AIに突破される前に!「パスワードマネージャー」でパスワードを一元管理
「パスワードを毎回入力する手間って、減らせないのかな…」
「パソコンがパスワードを記録するのって、どういう仕組みなんだろう」
「パスワードを記録する機能を使いこなしたい!」
デジタル化が進行している近年、サービスを利用するためにID・パスワードを発行するのは、当たり前になりました。
個人利用・ビジネス利用を問わず、現代の人は毎日何らかのサービスにログインして、生活や仕事に役立てています。
一方で、パソコンを変えた場合や久しぶりに使うサービスなどは、パスワードを忘れてログインができず、困ってしまうこともありますよね。
そんなパスワード管理をあなたに代わって行い、記録してくれるシステムがパスワードマネージャーです。
パスワードマネージャーを活用すれば、パスワードの記録管理のわずらわしさがなくなるだけでなく、セキュリティも強化できます。
「生成AIが51%のパスワードを1分で解読したらしい」でも紹介した通り、AIで簡単なパスワードは突破できるようになっているため、パスワード対策は必須です。
本記事では、パスワードマネージャーのメリットやデメリットを解説しています。
便利に使いながらセキュリティを強化するため、ぜひ最後までご覧ください。
パスワードを記録する「パスワードマネージャー」とは?
簡単に言うと、パスワードを記録するアプリが「パスワードマネージャー」です。WebサービスなどのID/パスワードを登録、管理できます。
登録されたパスワードを一括で管理できるので、覚える必要がありません。使用するWebサービスや会社内で定期的にパスワードの変更があっても、対応可能です。
パスワードマネージャーを使えば、パスワード管理の煩わしい作業を解決してくれます。
パスワード管理と言えば、ひと昔前までは、セキュリティ対策としてパスワードの定期変更は当たり前に行われていました。
しかし、2018年に総務省が運営サイト内で「安全なパスワード管理」として、パスワードは定期的に変更する必要はないとしました。
参考:安全なパスワード管理|国民のための情報セキュリティサイト
これは、パスワードの定期変更により、パターン化したり簡単になったりすることの方が問題とされたためです。
そのため、現代はパスワードの定期変更ではなく、パスワードマネージャーなどのツールを使って、安全に管理する方法が求められています。
パスワードマネージャーでパスワードを記録するセキュリティ上のメリット
パスワードマネージャーはただ便利なだけでなく、セキュリティの面でもメリットがあります。
具体的な理由は、次の2つです。
・パスワードの使いまわしを防げる
・パスワードのメモを残す必要がなくなる
それぞれ解説していきましょう。
パスワードの使いまわしを防げる
パスワードマネージャーを使えば、パスワードの使いまわしを防げます。
パスワードマネージャーが自分の代わりにパスワードを覚えてくれるため、使い回す必要がなくなるからです。
パスワードの管理を人間が行うと、同じようなパスワードを設定する場合が多いです。
使いまわしていたパスワードがひとつでも漏えいしてしまうと、芋づる式に他のサイトやサービスもログイン、閲覧されてしまいます。
大切な情報を守るには、サービスごとにパスワードを変えたほうがよいです。
とはいえ、毎回オリジナルのパスワードを自分で管理するのは現実的ではありません。
パスワードマネージャーならパスワードを随時発行して管理するので、パスワードの使いまわしを防ぎ、セキュリティを強化できます。
パスワードのメモを残す必要がなくなる
パスワードマネージャーでは、パスワードをメモに残して保存する必要がなくなります。なぜなら、必要なパスワードはパスワードマネージャーに記録されているからです。
メモや手帳にパスワードを残す必要がなくなれば、盗難や紛失によって情報が漏洩してしまう心配も減るでしょう。
パスワードマネージャーでパスワードを管理すれば、メモにパスワードを残さなくなり、情報漏洩の危険を回避できます。
パスワードマネージャーでパスワードを記録するユーザーのメリット
パスワードマネージャーでパスワードを記録するのは、ユーザーにとってもメリットがあります。
代表的なものは、次の3つです。
・デバイスを問わず使用できる
・パスワード入力のわずらわしさが軽減する
・久しぶりのログインでパスワードを思い出す必要がない
それぞれ詳細を説明します。
デバイスを問わず使用できる
パスワードマネージャーに登録されたID/パスワードをスマホやタブレット、PCなどマルチデバイスで使用できるのはメリットです。
デバイスからデバイスマネージャーにアクセスすれば、登録されたID/パスワードを読み出せます。
デバイス毎にパスワードを覚えると、タブレットのパスワード更新がスマホには反映されず、サービスにアクセスできない場合があります。
デバイスマネージャーを使うことによって、マルチデバイスで、ID/パスワードを管理できるようになるのです。
パスワード入力のわずらわしさが軽減する
パスワードマネージャーを使えば、サービスごとに毎回パスワードを入力するわずらわしさが軽減します。
一回一回のパスワード入力時間は短いかもしれませんが、毎日いくつものサービスを利用しているのであれば、想像よりも時間を使っているかもしれません。
たとえばチャットツールを使って仕事の連絡をし、データのやりとりにクラウドストレージを使い、終業後はSNSにログインするなど、パスワードが求められる機会は意外と多いものです。
