見出し画像

約十年ぶりに絵を描こうとして途方に暮れている話。

こちらのnoteは十年以上ぶりにペンタブレット(板)を購入して絵の練習を始めたインターネット文字書き人間がどったんばったんしている脳内思考を整理するための文章です。
こんな文章を世に送り出す間にペン握ってなんか描けって話なのだろうが、この思考沼を一旦整理しないとこの先に進めない気がするので、一旦ペンのを見えないところにやってキーボードを叩いている。板?板は今私の肘置きと化していますよ。位置的に丁度良くて。


私と絵。これまでの人生におけるあれそれ


化物ジンベイザメ。そしてダイナマイト搬入卒業式事件

さて、では私は絵というものにどれほど造詣があるのかという話をしよう。
まったくない。
私は昔から絵というものが苦手だった。オリジナリティがどうとかいう話ではない。本当に苦手で、いやだった。
学校という場所はそんなことを許してくれる場所ではないため、なんとか無理矢理描いたけれど当たり前ながら評価は芳しくない。
そんなこんなで象徴的なエピソードが、タイトルに書かれた二つである

化物ジンベイザメの話
小学生の頃、私はかの有名な海遊館へ行った。まだ沖縄に美ら海水族館が出来ていなかった頃。地元の水族館とは全然違うスケールであったその場所を、私はめちゃくちゃ楽しんだ。
そして、夏休みの課題であった絵の題材に、その大水槽。つまりジンベイザメが泳ぐ様を選んだのである。

パンフレットのジンベイザメと、実際に見た記憶を必死に掘り起こして、自分なりに楽しく自信を持って描いていた。そろそろ完成だという頃に、父がふらりと様子を見にやってきた。夕飯の声かけをしに来たであろう母も後ろにくっついてた。
絵を見た父が口を開く
「なんやそのバケモン」
私が何を描こうとしていたのか知っていた母が慌てて父をたしなめる。
「ちゃんとみてぇやジンベイザメやろ!」
ああ、どうやらこれはジンベイザメではなく化物らしい。と思ったことは覚えている。その後の夕飯は言うまでもなく気まずかった。主に父が。
父の名誉のため補足しておくが、父は特別口が悪いとか、意地が悪いとか、そういったことは全然ない人である。つまるところ、バケモン発言は素である。素の率直な感想がそれだっただけなのだ。ついでにまずいことを言ったという反省もどうやらしていたらしい。数日優しかったしその後父と二人で出かけた折なんか買ってもらった気がする。それが前述の通り、小学生の話。


ダイナマイト搬入卒業式事件

卒業間際、学年末試験的なアレ。中学生はまだ美術から逃れることができないわけだが、当然のこと試験がある。
通常の知識問題を解いていった最後、こんな設問があったのだ。

「卒業文集の表紙案を描きなさい。内容は自由に決めて良い」

そして数学の図形問題でも見ないような四角い枠だけの回答欄。
私は困惑した。めちゃくちゃ困った。学力的に余裕のある私学にて専願受験予定だった私は進路なんてほぼ決まったも同然だったのだけれど、描かないわけにはいかないなと。
とりあえずめでたい時は鳩でも飛ばしとけと思って鳩を飛ばした。卒業ってことは卒業証書があるもんなと思って、大きな鳩の背に卒業証書を背負わせた。
正確には、卒業証書が入る筒の入れ物を。たくさん、たくさん背負わせた。

後で呼び出しを喰らったとき、出来が悪すぎてやばいという話なのかと思っていた。間が良いのか悪いのか、美術担当教師は私が中一の時担任をしていた先生だった。先生が重苦しい顔をして口を開く

「なあ、藍鳩。この前のテスト、あれ何描いた?」
「え……、鳩と卒業証書……?」
「ん……卒業証書……? そういうことか!?」
「何??何???」
「……一瞬ダイナマイトに見えてな……?ごめん、先生が悪かった」
「はぁ、どうも……」
「完全に、先生の早とちりやった。ごめんなぁ」

