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Vack-ON!! Vol.5 織姫はるかレポ

 2024年12月16日月曜日。
 東京池袋harevutaiにて開催された音楽特化VtuberフェスVack-ON!! Vol.5を配信で視聴した。
 総勢20組による魅力的なアーティスト達がかわるがわるその個性を爆発させていく。
 その中でも一際異彩を放つステージを披露した織姫はるかにスポットを当ててレポートを書いていこうと思う。


 act紹介が終わるとイントロが……始まらない。
 出演者の全員がact紹介の後すぐに歌い出したのに対し、織姫はるかだけはイントロの代わりにナレーションが聞こえてきた。
 スクリーンにはファンタジー世界に出てくるような部屋が映る。

 声の主は魔法使い。入れ替わりの魔法を完成させたという。
 なぜか、ライブではなく寸劇が始まっていた。
 そう、これこそが知る人ぞ知る織姫はるかの真骨頂。
 お芝居と歌唱を融合し一つの物語を構築する劇場型ライブパフォーマンス。通称おりはる劇場だ。

 入れ替わりの魔法を完成させ、それにより世界を平和に導こうとした魔法使い。
 だが、ちょっとした手違いにより様々な動物の体を100年もの間、転々としてしまう。
 巡り巡ってライブ出演前の織姫はるかの体に入り込んだ魔法使いは、織姫はるかの体と魔法の相性を試すため一曲歌ってみることに。

話しながらの身振り手振りがいちいち可愛い
織姫はるかの頭の中を覗き見る魔法使い
お花畑の中心には

英雄 運命の詩(Cover) / EGOIST
 織姫はるかの頭の中を覗き見た魔法使いが、お花畑の真ん中に見つけた「歌」を歌う。
 魔法使いも声色を変えて織姫はるかが演じている。
 この歌の歌唱は魔法使いなので、やはり声色を少し変えている印象だった。
 背景に映し出される映像が、鎖や迷宮、暗い森など、自らが招いたこととはいえ、100年間抗い続けた運命の緊縛、その心象風景をイメージしているかのようだった。
 この映像はVack-ON!!側に織姫はるかがイメージを伝え制作してもらったとのこと。
 本当に魔法を使ったようで凄すぎて笑ってしまったとは織姫はるかの談。

 白い衣装が黒く染まっていく演出が素晴らしく美しくカッコ良かった。

黒い衣装の登場に湧き上がる観客たち

 Vtuberのライブならではというのか、技術の進歩にスタッフさんへの感謝の念を禁じ得ない。
 黒い衣装に身を包んだ織姫はるかの姿をした魔法使いが、妖しく美しく、可愛くカッコよく、切なく色っぽく歌い踊る。

 歌い終わると潜在意識の底で眠っていた織姫はるかが目を覚まし、魔法使いに語りかける。
 体を返してほしいと訴えかけるが、100年さまよった魔法使いの体はもう朽ちてしまっている。
 ここまでを踏まえて先程の「英雄 運命の詩」の歌詞を見ると、魔法使いの境遇とオーバーラップする部分が見られることに気づく。
 漠然と雰囲気で選んでいる訳ではなく、選曲も物語の一部として組み込まれていることがわかる。
 世界を平和にしたかったが色々あって一人ぼっちになってしまった魔法使い。
 事情を知った織姫はるかは魔法使いが自分の中で眠ることを許し、魔法使いは最後にもう一度歌いたいとお願いするのだった。

黒い衣装がカッコいいと喜ぶ

オリハルコン / 作詞作曲:nano.RIPE
 物語の流れそのままにオリジナル曲。
 先ほどまでとは違って、今度は紛れもない織姫はるかの登場だ。

 改めましてと自己紹介をしてライブパート開始。
 黒い衣装に身を包んで歌うオリハルコン。
 歌詞にある「魔法」「あの子」というワードが織姫はるかの中で眠る魔法使いを連想させて、得も言われぬ感情が湧き上がる。
 これがおりはる劇場の魅力。
 楽曲を物語の一部とすることで、ただそれを聴くだけとは一味違う味わいになる。
 オリハルコンは織姫はるか自身とリンクする歌詞構成なのだが、おりはる劇場に組み込まれることで魔法使いとも重なって聴こえてくる。
 物語を歌うVsingerの名は伊達じゃない。

 そして、黒い衣装で歌うオリハルコンの魅力たるや筆舌に尽くし難し。
 Vack-ON!! Vol.5に出演が決まり、魔法使いという登場人物のため、衣装デザインはそのままで、色違いの黒バージョンを織姫はるかの3Dモデルを制作したとりあえず氏に依頼したのだそう。
 神の所業かわずか二日で完成し届けられたという。
 おそらくそれから設定が作りこまれ、ライブの三日前。12月13日にお披露目がされた。

