嘘の武勇伝002
人生で初めてのヒグマとの戦い...
当時の僕は身長172体重60といったスペック
体重800キロの双子のヒグマ、ドグラとマグラは曾祖父の時代には既に存在していたので、我々がドグラマグラと呼んでいるヒグマが同一の個体であるなら100歳を超える計算になる...
フィジカル面でも、人生経験においても勝ち目はなし、また空手経験者といえども純粋に寸止めルールの「競技空手」の経験しかなく、離れた間合いから飛び込んで攻撃し、また離れる...といったスタイルを繰り返すだけ、おそらく弱点と思われる「鼻」を狙いはするもののダメージを与えるに至らず、体力全盛の15の少年とはいっても2匹のヒグマ相手にはあっという間に息が上がり、もはや成す術無し...と「死」が頭を過ります。
ドグラマグラもそろそろトドメを刺そうと「デビル・スカイ・フルボトム」の体勢に入る...
その瞬間、僕は何を思ったか最後の力を振り絞りマグラの背中に飛び乗りました。
いまだに何故、あの時そのような行動に出たのか?自分自身分かりません...ただこれ以上ないという絶妙なタイミングで僕は「デビル・スカイ・フルボトム」の上に乗ったのです。
僕が乗るや否や
バシューン!!!
ドグラがマグラを天高くはね上げ、800キロの巨体が林の木々の高さを抜け、明るい陽の光の中に飛び出します。
マグラの体が最高到達点に達した瞬間、僕は全力でマグラの背中を蹴り、より高く天に舞い上がりました。
もはや「空」と呼んでも過言ではないその位置で、僕の体は停止し、次の瞬間からは万有引力に任せた自由落下が始まります。
僕の真下にはマグラが、そしてその下の地面にはドグラが、僕は落下しながらプーム(PUMU)のスニーカーを脱ぎ捨て左足の「中足」を立てます。
※中足(ちゅうそく)を立てるとは足の甲側を真っ直ぐに伸ばし親指を反らせ親指の付け根の部分(空手用語で中足、医学的には拇指球(ぼしきゅう)と呼ばれる部位)をピンポイントで相手に当てるようにする事。
※プーム(PUMU)とはプーマ(PUMA)のパチモノのブランド、横向きの猫科動物がシルエットで描かれたロゴだが、PUMAと違い前足も伸びてるのでより躍動感がある。
引力に任せて落下する僕は全体重を左足の中足に乗せそこをマグラの背骨(ミゾオチの裏側)に当てる、マグラはそのままドグラの体の上に落ちる、僕→マグラ→ドグラ→地面
ドシャーン!!!
僕の中足がマグラの背骨を突き抜け胃を破り、ドグラの胃にも風穴を開け背骨を砕き地面に突き刺さる!
勿論僕の身体もただでは済まない...全身の骨が粉々に砕け散り、どんなに早く救急車が来ても命は助からないであろう、仮に一命は取り留めても、重い障害が残るであろう...
僕はドグラマグラの死骸の上に仰向けになり、ボンヤリとセシールのカタログのランジェリー姿の白人モデルを思い浮かべながら、命が尽きるまでの時間を過ごした...レースの下着からマン毛が透けて見えてるヤツが僕のお気に入りだった...
そしてそのまま意識を失い...
目を覚ましたときには天狗山の天狗様の御堂の中でした、身体に傷もなく、痛みもなく、全身に力がみなぎる感覚...
何もない御堂の中に一枚の書き置きが...
「幼き強き者よ、我は天狗なり
そなたに新たな命を与える
そなたの骨は砕け、無に帰した
代わりに二頭の獣の骨を
そなたの体に宿す」
とダイエーの特売のチラシの裏に書かれていました。
そうです、ドグラとマグラの骨から僕の新しい骨格は作られたのです!
その後、今日まで僕は72頭のヒグマと戦い無敗、
後にも先にも命を奪ったのはドグラとマグラの二頭のだけ...
いや、ドグラとマグラは今でも僕の中で生き続けているのかも知れません。
続く。