ペーパーレス化で社員に迷惑されてない?”形だけ”にならない方法
「ペーパーレス化はやめてほしい」
「ペーパーレス化のせいで仕事が増えている」
このような声が上がっているのをご存じですか?これは主に若い世代から上がっている声で、会社の上層部や経営陣がペーパーレス化についての理解が足りないために起こっていると考えられます。
しかし、ペーパーレス化自体は業務効率化やSDGsにつながる取り組みです。「理解できないからペーパーレス化を廃止する」ではなく、「適切にペーパーレス化するために目的やメリットを理解する」ことが求められているのです。
少しでも思い当たる節がある方は、ぜひ本記事をお読みください。本記事では、あるドラマで話題になった”ペーパーレス化”に関する一幕を取り上げたうえで、目的やメリット、注意点などを紹介します。
自社のペーパーレス化で悩んでいる上層部や経営陣、自社にペーパーレス化の意義を訴えたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
ドラマ「不適切にもほどがある」の”ペーパーレス化”に関する一幕が話題に
2024年1月からTBSドラマ「不適切にもほどがある」が放送されていますが、2月2日に放送された第2話のなかの”ペーパーレス化”に関する一幕が話題になりました。
ドラマ内ではそれぞれの想いをミュージカル風に歌い上げるのが恒例なのですが、産休後に復帰した令和のテレビ局員・渚は「ペーパーレス急がないで」と言ったのです。
ペーパーレス化とは今まで紙媒体で使用していた資料を電子化し、紙を減らすことです。デジタルデータとして管理・活用することで、より効率的な業務が可能になります。
具体的には、会議資料をPowerPointで作りデータを共有したり、誓約書をPDFファイルで作成してクラウド上でやり取りしたりすることなどです。
一見業務効率化につながるいい取り組みに見えますが、渚の会社ではペーパーレスを推進する上層部がそもそも対応できていないという話に。
「台本は紙でくれ、映像資料はDVDに焼いてくれ」という要求に対し、「そのたびに私たちの仕事が増える」と反論しています。
これに対しネット上では、共感の声が続々と上がっています。
この意見は、ペーパーレス化の目的やメリットを把握せず、形だけのペーパーレスを推進している企業が多いことの皮肉と捉えられます。
実際にネット上で共感の声が上がっていることから、現実問題としても”形だけのペーパーレス化”は問題になっているのでしょう。
適切なペーパーレス化を実現するためには、推進する側の上層部がペーパーレスの目的やメリットを把握する必要があるのです。
日本企業のペーパーレス化の現状
ペーパーレス化の目的やメリットを把握する前に、まずはそもそもどれだけの企業がペーパーレス化に取り組んでいるのでしょうか。
ペーパーロジック株式会社が2022年12月行った調査によると、2022年にペーパーレス化を「積極的に行った」が17.8%、「ある程度行った」が34.6%となりました。
この結果を見ると、ペーパーレス化を”推進した”と言えるのは「積極的に行った」「ある程度行った」と回答した約半数の企業でしょう。
また、ペーパーレス化システム導入のための予算配分について、上記の質問で「積極的に行った」「ある程度行った」と回答した企業は60%以上が予定・検討しているのに対し、「あまり行っていない」「一切行っていない」と回答した企業は16%しか予定・検討していない結果となりました。
この結果から、ペーパーレス化の取り組み状況の差は広がっていくと予想されます。
ペーパーレス化できていない企業は、まず電子ワークフローや勤怠管理システムの導入など、できるところから始めてみるといいでしょう。
ペーパーレス化の主な2つの目的
ペーパーレス化を形だけにしないためには、目的を把握する必要があります。ペーパーレス化の主な目的は、以下の2つです。
・環境保護(SDGs)
・業務効率化
それぞれどのようにペーパーレス化が寄与するのか、詳しく見ていきましょう。
環境保護(SDGs)
近年、世界で環境保護に対しての意識が高まっており、ペーパーレス化による環境保護が必要とされています。
2015年9月に「SDGs(持続可能な開発目標)」が採択されました。SDGsでは2030年までに達成すべき17の目標と169のターゲットを定め、持続可能な社会を目指して動いています。
紙は使えば使うほど原料の木材を消費し、環境破壊につながってしまいます。ペーパーレス化によって紙の消費を減らすことで、環境保護(SDGs)につながるため、ペーパーレス化は必要とされているのが現状です。
業務効率化
ペーパーレス化を進めると、業務効率化も期待できます。紙ではなく、ペーパーレス化してクラウド上で管理するメリットは多いのです。
たとえば、会社で使う資料をクラウド上で管理すれば、どこからでもファイルにアクセスできます。紙であれば会社に行かないと資料を確認できませんが、ペーパーレス化していれば急に資料の修正が必要になったときにも対応可能です。
