地域で活動するにあたっての戦略やパーパスの持ち方
私が所属するデザイン会社、コンセントでは昨年から有志メンバーで「ひらくデザインリサーチ」という活動を行っています。
「ひらくデザインリサーチ」は普段のクライアントワークから少し離れて、自分の興味や関心をベースに問いを立ち上げ、探索するためのデザインリサーチプログラムです。
2023年度は「土着」「工夫」「余裕」という3つのテーマのチームで活動をしました。
都会っ子が地域と関わりを持つ
突然ですが、私は都会っ子です。
生まれも育ちも、現住所も、東京都渋谷区。両親も東京都内出身なので、いわゆる「田舎」や「ふるさと」がありません。
盆も正月も基本的に東京で過ごしてきましたので、子供の頃は夏休みにおじいちゃんの家に遊びに行った、という友人の話を聞いては「田舎」や「ふるさと」に憧れていました。
大人になってからは、キャンプやフェス、スノボなどで地方へ出向くときはもちろん、撮影や取材、イベントなどのお仕事で地方に出張するときは、いつも人一倍ワクワクしています。
そんな都会っ子の私ですが、これまで観光や地域活性などのプロジェクトを通じて、いくつか特定の地域と関わりを持つ機会をいただきました。
そのようなお仕事にはとてもやりがいを感じていたのですが、一方で、東京から対価をいただいて地域に関わるのならば必ずやミッションを達成しなければいけない、と構えてしまい、プロジェクトの目的やゴール、どんな戦略が必要か、というようなことに固執してしまったこともありました。そして、いつしか「東京に住みながら地域と関わることができるのだろうか…」というある種の迷いが湧いてくるようになりました。
とはいえ、引き続きなんとなく「田舎」「ふるさと」に憧れがあったので、何かしらの形で地方や地域との関わりを持つことができたら良いな、と考えていました。
そんな少しモヤモヤした気持ちがどこかにある中で、この「ひらくデザインリサーチ」のTeam「土着」に参加することになったのでした。
会津で見たこと、感じたこと
土着チームのフィールドワークは福島県の会津地域。
初めて訪れる会津は、城下町らしい町並みとその先に広がる初夏の里山風景がとても心地よい場所でした。
現地では、会津の暮らし研究室の藤井さん、矢野さんにアテンドいただき、フィールドワークを行いました。
1日目は、初めての土地、初めて出会った方からお話を伺い、新しい発見がたくさんあり充実した一日になりましたが、私の中で変化があったのは2日目だったと思います。
2日目はNIPPONIA 楢山集落という西会津の古民家をリノベーションした宿泊施設を見学させていただきました。そこは、運営するランドスケープデザイナーの矢部 佳宏さんが約360年続く山奥の集落にある家を19代目として継承しながら、持続可能な地域づくりを実践している場所です。
施設を案内していただく中で、矢部さんから「土着をリサーチするなら、土着のものを食べてみよう」と言われ、裏山に生えているグミの実を食べたのですが、このあたりから会津という土地に少し愛着が湧いたように思います。
フィールドワーク自体は1泊2日の短期間だったのですが、東京に帰る頃には、「会津良いところだな〜また来たいな」と思うようになりました。現地に足を運び、文化や暮らし、自然にふれるとともに、地域で活動する人にお話を伺ったことで、自分の中での会津との向き合い方が変わっていったように感じます。一度だけ訪れる旅行とは違った感覚でした。
土着には、戦略もパーパスもいらない
前述の通り、これまでいくつかの地域と関わることがありましたが、それは行政や自治体、地域の企業から対価をいただいて業務に取り組むとことがほとんど。そしてそういった業務では、目的やゴール、実施内容、予算、期間などを決めてプロジェクトに取り組みました。
つまり、シンプルにいえば、地域の中にある課題の一つに対して、決められた期間と費用の中でできることを実施する、ということになります。それによって、本来やるべきことのほんの一部にしか着手できない、やっと軌道に乗ってきたところでプロジェクトが終了してしまう、対価が見合わない…といった問題が起こるわけなのです。
そういった問題に何度か直面したことにより、私の中で、「東京から地域に関わる最適な関わり方ってなんだろう」と考えるようになったのですが、今回のフィールドワークで会津の暮らし研究室の藤井さんから、「構造から入ると失敗する」「大事なのは非公式のコミュニティ。非公式のコミュニティにはパーパスはいらない」というお話を伺ったことがそのアンサーだったと思います。
会津には行政の仕組みを利用した活動もありますが、多くはその地域に愛着を持った人たちが非公式にその場に集い、滞在し、共感し合った人同士がやりたいことをやっている、という実態がありました。
会津にはそういった愛着を持った人たちが非公式で活動できる土壌ができていたのです。
藤井さんや矢部さんも「土壌づくりが一番大事」とおっしゃっていて、愛着を持った人たちが「地域をもっと良くしたいと」思う気持ちを持って活動すること、それができる土壌があれば戦略やパーパスはいらないのだとわかりました。
では、良い土壌はどうやったら作れるのでしょうか。
耕す人がいれば良い?それとも、土はその土地にあるものだから、土そのものが持つポテンシャルというものがあるのでしょうか?
今回のリサーチで私の中で生まれたネクストクエスチョンかもしれません。
そして、私自身が愛着を持って「この地域でなにかやりたい」と定期的に訪れる場所を持つことができるのか、ということも今後の気になる動向です。
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