 オリハルコンはこれまで2回ライブで歌われてきたのだが、そういう理由で黒い衣装での歌唱はこの日が初めて。
 白い衣装はクラウドファンディングで獲得し、そのストレッチゴールでオリハルコンは製作された。
 いわば白い衣装とオリハルコンはセットのようなもの。
 そのオリハルコンを色違いの黒い衣装で歌うギャップ。
 いきなり全然関係ない話をするんですが、僕はアイカツが好きです。
 アイカツ筐体でキュートタイプのアイドルにセクシータイプのドレスを着せたり、ポップタイプのアイドルにクールタイプのドレスを着せてギャップを楽しむのが好きでした。
 全然関係ない話なんですけど。
 ともかく黒い衣装そのものも魅力的なのですが、白い衣装でのパフォーマンスを知っていると、その変化が新鮮でまた違った魅力が浮き彫りになるような気がしました。
「やはり衣装一つで男は心を揺さぶられる生き物なのだっ」とは誰の言葉だっただろう。
 この魅力には女性でも揺さぶられると思います。

 加えてこの日、初めてオリハルコンに振り付けがされました。
 これがまた映える。
 歌詞とリンクした動きがしなやかに強く美しい。
 かつてダンスはあまり得意ではないと言っていた織姫はるかはそこにはいなかった。

 捕捉なのだが、振り付け考案はbilibiliをメインに活動していることもあって、今はまだあまり知られていない今後注目株のVtuber森瀬つぐみ。
 森瀬つぐみはかつて織姫はるかとペアを組んでOur Songs!というイベントに出場している。
 二人で歌い踊っているのだが、やはり劇場型パフォーマンス。
 織姫はるかと森瀬つぐみの魅力が詰まったライブになっているので是非ともアーカイブを見てもらいたい。

Only my world / 作詞作曲:織姫はるか
 続いてもオリジナル曲。
 織姫はるかがライブでほぼ毎回歌唱する、しゃいなぷーの愛称で親しまれている定番曲。
 織姫はるかのオリジナル曲では唯一MVがないのだが、キャッチーでノリの良い楽曲で、初めて聞く人でもそのリズムにすぐ体が馴染むだろう。
 コールも覚えやすく、配信には載っていないが、現地では「しゃいなぷー」が響いたのではないだろうか。
 歌唱もダンスもすでに何度もライブで披露してきた安定感がある。
 ちなみに振り付けは足太ぺんた。明るく前向きで可愛い曲にぴったりの元気で可愛らしい振り付けだ。
 やはりこちらも黒い衣装では初歌唱。
 今回登場した白い衣装と黒い衣装。それ以前、3Dモデル完成当時に着ていた青い衣装。
 リリース後はほぼセトリから外れることのないしゃいなぷー。
 現時点でこれまで袖を通してきた全ての衣装で、唯一歌われている相棒のような楽曲だ。
 オリハルコンのそれとは違い、今度はステージ上ではしゃぐようにエネルギッシュなパフォーマンス。
 背景映像も相まって、織姫はるかの姿は正にしゃいなぷー(Shine up)。輝いていた。

 そして曲の最後、「またね」と魔法使いの声が聞こえ、物語の幕は下ろされた。

またね


 ところでオリハルコンの間奏で織姫はるかがこう言っていた。

突然ですが私には夢があります
大きなステージでみんなを連れて行くことです
なので一つお願いがあります
私を大きなステージに連れてって
約束だよ

 みんなを大きなステージに連れて行くと言いながら、私を大きなステージに連れてってと言う。
 ともすると矛盾しているかのようにも、卵が先か鶏が先かのような話にも聞こえるがそうではない。
 Vack-ON!! Vol.4において、オリジナルMVを流す枠があった。
 そこで流すMVはXのリポスト数の多い物から選出された。

 その中から織姫はるかのアゲンストザライトは見事に上位を獲得し、会場の大型スクリーンでの上映が叶った。
 その時の会場の盛り上がりがVack-ON!!運営さんに好印象を与え、今回の出演に繋がったであろうことは想像に容易い。

 今回織姫はるかが出演することで、初めてharevutaiを訪れたファンを僕は知っている。
 織姫はるかがVack-ON!! Vol.5というステージにみんなを連れてきてくれた。
 だけどVack-ON!! Vol.5のステージに織姫はるかを連れてきたのはそのみんなでもある。
 さらに言うなら、今回の黒い衣装、背景で流れる映像、オリハルコンの振り付け、そしてしゃいなぷー。どれをとっても一人でできることではない。
 今回のおりはる劇場は一人では作ることはできなかった。
 大きなステージにみんなを連れて行く。
 けれど、その大きなステージに立つことは織姫はるか一人の力では叶えられない。
 たくさんのクリエイター、スタッフ、ファンのみんな。
 それぞれの協力や応援があって前に進める。
 それが今回織姫はるかには実感として、感謝と共に胸に刻まれたのではないだろうか。
 織姫はるかはこれからもステージに立ち続ける。
 どこかで彼女のライブの告知を見ることがあったなら、彼女の言葉とVack-ON!!でのステージを思い出してほしい。

 そして、織姫はるかの物語は続いていく  


Vack-ON!! vol.5 振り返り配信


 余談だが、魔法使いの設定に二つほど疑問の残るところがある。
 今後明かされていくのか、それとも設定の不備なのか。考察していきたいと思っている。

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