どストレートに言うと、中学時代、特に中一の頃はめちゃくちゃいじめられていた。中一~中三までの間にクラス→部活へいじめの場は移っていったがとにかくいじめられていた。
つまり、要配慮生徒だった。そんな生徒が、鳩にダイナマイトを背負わせたテストを提出してきたかもしれんと驚いた先生の心中やいかに。
「先生、私の絵が下手でほんとごめん」
私は心底そう思った。ダイナマイトというワードが出てきたときの申し訳なさそうな先生の顔よ。

ダイナマイト前後、はじめてのお絵かきとサイレント挫折

さてそのダイナマイトよりおそらくちょっと前あたりに、私はなんとペンタブレットを所持していた。竹の名を冠する有名メーカーの新古品、マウスつき。ジンベイザメ化物発言をした父が、誕生日プレゼントの予算に納まるようヤフオクで競り落としてきた。

なんでそんな絵が下手で苦手な奴がペンタブレットをねだったのか。
当時の私がおたくで、同盟サーチとかお絵かきBBSとか個人サイトのチャットとか。インターネット老人会に堂々と入会できるその辺のエリアで日々を過ごしていたから。そしてそのジャンルでは、絵が描けることが交流最低条件という傾向があった。実際そこまで厳密ではなかったが、絵を描く→感想をコメントする→そこから交流が始まる。そんな傾向が強めのエリアだった。当時の私はそんなこと全く出来なかったのだが、とある個人サイトのSSが気に入って個人サイトにあったチャットに毎日決まった時間入室し続けるというある種の力業で交流をしていた。当時の私は「全然創作しないのに何故か創作者と仲良くしてる変な奴」だった。客観的に見ると変な奴だよほんとに。
それで絵を描こうと試みて、ぬるっと辞めた。これが多分中学生~高校生ぐらいの話。なんで辞めたかは覚えてない。特に大きな出来事はなかったし、ダイナマイト事件はあんまり関係なかった。でも、辞めた。
たいしてなにも描けなかったから。かもしれない。
ずっと「下手くそだなぁ」とは思っていた。

TRPGとの出会い。そして立ち絵、スチルという文化

なんやかんやあって文章という創作をちょびっとやりつつ今現在、私はTRPG。その中でもCoCと呼ばれるものにハマっている。
TRPGのなかでもそれなりに有名で、紆余曲折あり、同人ルールがどうとかなんやかんや学級会が日々開かれているところで、私はむいむい卓をして遊んでいる。
ルール周りの話は今回一ミリも関係ないので割愛するが、エリアとしては現在はやりの秘匿系とか、うちよそタイマンとか、そういうのをやってる。
とても楽しい。
そしてここには「立ち絵」という文化があって、固定メンバーのお絵かきメインびとが大変ありがたくも同卓者全員の立ち絵を描いてくれるとかいうとんでもねぇ環境で遊んでいる。し、その子がKPだった時なんかは別の人が私の分の立ち絵を生やしてくれたりもした。Twitter(ともうしばらく呼び続ける所存)のヘッダーだって友達が描いてくれたし、誕生日プレゼントとしてアイコンも貰ってしまった。本当にいつもありがとう。そろそろ美味しいものいっぱい送りつけるね。

でもまあやっぱりその子が不参加な卓であったり、そもそもその子が忙しい時にまで立ち絵を描いてもらうのは、申し訳ない。当たり前体操。
あとは、私がいわゆるKPC(進行役をしつつ自分のキャラクターとして動かすやつ)を出すときぐらい、自分で描けるようになりたいな。と思ったのが一つ。
そして「このシナリオのここのシーンにスチル欲しい~~~~~!!描けねぇ~~~~」
「じゃあ描けるようになれよ」
という大変即物的な理由がもう一つ。

ついでに言えば、丁度良く「本当に初めてお絵かきする人向け練習方法」というnoteをみかけたのもあった。こういうとき勝手にリンク張っても良いのかわからないので一旦リンクはなしで。

そういうわけで私は衝動とセールに背中を押されて板タブを買った。正確には今までため込んだポイントが良い感じにあったので実質無料で手に入れた。冒頭写真のXPPen君である。一応買ってから毎日、なんらかの形でペンを握って、もちもちなんしか描いている。一応、なんとなく。辞めたら負けな気もするし習慣になりつつあるので。