また、ペーパーレス化によってファイルを検索しやすくなったり、印刷の手間がなくなったりするなどのメリットもあります。迅速に対応するためにも、ペーパーレス化は進めるべき施策なのです。
ペーパーレス化する7つのメリット
メリットがないものには労力をかけられません。ペーパーレス化を適切に推進するためには、以下のメリットを理解しておきましょう。
・印刷に係るコストを削減できる
・文書作成の修正や改善がしやすい
・承認作業の効率化や多拠点への対応
・文書の保管や閲覧がしやすい
・内部統制実地によりセキュリティが強化される
・多様な雇用に対応できる
・企業のイメージがよくなる
それぞれどのようなメリットがあるのか、一つずつ見ていきましょう。
印刷に係るコストを削減できる
ペーパーレス化すると印刷の必要がなくなるため、コスト削減が期待できます。紙の資料を印刷して使っていると、下記のような費用がかかります。
・用紙代
・印刷代
・インク代
・印刷機器のリース・メンテナンス費用
・郵送費用
・廃棄費用
また、上記に加えて紙の資料の保管庫や人件費、印刷する時間の削減も可能です。業務効率が改善し、オフィスを有効活用できるようになるでしょう。
文書作成の修正や改善がしやすい
ペーパーレス化すると、文書作成の修正や改善がしやすくなります。クラウド上でファイルを管理しているため、間違いに気づけば適宜修正が可能です。
紙で文書を作って印刷すると、間違いに気付いたときは手直しするか印刷し直さなければなりません。一枚ならまだいいですが、何十枚何百枚となると時間も手間もかかってしまいます。
また、複数人でチェックして修正するときには、クラウド上の方が圧倒的に効率的です。一人ひとりが紙に修正を書き込むと、後で合わせてチェックする必要があります。しかし、クラウド上であれば同時に修正できるため、一度にチェックも可能です。
承認作業の効率化や多拠点への対応
ペーパーレス化すると承認作業が効率化したり、場所を問わない作業が可能になったりします。
たとえば、会社では稟議書など、複数の人のチェックが必要な資料があるでしょう。そのとき紙の資料だと手渡しで持って行き、不在の場合はチェックしてもらうまで待つ時間が発生してしまいます。
しかし、ペーパーレス化してクラウド上で提出できれば、場所・時間を問わずチェックできるため効率的に承認可能です。
また、拠点がいくつかあると、資料を運んだり郵送したりする手間がかかります。これもペーパーレス化すれば解決できるため、多拠点への対応が可能です。
文書の保管や閲覧がしやすい
ペーパーレス化すると、文書の保管や閲覧がしやすくなります。紙の資料だと保管するのには保管庫が必要で、種類ごとに分けて保存しないと探しづらくなってしまうでしょう。
しかし、クラウド上の資料であれば保管庫はいらないため、どれだけ資料があっても保管は容易です。また、検索もできるため探す手間が省け、閲覧もしやすいでしょう。
意外に資料を探す手間は起きがちで、無駄な時間になってしまっています。文書の保管や閲覧がしやすいのは、ペーパーレス化の大きなメリットの一つと言えるでしょう。
内部統制実地によりセキュリティが強化される
ペーパーレス化すると、セキュリティ強化が期待できます。紙の資料だと、保管の際に保管庫へしまったり鍵をかけたりするなどの対策が必要です。ただ、うっかり置き忘れてしまったり、鍵をかけ忘れてしまったりするなどのヒューマンエラーは起きてしまうでしょう。
一方、クラウド上で管理すれば紛失の危険性はありません。万が一データが消えてしまってもバックアップから復元できます。
クラウド上のファイルには権限設定ができるものも多いため、全社に公開する資料と上層部にだけ公開する資料を分けることも可能です。これにより、情報漏えいのリスクも下げられます。
多様な雇用に対応できる
ペーパーレス化によって、多様な雇用に対応できることが期待されます。紙の資料だと、社内で作成・印刷し、現場で承認をもらう必要がありました。
しかし、ペーパーレス化してクラウド上で資料作成・管理すると、時間や場所に関係なく作業ができます。そのため、必ずしもオフィスに出勤する必要がなくなるのです。
コロナ禍の今、テレワークも増えており、フルリモートで働く機会も少なくありません。また、必要な部分だけ業務委託するといったやり方も、ペーパーレス化によって可能になるでしょう。
企業のイメージがよくなる
ペーパーレス化は、企業のイメージ向上にも寄与します。今や企業は利益を追求するだけでなく、社会的責任を果たすことが求められています。
ペーパーレス化は多様な雇用への対応やSDGsをはじめとした環境問題への対応など、まさに社会的責任を果たしているというイメージをアピールするのにぴったりです。
特にSDGsの採択もあり、環境に関しては世界で関心が高まってきています。ペーパーレス化による環境問題への対応は、企業のイメージ向上につながるでしょう。
ペーパーレス化の3つの注意点
ペーパーレス化はメリットが多いのですが、同時に注意点もあります。注意点を知っていればより効率的にペーパーレス化を推進できるため、把握しておきましょう。
