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触れられる、紙の未来を考える

6月1日(金)、バタバタと仕事や用事を片付け、夕方で混み始めた地下鉄に乗って表参道に。

表参道駅の、何度行っても慣れない改札と出口を時計を気にして小走りになりながら向かったのは、今日からはじまったtakeo paper show 2018「precision」。

特殊紙と呼ばれる、色や意匠、手触り風合い豊かな”ファインペーパー”を販売する紙屋さん・竹尾さんが開催する紙の展示会が今日から3日間開催されているのです。

(同じく紙屋さんの平和紙業さんでは”ファンシーペーパー”って呼びますね。わたしはこちらで呼ぶことが多い)


紙という素材の新しい見せ方や可能性を、様々なクリエイター、加工会社とタッグを組んで作品に落とし込むpaper show。わたしは今回で3回目。

展示内容の詳細についてはここでは省略するとして(多分とても長くなるし偏った感想になるので…)、感じたことをつらつら書いてみようと思います。

初日夜のこのにぎわい。みんなじっくり、ついつい手を伸ばしてしまいながら前のめりで作品を見ていた。スマホでカシャカシャ写真を撮る人の多さにまだ慣れないながら、隠れてコソコソわたしもスマホに収めました。


paper showのプレスリリースを見たときにまず感じたのは、テーマの身近さ

-精度を経て立ち上がる紙-という副題にやや??と思いつつ、展示作品の内容にに並ぶのは「段ボール」「モールド」「機能紙」…!

竹尾さんといえば多種多様で色鮮やかで質感たっぷりのファインペーパー!というイメージを持っていたし(きっとみなさん同じはず)、あの竹尾さんが…!?と、これまでのpaper showにはないラインナップに興味津々でした。

今年で48回目の開催で、その中のたった3回しか行ったことのないわたしが言うのも偏りがあるでしょうが、ファインペーパーの竹尾さんが総力を挙げて取り組むpaper showとして、異端なテーマだったのではないでしょうか。


もうひとつ、一番印象的だったのがエントランスのディスプレイ。

元々紙屋で働いているわたしからしたら懐かしい、茶色のクラフト紙(ワンプ)に包まれた紙は、ロールになっているものも、シートにカットした平判も、積み重なったパレットに、まるで倉庫のような風景。

紙の在庫時や流通時に目にするこの梱包姿は、きっと業界外の人からすると驚きの光景なのではないでしょうか。

なにを隠そう一番好きな紙は「ワンプ」!と答えるわたしは、この光景にまず大興奮だったのですが、みなさんはどう思ったのだろう?

この梱包時の姿は、本展示室の前部屋にも、展示作品を梱包した状態が展示されていたのだけれど(作品毎の梱包に少しづつ違いがあって、そこもおもしろポイント!)足を運んだ例えば学生さんやデザイナーさんは、この姿が手に届く前の姿だとわかっただろうか。

前職の新入社員研修ではじめて見た紙の倉庫は、高く積み上げられた紙の大きさやボリューム、種類の多さ、製紙会社毎に、紙毎に異なるワンプにつつまれた包、横に貼られた紙名のラベル…
その圧倒的な存在感と、そこで働く人の淡々とした空気に胸が痛くなるくらいびっくりして、ひとつひとつを開けてどんな紙かを見たくてしょうがなかった。

その時の驚きを思い出しながら、ディスプレイとしても紙の大きな見せ方としてもインパクトがあるなー!思ったけれど、これがどういう意図で、どう伝わっているのかがとても気になって、思わず周りを見渡してしまった。

製紙会社から倉庫へ、加工所をいくつも超えて手元へ、わたしはこの過程に生まれるストーリーに魅力を強く感じるのですが、つい何事にも共感を求めてしまいがちなので、この展示がどう人に伝わっているのかが気になってしょうがない。

