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日本経済をどうみるか

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noteに書いた「日本経済を分析するためのノート」をまとめました。 日本経済の分析のための基本的なことを書いたものです。 いまの日本経済をみる際の基準になると思います。 どれも短…
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#労働生産性

日本経済を分析するためのノート(2)

「日本経済の活性化のためには労働生産性の高いIT産業を興隆させればよい」といったたぐいの議論を検討するために、まず経済学でいう労働生産性という概念についてみておくことにします。 この労働生産性とは付加価値の労働生産性ということです。言い換えれば1時間の労働でどれだけの物を作ったりサービスを提供できるかということ(これを以下、便宜的に「普通の意味での労働生産性」と言うことにします)ではない、ということです。 大雑把に言って、売上額から原材料費を引いた残りが付加価値です。これをそ

日本経済を分析するためのノート(10)

さて、きわめて粗っぽく日本経済の構造をまとめてみましたが、こうした見方を補足するために二つの考え方について考えてみることにします。 その一つは、日本経済の停滞は労働生産性の上昇が停滞しているためであるというとらえ方です。そしてもう一つは規制緩和が進まないのが停滞をもたらしているという考え方です。野口氏の著書においてもこうした見解がしばしば見られます。 まず、日本経済の停滞は労働生産性の上昇が停滞しているためである、というとらえ方についてです。これは端的に言えば、労働生産性の

日本経済を分析するためのノート(11)

労働生産性とGDPについて具体的に見てみましょう。 下図は2005年から2013年までの労働生産性の平均値を要因分解したものです。 このグラフから当時の日本では次のようなことが起こっていたと推定できます。すなわち、 生産を効率化したが、需要が増えずに価格を下げ労働投入量も減らしたため、得られた付加価値(名目GDP)が減り、労働生産性は変わらなかった。 しかし物価全体が下がったため、その分実質労働生産性は上がった。 ということです。 次に1995年から2020年の実質労働生

日本経済を分析するためのノート(13)

もう一つ、これは小泉内閣の頃から盛んに言われてきたことですが、規制緩和によって市場原理が働き生産性の低いところから高いところに労働が移動して全体の生産性を高めるという議論について考えてみましょう。 竹中平蔵氏などを先頭にしてこのようなことが言われてきましたが、じっさいのところは第二次産業の従業者が減り、第三次産業の従業者が増えています。第二次産業の方が明らかに生産性が高いにもかかわらず。 さらに第三次産業の中身についてみてましょう。 下のグラフは、第三次産業の2000年から2