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愛することが上手くなっていく
先日、夫と陶芸体験に行った。
癒しを求めている全ての人にお勧めしたい。
電動ろくろは最高のリラクゼーションだ。
ろくろの上で回る粘土に、静かに指をぐっと押し込む。
少しずつ、少しずつ粘土がへこんでいき、
そのへこみを今度は横にゆっくりと広げていく。
分厚くてまだ器には見えないそれを、
時間をかけて薄く、きれいな形の器に変えていく。
この工程の静かさ、
粘土の変化とともに、ゆっくりと流れる時間。
なめらかな粘土の触り心地。
すべてが優しく穏やかなもので、
粘土と一緒に心もやわらかく溶けていく感じがする。
私は以前にも体験したことがあったので、「陶芸は最高に楽しくて癒されるもの」であることは知っていたのだが、
初めて体験する夫は、それはもう目を輝かせながら取り組んでいた。
「楽しい!楽しいですこれ!」と先生に笑顔で話しかける無邪気さは、32歳とは思えないくらい愛嬌たっぷりでとても微笑ましかった。
こういう喜びを躊躇いなく人に伝えることができるところが、夫の良いところだ。
最近、私達夫婦は「愛すること」がどんどん上手くなっている気がする。
ふわふわの尻尾を振りながら、ご機嫌でお散歩をする犬とすれ違ったとき。
ベビーカーを降りて、一丁前に母親の前を歩く小さな男の子を見たとき。
近所のおばあさんが、挨拶する度に同じ話をし始めるのをうんうんと聞いているとき。
私たちはその和やかな光景に注目し、互いに目を細める。
日常の中にある些細な「微笑ましいこと」を見つける度に、あたたかい気持ちになる。
結婚したばかりの20代半ばの頃と比べて、
なんと丸く穏やかな性格になっただろうと少し驚くことすらある。
夫は出会った頃、生意気で女性の扱いに慣れている、ちょっと癖のある人だった。
動物園でアヒルを追いかけて笑っている今の姿なんて、社内の誰が想像できただろう。
きっとこの変化は、
私達が周囲に恵まれながら、
家族や友人の愛情を受け取りながら、
健全に年を重ねてきたからだと思う。
私達夫婦は今、なかなか子どもを授かれずにいる。
愛する準備はこんなにもできているのに、と考えはじめるとどんどん心がぎゅっと締め付けられてしまう時もあるけど、
それでも絶望せずに日常の景色を愛する気持ちを持てているのは、
愛情を受け取りながら生きているおかげだと思う。
そりゃあ人に嫌われたり嫌ったりすることも多少(?)あったけど、出会った人全員に愛されることなんて端から期待していない。
愛せないこともあるから、愛する気持ちを大切にできるのだ。
電動ろくろでは大きなマグカップを作った。
夫は丸くて可愛らしいものを、
私は縦長で、台形を逆さまにしたようなものを。
(本当は私も丸くて可愛いものが作りたかったのに、出来上がったのはなぜか台形だった。でもたくさん飲めそう。)
焼いて色をつけてもらって、
完成したものを受けとるのは1ヶ月後だ。
きっとその不恰好なマグカップも、
私達は大切に愛するのだろう。
(イラストは電動ろくろを見つめるねこ 笑)