パスワードを一元管理して、入力のわずらわしさを軽減できる点は、パスワードマネージャーのメリットです。
久しぶりのログインでもパスワードを思い出す必要がない
3ヵ月や半年に一度ログインするようなサービスの場合、パスワードを確認するのにも時間がかかることが多いです。
これは、メモや以前の履歴を確認する手間があるからです。もし分からなかった場合は、再設定しなければなりません。
パスワードマネージャーを使用すれば、最終ログインから時間が空いたサービスでもスムーズにログインできるようになります。
ちなみに、ExpressVPNがアメリカ、フランス、イギリス、ドイツの4ヵ国で8,000人に行った調査によると、パスワードの再設定にかかる時間は平均3分46秒でした。
また、フランス、アメリカ、イギリスの3ヵ国では、約半数が少なくとも月1回はパスワードをリセットしていると回答しました。
参考:【調査結果】パスワードの再設定にどれだけの時間を浪費している?|ExpressVPN
月1回パスワードを再設定しているとすると、年間で45分を費やしていることになります。
パスワードマネージャーでパスワードを記録するデメリット
パスワードマネージャーは、いいことばかりではありません。
注意点もよく理解して使用する必要があります。
注意するべきポイントは、以下の3つです。
・パスワードマネージャー自体のセキュリティが弱い場合がある
・不正アクセスされるとパスワードがすべて流出する
・サービスが終了する可能性がある
それぞれ深ぼって詳細まで説明します。
パスワードマネージャー自体のセキュリティが弱い場合がある
パスワードマネージャーにはいくつものサービスがあり、中にはセキュリティが弱い場合があるのがデメリットです。
パスワードを管理するという機能は同じでも、その記録方法や追加機能にはそれぞれ違いがあります。
ユーザーが入力したパスワードをそのまま記録するタイプや、記録したパスワードをさらに暗号化して管理するタイプなどさまざまです。
パスワードマネージャーを導入する際は、信頼できる提供元を選ぶようにしましょう。
不正アクセスされるとパスワードがすべて流出する
不正アクセスがあった場合に、登録しているパスワードが流出する場合があります。
パスワードマネージャーは、パスワードを一括で管理できる点がメリットなので、パスワードが流出した場合、登録しているパスワード全てが流出してしまいます。
そのため、セキュリティ性が高いサービス、アプリを採用する必要があるのです。
総務省によると、令和4(2022年)の不正アクセス行為の認知件数は2,200件で、前年より増えています。
また、不正アクセス行為の手口は、IDやパスワードなどのアカウント情報の漏えいや流出による「識別符号窃用型」がほとんどを占めています。
不正アクセスされる確率を極力減らすためには、パスワードマネージャーを使い、アカウント情報を安全に管理することが重要なのです。
サービスが終了する可能性がある
基本的にアプリやサービスは、いつでも使い始められて、いつでもやめられます。
そのため、提供会社の運営状況によっては、サービスが突然停止することがあるのです。
一般的にサービスが停止する場合は、事前に告知があります。
そのため、停止する旨の告知から実際に停止するまでの間に、データを移管する必要があるのです。
サービスが終了することを考えて、パスワード管理サービスは適宜チェックすることをお勧めします。
パスワードマネージャーを選ぶ5つのポイント
パスワードマネージャーは一つだけではなく、複数存在します。そのため、どのパスワードマネージャーが自社に最適なのかを判断するためには、いくつかの要素を考慮しなければなりません。
パスワードマネージャーを選ぶ際のポイントとしては、主に下記の5つが挙げられます。
・セキュリティ対策は十分か
・操作は簡単でわかりやすいか
・端末に依存するか
・運用環境に適しているか
・コストは適切か
それぞれ具体的にどこを注意して見ればいいのか、一つずつ見ていきましょう。
セキュリティ対策は十分か
パスワードマネージャーはその本質上、企業の最も重要な情報を保護するためのツールです。そのため、最初に考慮すべきはセキュリティ対策といえるでしょう。
例えば、二要素認証がサポートされているかが挙げられます。二要素認証であれば、仮にパスワードマネージャーのパスワードが流出しても他の認証は突破できないため、不正に操作される確率を減らせるのです。
特に、企業の場合は会社のセキュリティポリシーと照らし合わせると、自社に必要なパスワードマネージャーを判別しやすいためおすすめです。
ちなみに、二要素認証とは、知識要素と所持要素、生体要素の中から2つの要素を組み合わせた認証方式です。
例えば、パスワードとSMS認証、指紋とトークン認証などがあります。2つの要素を組み合わせているため、どちらか一方が突破されてももう一方でログインを許さず、セキュリティ強化につながるのです。
操作は簡単でわかりやすいか
たとえ高度なセキュリティ対策が施されていても、パスワードマネージャーが難しくて使いこなせなければ意味がありません。
従業員が使いこなせないツールは浸透しづらく、なかなか組織全体にパスワードを安全に管理しようという意識が広まりづらいです。
そのため、簡単に導入でき、分かりやすい操作画面のパスワードマネージャーが望ましいです。
従業員がパスワードマネージャーを積極的に使用できれば、安全なパスワード管理習慣を形成できる可能性が高まるでしょう。
