RISCアーキテクチャの軌跡:パイオニアたちの功績と現代のコンピューティングへの影響
お疲れ様です。
最近、従来のx86アーキテクチャに代わり、ARMアーキテクチャが主流になりつつあることに気づきました。
例えば、Appleは2020年以降、従来のインテル製x86アーキテクチャベースのCPUから、ARMアーキテクチャを基盤としたMシリーズチップに切り替えました。また、Microsoftの次世代PCであるCopilot+PCの一部は、ARMアーキテクチャをベースとしたクアルコムのSnapdragonを採用しています。
簡単に言うと、x86に代表される複雑な命令セットを持つCISC(Complex Instruction Set Computer)から、ARMのようなシンプルな命令セットを持つRISC(Reduced Instruction Set Computer)への移行が進んでいるということです。
このRISCアーキテクチャがどのように進化してきたのか気になり、少し調べてみました。
RISCアーキテクチャの概念は、1970年代後半から1980年代にかけて登場しました。当時は、PCに多くの複雑な命令セットを搭載することで、後のカスタマイズが容易になると考えられていましたが、実際にはほとんど使われない命令も多く、「シンプルな命令セットで効率よく動作させた方が良いのでは?」と考える人々が現れました。
最初にこの問題に着目したのがジョン・コック氏で、1970年代後半にIBMの研究所でRISCアーキテクチャの先駆的な研究を行いました。しかし、この研究は商業化には至らず、研究所内のプロジェクトにとどまりました。
その後、1980年代に入ると、デイビッド・パターソン氏とジョン・ヘネシー氏がそれぞれRISCアーキテクチャの開発を進めました。
デイビッド・パターソン氏の研究はSPARC (Scalable Processor Architecture) の誕生に繋がり、SPARCは1990年代から2000年代初頭にかけて、高性能コンピューティングや企業向けサーバーで広く採用されました。
一方、ジョン・ヘネシー氏の研究成果はMIPSプロセッサとして商業化に成功し、任天堂64やプレイステーション1、2などにMIPSのCPUが搭載されています。
最終的に、MIPSやSPARCは現在ではARMアーキテクチャに市場シェアを奪われましたが、ジョン・コック氏、ジョン・ヘネシー氏、デイビッド・パターソン氏の尽力によってRISCアーキテクチャが普及したと言えます。
なお、ジョン・コック氏は1987年に、ジョン・ヘネシー氏とデイビッド・パターソン氏は2017年に、コンピュータサイエンス分野のノーベル賞とも言われるチューリング賞を受賞しています。
商業化の面ではARMの貢献が大きいですが、彼ら(ジョン・コック氏、ジョン・ヘネシー氏、デイビッド・パターソン氏)がRISCの基盤を築き、その功績がチューリング賞で称えられていることは非常に素晴らしいことだなと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。