日本経済を分析するためのノート(12)
次に規制緩和が進まないことが日本経済の停滞をもたらしているという議論について考えてみましょう。
諸々の規制を緩和して自由な競争を実現することが、経済活動に活力を与え経済成長を促す、といった考え方です。
これはあまりに安易な考え方です。というのも、競争は生産の効率化へのインセンティブを促すだけでそれを実現するわけではないからです。
生産の効率化は生産そのものの技術性を上げなければ実現されません。そのためには、改善されたもしくは新たな技術の開発が必要です。
それがない場合は企業は賃金の引き下げや労働密度の引き上げというような手を使うでしょう。企業は付加価値を極大化する行動をとっているわけではなく、利潤を極大化することをめざしているからです。
日本では生産工程にコンピュータを導入して生産を効率化することも確かに行われてきました。しかし規制緩和によって進んだのは、労働の規制緩和により様々な雇用形態をとることが可能になり、賃金コストを下げるために期間限定で賃金も低い非正規雇用を増大させたことです。
また金融の自由化は、金融市場での売買によって利益を上げることを普及させました。金融市場に資金が流入しつづける限りは金融商品は値上がりしていくからです。
こんにち日本企業は安直な行動を繰り返し生産性の向上に遅れた、というようなことが言われてもいます。しかし、それこそは、じつは市場原理を働かせて競争力を高めると言われて行われた規制緩和の結果であると言わざるを得ません。