ペーパーレス化の主な注意点は、以下の3つです。
・初期費用がかかる
・従業員にリテラシーが求められる
・システム障害時の対応を考える
それぞれどのようなところに注意すればいいのか、詳しく見ていきましょう。
初期費用がかかる
ペーパーレス化を進めるためには、初期費用がかかります。主な費用として考えられるのは、下記のような費用です。
・管理システムの導入費用
・サーバー・インフラなどの整備費用
・セキュリティ対策費用
・PC・タブレットなどのデバイス購入費用
この初期費用がネックとなり、ペーパーレス化を諦めてしまっている企業も存在します。
短期的に見ると初期費用がかかるのは避けたいですが、長期的に見れば印刷代の削減や業務の効率化などのメリットがあります。ペーパーレス化は短期的に見るのではなく、長期的に見て導入の重要さを考えるべきでしょう。
従業員にリテラシーが求められる
ペーパーレス化が浸透するかは、従業員のITリテラシーも関わってきます。ペーパーレス化のためのシステムを導入しても、従業員がそのシステムを使いこなせなければ意味がありません。
これから業務を覚えていくような若い従業員は適応力がありますが、ベテランの従業員は紙に慣れている人が多く、ペーパーレス化についていけないケースもあるでしょう。すると、まさに冒頭で紹介した”形だけのペーパーレス化”になりかねません。
また、経営陣がベテランばかりで、そもそもペーパーレス化が進まないパターンもあるようです。
ペーパーレス化を推進するためには、業務に従事する現場のスタッフがより直感的に操作できるシステムの導入が必要です。さまざまなコスト削減や業務の効率化が図れるため、経営陣はペーパーレス化について学ぶ必要があるでしょう。
システム障害時の対応を考える
ペーパーレス化を進める際は、システム障害時の対応を考える必要があります。ペーパーレス化すると必然的にPCを使ってクラウド上にデータを保存するため、システム障害はつきものです。
システム障害時の対応を考えていないと、実際にシステム障害に出くわしたときに何もできません。ただ、裏を返せば、システム障害時の対応をあらかじめ考えていれば対応できます。
具体的には、バックアップをこまめに取っておいたり、日ごろからログ分析を行っておいたりするなどです。システム障害が起こっても、対応策を考えていれば大丈夫です。システム障害時の対応を考えつつ、ペーパーレス化を進めるようにしましょう。
ペーパーレス化を進める3つのポイント
ペーパーレス化の目的とメリット、注意点を把握できたらあと一歩です。以下のペーパーレス化を進めるポイントを意識し、推進していきましょう。
・ペーパーレスに対する意識共有
・一気に行わず段階を踏んで進める
・ツールやサービスを活用する
具体的な内容を一つずつ見ていきましょう。
ペーパーレスに対する意識共有
ペーパーレス化には目的意識を持って取り組む必要があります。そのため、まずはペーパーレス化を推進する上層部が、目的やメリットを共有する必要があります。
上層部で意識共有ができたら、次は従業員に理解してもらいましょう。社内をペーパーレス化するには、従業員の協力が必要不可欠です。従業員がペーパーレス化の重要性を把握していないと、ペーパーレス化は進みません。
経営陣はペーパーレス化する理由を従業員に伝え、ペーパーレス化によってどのようなメリットがもたらされるのかを理解してもらえるようにしましょう。
一気に行わず段階を踏んで進める
ペーパーレス化を行う際は、一気に着手してはいけません。突然すべての資料をペーパーレス化の対象にすると、社内に混乱を招いてしまいます。
まずは部署ごとやプロジェクトごとなど、部分的に段階を踏んで進めていきましょう。
段階を踏んでペーパーレス化を進めると、課題や改善策が出てきます。出てきた課題や改善策を反映させてより良い状態で全社をペーパーレス化するため、まずは段階を踏んでペーパーレス化を進めていきましょう。
ツールやサービスを活用する
ペーパーレス化を進めるにあたって、ツールやサービスの活用は必要不可欠です。目的やペーパーレス化したい資料に合わせて、ツールやサービスを選定しましょう。
具体的には、社内でのデータのやり取りであればオンラインストレージ、他企業との契約書のやり取りであれば電子契約サービスなどです。
オンラインストレージなら「DataShare」がおすすめです。データ保存・共有環境が整うだけではなく、権限設定や二段階認証でセキュリティもバッチリです。社外とのやり取りにも使えますので、ぜひ一度その機能をご覧ください。
まとめ:”形だけ”ではない本当の意味でのペーパーレス化を推進しましょう
ペーパーレス化は国全体で取り組んでいる施策で、今まで紙媒体の資料を電子化し、紙を減らすことを指します。ペーパーレス化は環境保護や業務効率改善などの効果が期待できるため、今後企業として生き残っていくためには必要不可欠です。
ペーパーレス化すると、業務効率改善や企業イメージの向上などのメリットがあります。ただ、注意点やポイントもあるため、本記事を参考にペーパーレス化について理解を深め、実行に移していきましょう。