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殺人雑居ビル VS 西塚警察24時!

 雑居ビルの一室。
 氷村組事務所 西塚支部にて。
 今、幹部の大沢と、部下の川島が話をしていた。
 内容は、仲間の失踪事件について。
 数ヵ月前、彼らは警察から逃れるためにこのビルに引っ越して来た。
 しかし、それからというもの、組員が次から次へと失踪。
 20人いたはずの仲間が、気づくと大沢たちを残して全員いなくなってしまった。
 一体ここで何が起きているのか。
 調査をしていた川島は、ついにそれを突き止めたと言う。

 最初に判明したのは、事務所の隣にある骨董屋。
 最近、その入口に等身大の骸骨が置かれていた。
 そしてこれが間違いなく永野だった。頭の古傷が、彼以外ありえなかった。

 これをきっかけに、川島はビル内で次々と仲間の死体を発見する。
 美容院で首マネキンになった岡野。
 喫茶店でコーヒーミルされた吉田。
 そういう風に、失踪した組員は全員、ビルのテナントたちによって殺されていたのだ。
 川島は言う。
「ここは殺人鬼の雑居ビル。殺人雑居ビルなんですよ!」

「そんな……バカな…」
 大沢は絶句した。
 こんなことがあっていいのか。
 偶然引っ越した所が、狂った殺人鬼の巣食う雑居ビルだなんて!
 当然、逃げる準備をする2人。

 だが、まさにその時だ。
 何やらビルの外が騒がしい。
 3階のこの事務所にまで、過激なデモのように何人もの怒声が聞こえて来るのだ。
 なんだろう、と大沢は窓から外の様子を伺う。
 そしてその瞬間、彼は情けない悲鳴をあげた。


 そこにあるのは大量のパトカー。
 それらの側面には、あの恐ろしい『西塚警察』の文字!


「大沢!はよ開けんかい!」
「西塚や!」
「出てこいコラ!」
「お前に逮捕状や!」
 今まさに、西塚警察の連中がビルの入口扉をバールで破壊しようとしていた。全員フル装備で重火器も所持し、どう見ても投降など受けつけないことが分かる。

「大沢さん……」
 隣で心配そうに呟く川島。

 大沢は考える。

 内はイカれた殺人鬼。
 外はイカれた警察。
 彼は、青ざめた顔で言う。


「最悪だ」


【続く】


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