AIはクリエイティブな仕事さえも奪う!?「Suno AI」の登場から考えるAIとの距離感
「クリエイティブな仕事さえもAIに奪われそう…」
「このままだとすべての仕事がAIに奪われるのでは?」
最近のAIの進化はすさまじく、このように思っている方もいるのではないでしょうか。
単純作業がAIに置き換わることはなんとなく予想がつきますが、クリエイティブな分野にもAIが進出してきたら、いよいよ人間がする仕事がなくなりそうと危機感を覚えてしまいます。
実際に、最近「Suno AI」という音楽生成AIが登場し、作る曲がまるで実際に存在しているものと区別がつかないと話題になっています。
そこで本記事では、「AIはクリエイティブな仕事を奪うのか?」というテーマについて考えていきます。
AIはどのようなクリエイティブ分野で活用されているのか、クリエイターとして生き残るためにはどうすればいいのかなどを考察していきますので、ぜひ最後までご覧ください。
音楽生成AI「Suno AI」が話題に
2023年9月、音楽家とAIの専門家からなるマサチューセッツ州の開発会社「Suno Inc」が開発した音楽生成AI「Suno AI」が、海外でリリースされました。
歌詞や曲調を指示するだけでクオリティの高い楽曲を作ってくれるということで、日本でもすぐ話題になりました。
音楽素人の私も触ってみましたが、違和感はなく、実際にある誰かの曲という印象です。歌詞にはない「うぅ~♪」などのアドリブも入れることがあり、正直驚きました。
プロの音楽家の方も評価は高く、X上でさまざまな感想が投稿されています。
AIの進化はすさまじく、技術の進歩を感じますが、それと同時にこのような悩みを抱える方も多いはずです。
「将来的にAIに仕事を奪われるのでは…?」
単純作業のみならず、作曲のようなクリエイティブなジャンルにもAIが進出してきており、この悩みはより現実的になっていると言えます。
本記事では、「Suno AI」の登場をきっかけに、改めてAIと人間の共存について考えます。
AIが進出している5つのクリエイティブ分野
「Suno AI」をはじめとして、AIはさまざまなクリエイティブ分野に進出を果たしています。代表的なのは、以下の5つです。
・テキスト生成
・画像生成
・動画生成
・音声生成
・音楽生成
それぞれどのようにAIが活用されているのか、詳しく見ていきましょう。
テキスト生成
テキスト生成はわかりやすい文章、心を動かす物語など、人間特有の感性が必要な分野です。しかし、テキスト生成にもAIは使われています。
最も有名なのは「ChatGPT」でしょうか。2022年11月、OpenAIによって開発されたChatGPTは世間に衝撃を与え、公開2カ月でユーザー数は1億人を突破しました。
ChatGPTは実際にテキスト生成の分野で活用されており、ブログ記事や動画台本作成などに使われています。
日本政府も生成AIの活用を検討しており、ルール制定のもと、国会答弁や広報文の作成などでの活用が期待されています。
画像生成
画像生成は図解からイラストまであり、これまでもデザイナーやイラストレーターなど、画像を作成する専門の職業があるほど人間の力が必要不可欠な分野でした。
そんな画像生成もAIなら可能です。代表的な画像生成AIとしては「Stable Diffusion(ステーブルディフュージョン)」や「Midjourney(ミッドジャーニー)」が挙げられます。
テキストを入力するだけで画像を作れるということで、驚いた方も多いのではないでしょうか。
現在では、フリー画像やSNS広告など、さまざまな場面で生成AIによる画像を見かけます。流し見する程度であれば、AIが作った画像とは気づかないほどです。
新たな作品を生み出すだけでなく、「すでに亡くなった画家の作品を再現する」というような方向でも注目を浴びています。
動画生成
動画生成には、エンタメやドラマ、CMなど、実に幅広いジャンルがあります。これまでは、人間が撮影して人間が編集するのが一般的でした。
しかし、動画生成にもAIは進出しており、代表的なものとして「Stable Video Diffusion」や「Motion Brush」などが挙げられます。
テキストを入力するだけ、動かしたい部分をなぞるだけなど、実に簡単な操作で動画が作れてしまうのです。
実際に、YouTubeにはすべてAIで生成されたであろう動画がいくつもアップされています。
2023年12月現在では、まだ数分の動画を生成するのが限界ですが、今後伸びていく可能性は十分にあります。
理想的な構成やカメラアングルで動画を生成できるようになった日には、大きな革命がもたらされるでしょう。
音声生成
音声生成はアナウンサーや声優など、それ専門の職業があり、抑揚や活舌などのスキルが求められる分野です。
音声生成AIで有名なのは「AITalk」や「EmotiVoice」などです。従来は棒読みのような声でしたが、今では感情が乗っている、まるで人間がしゃべっているような音声を生成可能になっています。
実際に、社内研修の動画や電話の自動応答などに活用されており、みなさんも聞く機会が多くなってきたのではないでしょうか。
ただ、音声を生成するだけではなく、今では”音楽”の生成も可能になってきているのです。
音楽生成
音楽はクリエイティブな分野のなかでも、AIの進出が遅れていました。なぜなら、音声生成は棒読み感がぬぐえず、かつ楽器の音も合わせる必要があったからです。
さすがにAIでクオリティの高い音楽を作るのは難しいかと思われていたところ、「Suno AI」がリリースされたのです。
あまりのクオリティの高さに、SNSでたちまち話題になりました。ついに、音楽もAIで作れる時代が来たのです。
これまでも自作した楽曲を動画サイトにアップする人はいましたが、やはりある程度の専門的知識と環境が必要でした。
音楽生成AIの普及によって、これまでよりもさらに手軽に音楽を楽しめるようになるでしょう。
AIはクリエイティブな仕事を奪うのか?