そのストーリーに思いを馳せ、手元に届くまで何人の手が思いが重なっただろう。そんな想像を何人が抱いただろう。

わたしも!という人がいたら、颯爽と駆け寄ってハイタッチしたかった。


さらにこのエリアの紙は好きにちぎったり持って帰ったりしていいという超大盤振る舞いな仕掛けがあって、大きな紙にたくさんの人が列をなしている様は圧巻。

それぞれの紙の値段とかがざっくりわかってしまうので、恐る恐るキュリアスマターをちぎってジャガイモ由来の独特の塗工を味わうにとどまってしまったわたしですが…

みなさん思い思いにちぎったり折ったり、こんな体験をこんな大勢に向けてフリーでできるのは、もう竹尾さんにしかできないことです。


前回の投稿にも書きましたが、わたしは紙me(カミメ)という紙の文化や人を繋げて発信するメディアの運営をやっています。

今年の2月に行った実イベントでも、特に展示には力を入れていました。

いかに分かりやすく・共感を生めるかに頭を悩ませ、一緒に運営をしているデザイナーの若林さんと作った展示。

それは、一番に『紙は身近で誰にだって触ること・知ること・使うことができるもの』という共通認識がわたしたちの中に無意識にあったからだな、と最近思うのです。

こんなにおもしろくてかわいくて楽しくていろんな人が関わってできる「紙」のこと、知らないなんてもったいない!みんなもっと知って!好きになって!一緒に話そう!!

そんなゴリ推しの気持ちが紙meにはあります。


何が言いたいかというと、いろんな方面から紙を伝えることの幅がまだまだまだまだ∞あるということそれぞれができることをできるだけ長く続けていけるように柔らかく変わっていきたい、ということ。


paper showはファインペーパーの大御所である竹尾さんにしかできないギミックと人の輪、クオリティに満ちていて、紙をひとつ上の価値観に持ち上げるような可能性を想像させる。

これはもう、大きな組織でしかできないし、大きな組織だからやるべきことだと思います。

だから、今年のpaper showの身近なテーマ設定はとても驚いたし、作品を見て、2018年というこの時代の紙の価値のひとつがこの身近さから再発見されるというのがおもしろく新鮮でした。

見たことがあるけど新しい、わたし事への結びつき。これは紙に限らず今の時代のあらゆるコンテンツのキーワードな気がします。


一方わたしのいる紙meは現在主要メンバー2人。

資本はないし動力はきっと小さい。

でも、好きだから伝えたい、という気持ちと爆発力はきっと負けていない。

全て自分達の手や足や頭でやらなければいけないけど(もちろん色々な方のご協力があってはじめてできるし、竹尾さんにもとてもお世話になりました)、その目の手の届く範囲で、自分たちで触りながら、その深さを探りながら形にすることができる。

時代や流行、その時のわたしや紙meの目線を大切に、紙meは紙meらしく、紙meの思ういろんな視線をキュレーションしながら、少しずつメンバーを増やしながら、paper showのように長く続くものにしていきたい。

この楽しさをみんなに共有できるように、分かりやすく、伝わりやすい、すぐに話ができる身近さと親しみやすさが紙meの根本なので、ここは変えずに伸ばせるようにしていくために、わたしは何かできるだろう。

手を伸ばせばすぐに情報がSNSやwebで手に入る今だからこそ、よりリアルな実体験と本気のおすすめをどう伝えよう。

その為に、わたしはもっともっと紙を知りたいし、その周りの人たちと会って、ストーリーを紡いでいきたいし、それを発信していかなきゃいけない。

改めて、自分の立っている場所を見つめ直して背中を押されたような、そんな金曜の夜でした。

紙が絶えず人を楽しませる大切な素材であり続けるように、日常を少し明るくするようなツールであるように、わたしにできることをひとつひとつ形にしていきたいな。


それにしても読みづらい文章でごめんなさい…

文章力磨くのも伝えやすさに必須…!頑張ります。


紙や印刷や加工にまつわる色んな方に会いにいく旅に使わせていただきます!