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【楽天株急騰】 KDDIのローソンTOBが示すAI時代の新潮流

毎週金曜日は「AI時代のまったり経営学」
このシリーズでは身近な題材を元にAI時代の経営者が知るべき知識をお伝えしています

今年の4月KDDIがローソンの経営に参画しました。このM&Aは知名度の高い企業同士だということもあり、大きな話題を呼びました。

そして面白かったのは同時期に楽天の株価が急上昇したこと。

堀江貴文氏や井川意高氏らは、この値上がりについて次のように言及していました。

井川 (今回のニュースを聞いて)KDDIこれ、楽天を視野に入れてるなと思いましたよね。
堀江 やっぱりみんなそう思って、それで株価上がってるんですよね、多分。

堀江貴文YouTubeチャンネルより

この読みについての真偽は定かではありません。
しかし、こうした読み自体が成立すること自体がAI時代への市場原理の変化を象徴していると言えます。

そこでこの記事では「KDDIによるローソンTOB」と「楽天の株価上昇」の関係性から、AI時代のビジネス環境の変化について読み解いていきます。

この記事を読むべき👇

・KDDIのローソンへのTOBについて詳しく知りたい。
・KDDIのTOBにより「なぜ楽天の株価が上昇したのか」を知りたい。
・AI時代の市場の競争原理について理解したい。


ローソンTOBと楽天株の値上がり

KDDIによるTOBの経緯

2024年2月6日、KDDIは敵対的買収(TOB)によりローソンへの経営参入を発表しました。

遡ると2019年にKDDIがローソンの株式を2.6%取得。この連携強化はローソンのポイントである「Ponta」にKDDIのポイントプログラムを統合することが目的でした。

今回は50%の株式を取得するということで直接KDDIがローソンの経営に参加することになります。この狙いをKDDIの髙橋社長は次のように述べています。

通信、DXで未来のコンビニを実現していきたい。(ローソンの)グローバル展開にも手伝えることがある。

KDDIによるローソン株のTOB記者会見にて

つまり、全国に2万店舗以上を構えるローソンと国内第2位の通信キャリアであるKDDIが手を組むことによる事業シナジーが今回のTOBの狙いであるという訳です。


KDDI株の下落と楽天株の上昇

今回の買収についてシナジーの弱さから「5000億円の価値が見えづらい」(MM総研副所長の横田英明)等の声が多く聞かれました。その結果、報道直後にはKDDIの株価が10%下落しました。

一方で、このニュースのあと楽天グループの株価は25%上昇しました。


楽天株上昇が意味するもの

"経済圏"競争はAI時代の本質

さて、「KDDIのTOB」と「楽天株の上昇」という一見関係のない2つの現象から見えてくるのは、"経済圏"の存在感の強さです。

現在、日本市場は "5大経済圏" を中心に構成されていると見ることができます。そして、この傾向には拍車がかかっていくというビジョンが共有されているたためであると考えられます。

経済圏とは、企業グループ毎にポイントを軸にした事業領域のこと。ポイントを軸として決済サービス、携帯キャリア、クレカ、小売、EC、証券などがつながることで顧客の囲い込みを図ろうというのが経済圏戦略の狙いであると言えます。

規模は2024年6月段階での各社発表を基にした

AI時代はこの経済圏というコンセプトがあらゆる業界に広がると考えられます。理由は「AIが企業機能の中心になり、データの重要度が高まる」から。

AI時代には、自社のAI(アルゴリズム)に流し入れられるデータの質と量が、企業の競争力の源泉になります。そのためいかにデータを取れる位置に自社を置くかが競争の本質になっていくことが予想されます。

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トライアルが掲げる「リテールDX」

AI時代における"経済圏"の意義を考える上で、分かりやすい事例がトライアルHDです。

トライアルHDは福岡に本社を置く小売大手。
24年には東京証券取引所のグロース市場にIPOを実現しました。

同社の強みの一つは最先端スマートストア業態「トライアルGO」や、店舗のメディア化を目指した「リテールメディア」などの先進的な取り組みです。群雄割拠の小売業界の中でも早期からDXを進め、IoTソフトやAIカメラ、スマートショッピングカートなど独自のデバイス開発にも成功しています。

こうしたトライアルの取り組みの背景にあるのは「リテールDX」というビジョンです。

トライアルの永田社長は、メーカー、卸、小売のサプライチェーン全体が一体となり、一つのデータソースの元に顧客中心のサービスを展開する「リテールDX」というビジョンを掲げています。

データを共有しサプライチェーン全体で活用することで、たとえば自動発注の精度が上がる、適正売価が算出される、メーカー・卸・小売が共同で販売戦略を立案できる、不要な商談の時間がなくなる、ベンダーの欠品がなくなる、特売依存から脱却する、返品が削減される、顧客一人ひとりに最適な商品提案ができるなど、具体的な効果が生まれてこそ、データの価値が最大化されるのです。

永田洋幸『生成AIは小売をどう変えるか?』(20ページ)


「リテールDX」自体の完全な実現には至っていませんが、これが実現すれば私たちの買い物体験が根本から変わることが予想できます。

AI時代には、あらゆる業界がこの「リテールDX」のようなビジョンに向かっていきます。AIが中心となる顧客のデータを起点に複数の企業が協働し、サービスの質向上を図っていくという方向に進んでいくと考えられます。

そして、この流れが行き着く先が "経済圏" というコンセプトであるという訳です。


なぜ楽天の株価が上がったのか

結論です。

楽天の株価が上がったのは…

「経済圏のビジョン」と「楽天モバイルによる楽天の業績悪化」から論理的に導かれた結果だったと言えます。

楽天の業績が悪化している中、国内三大キャリアのKDDIがローソンの経営権を取得しました。一見すると、このTOBは事業シナジーがそこまで高くないように見えますが、KDDIが楽天を買収し自身の"経済圏"強化を図るための土台作りであると見れば一気に分かりやすくなります。

勘所を抑えた投資家が、このように考えた結果、一見関係のない楽天の株価上昇へつながったといえるでしょう。


まとめ

さて、いかがだったでしょうか?
今回はKDDIのローソンTOBと楽天の株価上昇の関係について考察してきました。

今回の内容まとめ

・KDDIのローソン買収はシナジーが小さく単独で理解することは難しい。
・AI時代には"経済圏"の概念が市場理解のキーポイントになる。
・楽天の株価上昇は「経済圏のビジョン」と「楽天の業績悪化」の結果。

今回見てきたようにAI時代への変革は、「生成AIがサービスに組み込まれる」といった単純な変化ではありません。さまざまな要素がAIというテクノロジーを中心に結びつくことで多様な変化が生じることになります。

このnoteでは、これからもAI時代への変化を「分かりやすく」お伝えしていきます。

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