匂い。
私を作った過去の出来事。
あの冬。この冬。
あいつらがいて、私がいた。
「解凍されかけた冬のあぜ道
まだ未知の世界に続く」
これはJからもらった大事な言葉。
私の人生、捨てたもんじゃないなって思う。捨てなくてよかったなって思う。生かしてくれたみんな、ありがとう。心からの感謝を。