藤井風 妄想掌編「待っているから、、、」
あ~寒っ。
先輩、遅いな。
イブは会えないからって、一週間も早くなったけど、
こんなにキラキラなイルミネーション、、、綺麗だから、まあ、いいか。
イブには特別ライブの配信って言ってたな。
私も一人で部屋で見るのかぁ・・・。
それにしても、遅いなぁ。
最近は連絡しても既読スルーばっかり。
時々くれるスタンプも、何だか的外れだし。
この前は、林檎もらったから食べる?って聞いたのに、スイカにハートマーク付けて返信して来たよね。
うん、忙しいんだよね。
この前の朝五時の撮影、見ちゃったしなぁ。
あんな寒いところで、びしょ濡れで、、、。
あんなとこ見たら、文句も言えなくなるじゃん。
遠くからでも震えてるのがわかったよ。
内緒で行ったんじゃなかったら、
Taoくんごと私が抱き締めてあげたかったよ。
でも、周りのスタッフさんたちが直ぐに毛布で包んでくれてたよね。
先輩がいつも言ってる、温かい現場って、本当だね。
あんなに風の吹く寒い中でも、先輩の周り笑顔だらけだった。
あ、来た。
先輩、、、、完全にオーラ消えてる。
ん?やたらとうろうろしてる、なんで?
分かった、また眼鏡が見つからなかったんだ。
ふふ。私のこと見えてないんだね。
真っ黒のニットキャップに真っ黒のセーターで、
あんなにふらふらしてたら、
武道館でたくさんのファンの前で歌ってたアーティストだなんて、誰も気づかないよね。
「せんぱ~い」
あ、気づいた。
顔中を笑顔にして、
力いっぱいブンブン手を振り返してくれるとこが、好き。
そんなに走って来なくてもいいのに。
息が真っ白。
ハアハアいってるじゃないですか。
大丈夫ですよ、そんなに心配しなくても。
私、ちゃんと待ってますから。
眼鏡、またなくしたんですか?
その、前抱きしてるリュック、ちょっと貸してください。
え~~っと、ほら、あった。
なんでわかったん?って。
う~ん、なんでですかね。
(ほんとは、ずっと先輩のこと見てきたから、わかるんですよ)
それよりも、先輩、寒いです。
手がかじかんじゃった。
あ、先輩の手、すごくあったかい。
こんな風に両手で包んでくれる、先輩の大きな手、大好き。
「頬っぺたもこげな冷とうして」
え、頬っぺたも?
恥ずかしいじゃないですか、、、こんな所で。
先輩、またすぐに次の新曲のMV撮るんですよね。
うん、またしばらく会えませんね。
大丈夫ですよ。
私、ずっと待ってるって言ったじゃないですか。
え?先輩?
こんなところでそんなにぎゅっとハグしたら恥ずかしいですよ。
先輩、苦しいですよ。
どうしたんですか?
先輩、先輩、、、、?
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