もう一度、お絵かきをはじめてみた

まあそういうわけで、描けるようになりてぇとまたなったので環境を整えることにした。
そんだけ苦手だったら最初から板買うなよって話もあると思うが理由があってな。

前提:視覚認知があまりにも弱すぎる

私の認知、ほとんどが音声、次に言語、それから図形や空間が来る。視覚情報にめちゃくちゃ弱い。
そう、私は模写が出来ない。
見本から紙に視線を移すわずかの間に全部忘れる、あるいは紙の白に全部持って行かれるからだ。
意味分かんねぇって人絶対居ると思う。覚えた線引けば良いだろって人。
本当に無理なのよ。
なにも思い出せないの。行き当たりばったりに線を引くか、もう一度お手本に戻るかの二択を迫られる。
さらに言えば、昨日なんとなく描けた模写、同じ課題が一週間後もう一回回ってきても気付かない可能性大分ある。
模写の時に方眼グリッドをかぶせて正確な位置を測りながら絵を描くという理論的かつ画期的な練習方法を見かけたこともある。が、私は多分向いてない。
マスが数えられないから。
実はこれ実生活でもちょっと困ってる。そのレベルで数えられない。5マス毎に太線とかしてくれてると神だな思うレベルで数えられないので、その方法は早々に諦めた。おそらくペン握ってる時間よりマス数えてる時間のが長くなってしまうから。

そう、私という人間はとにかく視覚認知が弱い。その段階でめちゃくちゃマイナスかかった状態からスタートだなとは思っていた。
そういうわけで「つねにお手本が視界に写っている状態」を一番維持しやすかったのが、PCに板タブ繋いで片方をイラストソフト、もう片方をお手本にする方法だったのである。最近進化してスクショをレイヤーとして読み込んで真横置きすることも覚えた。進歩。
そして絵を描き始めた人間は、今とても困っている

世の中の「初心者」レベル、高くない……?

さて、私は多大なマイナスを抱えながら絵を描くということについて向き合うことにした。しかして努力は1日で成らず。今上手く描けないことはしょうがない。なんたって描いてないんだから。
現在は私が一度挫折した頃と違って玉石混淆の情報が行き来する時代。初心者向けって探せば情報はなんぼでも出てくるやろうと色々検索した。検索すればそれをまあ諸々が記憶していて広告代わりに色々出してくれる。それをとりあえず見てみると、大体こんなことが書いてある。
「初心者さんが苦手な●●はこうしてみるとわかりやすいですよ!」
「●●が苦手な人はこうしましょう!」
「初心者向け●●の描き方はこちら!!」
書いてあるし、描いてある。
きっと正しいことが書いてあるんだと思う。
でもさあ。
広告で想定している初心者、は私にとって中級者に見えている。
「パーツ分けして考えましょう」
そのパーツが描けません。
「初心者さんが間違えるここはこう」
初心者想定の絵、上手くないっすか?
「ここをこうすると初心者さんでも簡単に上達!」
before絵がそもそも描けませんが?

私はどうやら「初心者」ですらないらしい。
ということだけが積み上がっていった。
1日で成らずはそうなんだけど、とっかかりすらないらしいと知った時はシンプルに困った。どこを向けば良いのかわからない、というのはちょっとトラウマにも触れてしまって困る。どうしよう。そしてさらに情報を探してみる。

情報が氾濫していて、なにをしたらいいのかわからない。

んで結局なにからはじめれば良いのか、情報が氾濫してわからん。ということがわかった。

  • 裸体からはじめろ

  • 数をこなせ

  • 数より質。一枚ずつ丁寧に

  • まず何よりも一つ完成させろ

  • なんでもいいから描け

  • 初心者向けモチーフはこれ

  • トレスはするな

  • トレスも練習になる

ここに初心者(中級者)向けの情報が乗っかってくる。
まさに情報の氾濫である。
AさんとBさんが言ってること違うどころか真逆だし、じゃあそこどうやったら描けるようになるんですかというのもわからない。

