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2.2.2 データドリブンな意思決定の変革

※この記事は、マガジン「AIが活躍する未来!20年後の私たちの働き方」の一部です。

会社の経営会議では、勘や経験だけでなくデータに基づいて物事を決める場面が増えてきました。皆さんの周りでも、「データをちゃんと見て判断しよう」といった声を耳にすることがあるかもしれません。これは企業におけるデータドリブン(データ駆動型)の意思決定へのシフトを表しています。では、なぜ今これほどデータが重視されるのでしょうか?

背景には、取り扱えるデータ量の爆発的な増加があります。パソコンやスマホの普及、インターネット上の活動増加、さらにはIoT機器(モノのインターネット)の登場によって、世界中で日々生成されるデータは天文学的な量になりました。ある推計では、2018年に33ゼタバイトだった世界のデータ量が、2025年には175ゼタバイトに達するとされています​。ゼタバイトとは1兆ギガバイトという想像もつかない単位ですが、それほど膨大なデータが生み出されているのです。データがこれだけ豊富になると、従来は見えなかったパターンや事実を発見できる可能性が高まります。例えばお客様の購買データを分析すれば、売れ筋商品や顧客の嗜好を細かく知ることができますし、生産ラインのセンサーから得たデータを解析すれば、機械の故障予兆を検知して未然にトラブルを防ぐこともできます。

企業はこのデータを宝の山として活用し始めました。ビッグデータ解析ビジネスインテリジェンス(BI)ツールの導入が進み、データに基づいて作戦を立てるスタイルが広がっています。「経験や直感だけでなく、数字的な裏付けをもって判断する」という文化が根付きつつあるのです。実際、最近の調査では世界の企業の約77%がAIを含めたデータ活用に着手または検討しているという結果もあります​。多くの会社がデータを使いこなすことで競争力を高めようとしているのがわかります。

具体的に、データドリブン経営がどのような変化をもたらしているか見てみましょう。まず挙げられるのが、予測分析による意思決定の高度化です。AIと統計手法を駆使すれば、過去のデータから未来のトレンドを予測することができます。例えば小売業では、過去の売上データ・天候・イベント情報などをAIが分析し、「次の週末はこの商品がよく売れる」といった予測を立てることができます。その予測に合わせて在庫を増やしたり広告を打ったりすれば、機会損失を防ぎ売上を伸ばせます。また製造業では、機械のセンサーデータをAIが解析し「〇〇部品があと10日で劣化しそう」といった予兆を掴みます。これを予知保全といい、故障が起きる前に部品交換してしまうことでダウンタイム(稼働停止時間)を減らし、結果的にメンテナンスコストを大幅に削減できます​。

さらに、経営戦略の策定にもデータが用いられます。どの地域に新店舗を出すべきか、どの商品カテゴリーに投資すべきか、といった大きな判断も、市場調査データやシミュレーション結果が参考にされます。以前なら経営トップのカリスマ性や勘所がものを言う場面でも、今ではデータ分析チームがシナリオを提示し、それに基づいて合議するケースが増えました。例えばNetflixという動画配信サービスは、ユーザーデータを徹底分析して人気の出そうなオリジナル番組の企画に活かしたことで有名です。「ハウス・オブ・カード」という大ヒットドラマは、視聴者データの分析から生まれたと言われています。これなどはデータドリブン意思決定の象徴的な例でしょう。

このようにデータを使いこなすために、企業ではデータサイエンティストアナリストといった専門職の重要性が増しています。膨大なデータから意味のある知見を引き出すには、統計やプログラミングの知識に加え、ビジネスの理解力も必要です。まさに**「データサイエンス」という新しい分野**が台頭し、そこで活躍できる人材が引っ張りだこになっています。米ハーバード・ビジネス・レビュー誌が「21世紀で最もセクシーな職業はデータサイエンティストだ」と評したほど、その価値は高まっています。

データドリブンな意思決定への変革は、企業文化にも影響を及ぼします。社員一人ひとりがデータに関心を持ち、エビデンス(根拠)をもとに議論する風土が醸成されます。これにより、根性論や思い込みではなく客観的な事実に基づく健全な議論が行われるようになります。一方で、データの読み方や扱い方を誤るとミスリードしてしまうリスクもあります。そのため、社員教育として**データリテラシー(データを正しく理解し活用する能力)**を身につけさせる動きも広がっています。

総じて、データとAIの進化は意思決定プロセスを大きく変えました。「勘や経験も大事だが、まずはデータを見よう」というのが現代の合言葉です。膨大な情報から価値ある知見を引き出し、それを行動につなげる。このサイクルを回せる組織が、これからの時代に強い組織と言えるでしょう。

参考:
175 Zettabytes By 2025(Forbes)
131 AI Statistics and Trends for 2025
How predictive maintenance cuts costs

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