端末に依存するか
現代のビジネス環境ではテレワークをはじめとして、従業員がさまざまなデバイス(デスクトップやノートパソコン、スマートフォンなど)を使って作業を行うのが当たり前になってきました。
その際、パソコンでは使えるけどスマホでは使えない、Windowsでは使えるけどMacでは使えないとなると、業務に支障をきたすケースも考えられます。
そのため、検討するパスワードマネージャーが端末に依存するかはチェックしておきましょう。
運用環境に適しているか
現在すでにITツールを使用している場合は、その運用環境に適しているかも検討してみましょう。
例えば、クラウドサービスを主に使用しているのであれば、パスワードマネージャーもクラウド対応のものが適しています。
また、主に使用しているWebブラウザがある場合、そのブラウザに対応しているパスワードマネージャーを選択する必要があります。
運用環境に適していないと使いこなせずに余計なコストがかかってしまうため、スムーズに導入できるかは重要なポイントです。
コストは適切か
コストが見合っているかも、必ず検討しましょう。ただ、無料や安ければいいわけではなく、あくまで適切なコストかを判断するのが重要です。
なぜなら、無料でも機能や使用人数に制限があったり、パスワードマネージャーごとに提供するサービス内容に違いがあったりするからです。
パスワードマネージャーは有料の場合、買い切りか、月額または年額のサブスクリプションで提供されます。
買い切り型、月払い型、年払い型のそれぞれのメリット・デメリットは下記のとおりです。
【買い切り型】
メリット:一度の支払いで永続的に利用可能
デメリット:新機能やアップデートは追加料金が必要
【月払い型】
メリット:初期投資が少なく始められる
デメリット:毎月の支払いが必要
【年払い型】
メリット:月払い型よりも安く利用できるケースがある
デメリット:年の途中で利用を辞めると割高になってしまう
価格と提供される機能を比較し、企業の予算とニーズに最も適したパスワードマネージャーを見つけましょう。
ビジネスのパスワード記録に向いたサービス3選
ビジネスでのID/パスワード管理はセキュリティ性が高い有償なサービスが必要といえます。
情報漏えいは、企業のイメージを下げ、損害賠償に発展する場合があるからです。
例としては、以下の3つがあります。
・トレンドマイクロ パスワードマネージャー
・ノートン™ パスワードマネージャー
・Microsoft Authenticator
それぞれ解説していきましょう。
トレンドマイクロ パスワードマネージャー
セキュリティソフトなどで、有名なトレンドマイクロが提供するパスワードマネージャーです。
ID/パスワードを一元管理して、クラウド上に保存します。
最高レベルの暗号化方式の一つであるAES 256bitで情報の保護が可能です。
また、マスターパスワードが採用されており、マスターパスワードの入力以外にも指紋認証、顔認証が用意されているので安心です。
常に、個人情報が流出していないかモニタリングしており、万が一流出が確認された場合は警告とともに対処方法の連絡があります。
セキュリティツールで有名なトレンドマイクロによるセキュリティ性が高い、パスワード管理ソフトといえるでしょう。
ノートンパスワードマネージャー
ノートン パスワード マネージャーは、1つのマスターパスワードでデータ保管庫のロックを解除するため、パスワードを記憶することなく簡単にアカウントにログインできます。
パスワード、クレジットカード情報およびオンライン資格情報などすべてを、個人専用の暗号化されたクラウド型データ保管庫で安全に作成、格納、管理が可能です。
作ったパスワードに脆弱性がないかチェックを行い、より複雑なパスワードに自動で更新します。
マルチデバイスにも対応しており、1クリックでID/PASSが入力できるのが特徴です。
Microsoft Authenticator
Microsoft Authenticatorは、Microsoftが提供する無料のスマートフォンおよびタブレット専用パスワードマネージャーです。
機能は絞られているものの、2段階認証や生体認証といった有料級の機能を備えているのが特長です。
Microsoft Authenticatorの特徴
・生体認証(顔・指紋)でログイン可能
・ワンタイムパスワードを使った2段階認証が可能
・Microsoft アカウントでクラウドにバックアップ
対応しているOSは、iOSとAndroidのみです。
ビジネスにおいて、マイクロソフトのオフィスは、頻繁に使用されています。
ビジネスでマイクロソフトツールと認証が必要な場合は、必要になるパスワードマネージャーです。
まとめ:パスワードマネージャーを活用してセキュリティレベルを高めましょう
今回は、パスワードマネージャーの概要と代表的なサービスを説明してきました。
ID/パスワードがあるサービスは増えていますが、パスワードの使いまわしはリスクが高いため、セキュリティ性の高いパスワードを考える必要があります。
パスワードマネージャーを使えば、手動で手間のかかる管理作業をする必要はありません。
新たなサービスやアプリが増えている近年、パスワードを効率的に管理できるのは大きなメリットでしょう。
しかし、パスワード流出のリスクもあるので注意が必要です。
メリットやデメリットを理解して、自分・自社に合うパスワードマネージャーを活用しましょう。