結論から言うと、AIはクリエイティブな仕事を一部代替する可能性がありますが、完全に奪うことはないと考えられます。
私がいかにしてこのように考えたのか、以下3つの視点から紹介します。
・単純作業はAIへの代替が進んでいる
・クリエイティブな仕事こそAIに代替されやすいという考え
・“すべてをAIで代替する”は難しい
一つずつ見ていきましょう。
単純作業はAIへの代替が進んでいる
まず、クリエイティブな領域を考える前に、単純作業においてAIが活用されているかを考えてみましょう。
単純作業と呼ばれるもののなかには、同じ問い合わせ内容への回答や在庫管理などが挙げられます。これらは、自動音声対応や機械学習による自動管理などに置き換わりつつあります。
すると、コールセンターや在庫管理の仕事はAIがやってくれるため、人間は必要なくなるのです。
このように、単純作業はAIへの代替が進んでいます。このことを考えると、クリエイティブな仕事もいずれAIに代替される可能性があると考えられます。
クリエイティブな仕事こそAIに代替されやすいという考え
単純作業が機械的な作業に置き換わることは想像しやすいと思いますが、逆に「クリエイティブな仕事こそAIに代替されやすい」という考えもあります。
これは、国立情報学研究所の山田誠二教授の考えです。
山田教授は自身の著書で、アイデアは既存の要素の新しい組み合わせ以外のなにものでもないので、むしろクリエイティブ系の仕事こそ代替されやすいとしています。
参考:山田誠二著『本当は、ずっと愚かで、はるかに使えるAI-近未来 人工知能ロードマップ』(日刊工業新聞社)』
たしかに、既存のものを組み合わせるのは、AIが最も得意とすることの一つです。AIが生成する画像や音楽は、すでに存在する画像や音楽を学習して作り出されたものなので、まさに「既存の要素の新しい組み合わせ」と言えます。
このことを考えると、クリエイティブな仕事がAIに代替される可能性は高いと考えられます。
“すべてをAIで代替する”は難しい
AIがクリエイティブな仕事を代替できる可能性はありますが、”すべてをAIに託す”ことは、現時点では難しいと言えるでしょう。
たとえば、AIで人間以上の音楽を作れるようになったとしましょう。しかし、アニメとのタイアップ曲で「アニメの世界観を曲に取り入れてほしい」というオーダーがあったらどうでしょうか。
そのアニメはどのような世界観なのか、どのように曲に取り入れるのか、このあたりは生成AIでは表現しきれない部分もあるでしょう。すると、最終的には人間による調整が必要なのです。
このように、“すべてをAIで代替する”ことは、今の時点では難しいと言えます。今すぐに、クリエイティブな仕事がすべてAIに奪われることはないでしょう。
そのため、現時点では「AIはクリエイティブな仕事を一部代替する可能性があるが、完全に奪うことはない」というのが結論になります。
AI時代で生き残るカギは”AIを使いこなす”こと
前章で「AIはクリエイティブな仕事を一部代替する可能性があるが、完全に奪うことはない」と言いましたが、これは「AIの存在を無視していい」というわけではありません。
なぜなら、AIと人間のどちらもできる仕事があるなら、コストも安く短時間で仕上げられるAIを頼る人が多くなると考えられるからです。
つまり、AIにできることしかできないと淘汰されてしまいます。そのため、このAI時代で生き残るには、以下のどちらかの方向性での活躍が求められます。
・”AIにはできないこと”で勝負する
・”AIを使いこなすこと”で勝負する
前者はいわば「職人」です。AIにはできない繊細なタッチで描く絵、AIにはできない人間の感情を揺さぶるセリフ回しなど、人間特有の感性で勝負するやり方です。
しかし、このやり方はとてつもない努力と才能が必要であり、活躍できるのはほんの一握りと言えるでしょう。
しかし、後者のやり方であれば、より多くの人が目指せます。
AIを使いこなして元となる文章や絵、音楽などを生成し、そこに微調整やアレンジを加えて作品を完成させるというやり方です。「天才」と呼ばれるまでではないにせよ、ある程度の基本的知識があればこのやり方は可能と言えます。
そのため、より多くの人が今後活躍するには、”AIを使いこなす”ことが求められるのです。
ただ、AIが出力したテキストや音楽に関しては、現在法律を含めルール制定がなされている途中です。著作権の問題などが出てくるので、常に最新情報は確認しておくようにしましょう。
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AIが高品質なデータを出力してくれれば、おのずと完成する作品の品質も高くなります。そのため、AIにはなるべく高品質なデータを出力してもらいたいのです。
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まとめ:AIはクリエイティブな仕事を奪うのではなくサポートしてくれる存在
AIは「Suno AI」をはじめ、テキスト生成や画像生成など、多くのクリエイティブ分野に進出しています。
しかし、AIがクリエイティブな仕事を部分的に代替する可能性はありますが、完全に奪うことはないと考えられます。
なぜなら、細かな微調整やコミュニケーションなど、“すべてをAIで代替する”のは難しいからです。とはいえ、AIにできることしかできないクリエイターは淘汰されてしまいます。
そのため、このAI時代で生き残るためには、”AIを使いこなせるクリエイター”になることが求められているのです。
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