彼女は嘘を愛しすぎている
彼は私に嘘ばかりつく。顔色ひとつかえずにできるから驚きだ。惑わされる私をみて楽しんでいる。嘘が好きなわけではない。一応、女だから愛の言葉がいい。好きなドラマのワンシーンの愛されている主人公に自分を重ねて、いつかはと夢見る。だけど現実は、愛の告白もプロポーズも発信するのは私のほう。「好きかどうかって?!そんなの態度でわかるだろ。」とあなたは言う。そんなのわかっているんだけど、言葉で表現するだけでどれだけ夢中になるかあなたは知らないんだね。
付き合いたてのころ、めんどくさいと言われた。恋愛依存症の私は、毎日の電話と寝るまでのLINEを相手に求めていたから。私とあなたの好きは違う形だった。そのギャップにやりにくさを感じたのだろう。その日、私は声を出し枯れるほど涙を流した。どうしていつもこうなるのだろう。人を好きになると全神経を注いで、自分のことばかりになってしまう。最初は、話しているだけで楽しかった、顔を見るだけで嬉しかった。あなたとの時間が増える度に、気持ちが上書きされていつしか傲慢になっていく。その思いがあなたを追い詰めることになる。主観に染められた脳では、あなたの好きを比べることはできないだろう。
「好きになったほうが負け」とよく言うけど、もう負けてしまえと思った。
ある日、食い入るようにテレビを見てたあなたに「面白いの?」と質問すると、「別に」と答える。長い間観察しているから分かるんだよ。あなたは、いつも反対の言葉を私に伝えてくるんだ。それが本音の合図。思いとは違う言葉に、見えない好きが隠れている。私はそういう風にあなたという人間を分析する。本当かどうかは分からないけど、普通に言われるよりも身体が熱くなる。だから騙されてあげる。
私は愛しすぎている。嘘の裏にあなたの愛が溢れているから。真実に変換することができるのは、これからも私だけでありたい。