鎌野ソロ配信シングル「解憶」について
▪︎ 歌詞 ▪︎
無彩の蝶 雲が泳ぐ
モニター越しのオレンジ色
大人たちがあやとりで遊ぶ
砂に描いた地図の破片
並列にならぶ煙突の影が
筋書き通りの日常を埋める
胞子が踊る 蜘蛛が羽化する
無数の記憶を拾い集めて
出会ったもの 出会わなかったもの
見えたもの 見えなかったもの
言葉にしたもの しなかったもの
空気を噛む 虹を探す
袖を濡らす 鉛のレール
子供たちが指を差す
物語を紡ぎ消して
路地裏であの子と出会う
そっと手触りを確かめる
踊り出す光の群れを
言葉にしたなら熱を帯びて
無数の蝶 砂に描いた
雲が泳ぐ 虹を探す
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◤ 制作のきっかけ
実はこの楽曲は1st albumのリードトラック「浮遊する都市」のMVを制作したいとのご依頼を受けて制作し始めました。
監督の言葉を借りると今回のMVは「対位法」を使用し、敢えて明るい曲に暗い映像をつけたいとのご要望でした。
ですが、せっかくの機会ということと、今の自分が”明るい”曲を作るとどんな楽曲が生まれるんだろうと興味も湧き、新曲を作ることになりました。
◤タイトルの由来と楽曲の技法、挑戦
タイトルの「解憶」は造語なのですが、「解体する記憶」「回憶」(思い出、思い出す、追憶)などの意味があります。忘れ去られてしまった記憶と大人になった自分が遭遇する、寂しさと喜びが混ざり合った気持ちで作りました。
技法的には「浮游する都市」に近い作り方をしていて、ピアノと歌を何層にも重ねる現代音楽に近い構成の楽曲になっています。
今回はその上にしっかりとメロディと歌詞を載せることで、メロディーの耳障りの良さと、言葉の解釈の多様性を付加し、より透明な世界観を構築することに挑戦しています。
◤今回の楽曲制作で考えたこと
今まで、歌の可能性を追求するのに、色んな声色や重なり方の違い、うねり具合などを実験してきましたが、そもそも歌にしか出来ないものは何かと考えた時、「言葉を発すること。」なんだよな。と原点に戻って考えるようになりました。曲の全編に歌詞を入れたのは鎌野ソロでは初めての試みです。
次のアルバム制作にあたって、①リズムとしての声、②景色・空気感としての声、③メインヴォーカルとしての声、それぞれの声の表現の調和を取ることが目標として見えてきたように思います。
◤MVと楽曲が合わさる時
前述のようなイメージで楽曲を制作していたので対位法を用いた映像とのコラボレーションにはMVが完成するまで少し不安はありました。
なぜなら自分の楽曲は色でいうと淡い水色、薄いグレー、白のイメージで、映像は黒、原色の赤のイメージを感じ、本当に相反する要素だったからです。
しかし、そんな不安も出来上がりを見たら吹き飛び、納得のいく作品になっていました。楽曲を制作している最中にこの映像のような場面はひとつも思い浮かばなかったけど、改めて映像と共に曲を聴くと、なぜかとてもしっくりくる。これも無数にある「解憶」のうちの一つの解釈なのだと感じました。
◤最後に
改めて自分の楽曲に新しい解釈や世界観が生まれる瞬間を体験できたことを嬉しく感じます。みなさんもそれぞれの「解憶」に思いを寄せて聴いていただけると嬉しいです。
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