どないせえっちゅうねん。
私は途方に暮れた。
考えることを放棄して、みんな大好きポーズほにゃららさんとかで毎日模写をしている。それをしている最中に何よりも“顔”がわからんということに気付いて適当な二次元のキャラを引っ張ってきてトレスしてみたり模写してみたりしている。1日まあ合計1時間以上は、なにがしかペンを触っている気がする。わからない。測ってないから。


描けるようになりたいと描きたいはきっと違う

どこまで行けたら初心者で、絵の完成とはなんなのか

つまるところ、私はまだ土俵に上がれていないのだろう。
なんとなく模写をして、なんとなくトレスして、トレスしたものを今度は模写してみて。大変非効率的で間違ったことをしているのだろうな。ということしかわからないのだ。

丁寧に一枚完成させろと言われても、その完成って何なのかがわからない。
模写して描けるようになれと言われても、なにをもって“描けた”になるのかがわからない。
模写してトレスしてもう一回模写したら、結局最初の模写が一番まともだったなんてことも山ほどある。
補助線を引くと良いといわれたがそもその補助線ってどこに引くのかわかんないし、補助線の基準になる場所の位置が配置的に正しいのかどうかもわからない。
見込みのある絵を完成させろと言われても、そも見込みがないものしか描けないのにどうしたら良いのか?

わからないのだ。
描かなければ上手くならない、それはわかる。
でも、何をしたら良いのか本当にわからないのだ。
数はなにより勝るから描いてはいるけれど、それに意味があるのかどうかもわからない。
なにもかもわからないままずっと考えている。とりあえずこの絵を模写して、トレスしたら、何かわかるかもしれないという可能性の低い望みに縋って描いている。
そうしているうちに気付いた。

描けるようになりたいが、描きたいものがない

私は絵が描けるようになりたい。
やりたいことがあるから、というのは前述したとおり。
その気持ちそれ自体に偽りはないと思っているけれど、それはそれこれはこれとして。
私は絵が描けるようになりたい。でも、今すぐこれを描きたいと希求する力はとても弱い。
今絵を描いている人には「描きたいもの」があって、「描きたいものを描くために」切磋琢磨しているのだろう。私にはそれがない。漠然とした「人間が描きたい」「スチルが描きたい」という欲求はあれど、そこに具体的な顔、表情、構図があるわけではない。
私は、いったい何がしたいのだろうか。
描きたいってなんなんだろうか。
私は今それを、ずっと探している。

絵を描くって、なんだろう

絵は手紙の一種なのだと、私の愛する作品は言った。
私はそのフレーズがとても好きだった。
でも私が描こうとしているものはきっと、手紙ではない。
ただの人体解剖図で、図形の連なりなのだろう。
こうして長々文字を綴る間にペン握れといわれたらぐうの音も出ない。
私はこうして、文章という形で自分の感情を整理しているけれど、じゃあ絵にそれほどの欲求を傾けられるのかというと、自信はない。

じゃあ辞めるのか。
多分辞めない、今のところ。
私は今この文章を描きながら、今日のお題ポーズはなんだろうなぁとか考えてるし、久しぶりに人間のツラを描いてみるかあなんて思っているし。ぼんやりとこういうスチルほしいなあというイメージだけはどうにかこうにかひねり出している。
出来るかどうかは定かではないけれど、まあもうしばらくは、ぐだぐだ騒ぎながらペンを握っているのだろうなと思う。

私は、今上手くならないのもそれなりに苦しいけれど、どうしたら良いのかわからないということが、きっと一番苦しいのだろう。
そんな私は先日見切り発車で某クリスタを契約した。めちゃくちゃ描きやすくてびっくりしてる。
月謝制お絵かき講座の契約だって迷っている。お値段けっこうするんだけど試しに某音楽教室のサイト見たら大分リーズナブルだよなぁって顔をした。もうちょい検討案件。

道がわからくて途方に暮れている私が、いつか「しょーもないコトで悩み寄ってからに」といつか笑う日がくるのだろうか。
きたらいいなぁ、と思っている。

絵が上手くなりてぇーーーーーー。
とりあえず描くかぁ!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?