日本経済を分析するためのノート(1)
野口悠紀雄氏の『プア・ジャパン』という本を読みました。
野口氏は早くからアベノミクスについて、マネタリーベースを増やしてもマネーサプライが増えていないことを指摘して──つまり日銀券を大量に市場に出しても流通しなかったということ──アベノミクスが失敗であったことを明らかにしてきた方です。
しかしこの野口氏であっても、今後の日本経済の活性化のためには労働生産性の高いIT産業を興隆させればよいと、あの竹中平蔵氏と似たようなことしか言うことができていません。このことにはいささかがっかりしました。
それでもポール・クルーグマン氏のように大学1・2年の経済学で習う国民所得理論のイロハさえ理解していない人物に比べればしっかりしていると思います(注)。
この野口氏のような分析のどこに落とし穴があるのか、それを論じながら今の日本経済について考察してみたいと思います。
(以下、不定期で執筆していきます)
(注)ポール・クルーグマン氏の『良い経済学・悪い経済学』という著書を読めば、彼が開放経済での国民所得理論におけるX+I=M+Sという式が恒等式であることを理解していないことがわかる。
クルーグマン氏はこの式を持ち出してXとIだけが大きくなるのは不可能であると主張するが、この式の意味するものは、XとIが大きくなるとそれに見合っただけSが大きくなるということである。