【4限目】 理科 : 緑菜先生
*ぴちゃんと先生 4限目*
ぴ『まえくん、ぴちゃん苦手なんよ、みどりーな』
ま『みどりーなは、教師陣の中でも特にヤバい人認定されてるもんなぁ。せっかくの美人なんだが』
キーンコーンカーンコーン♪
ぴ(あぁ〜。今日も理科が始まった〜)
緑『はい! それでは授業を始めます! 今日は光合成についての復習から! 植物が光合成をするためには必要なものがいくつかありましたね! 何でしょうか? 分かりますか? 昨日の授業の最後にミニテストでまとめたと思いますが、もう忘れているなんてことないですよね? だってまだ、24時間経ってないわけですし。これで忘れていいわけがありません! みなさんには時間がないんです! 予習・授業・復習! この繰り返しを極めるしかありません! 頭に叩き込むしかないんです! 箸で豆をつかむように、やらなければ身につきません。身についていますか? 今までの授業身についていますか? せめて昨日の授業くらいは、身についていて欲しいものです。さて、シンキングタイム終了! これで答えられないはずがない! はい、それではこの5秒の間いっさい目が合わなかったぴちゃん! 答えてくれますか? 答えていただきましょうか! 光合成について必要なものはなんでしょうか?』
ぴ(ぴ〜! 地獄きた〜!)
ま(ぴちゃん! これ! こっち見て!)
ぴ(うぉ〜! まえくん助かる!)
緑『はい、ぴちゃん! 答えてください! すぐに! 今すぐに! 時間がありません! この心臓が止まる前に答えてもらわないと困ります! 人間、心臓が止まってしまったら終わりなのです! どれだけ正しい心を持っていても、どれだけたくさんのお金を持っていても、心臓が止まれば終わりなのです! 悪人であろうと、罪人であろうと、生きていればこの世界に存在することはできるのです。生きてさえいれば、心臓が動いてさえいれば、それは時間が残されているということなのです。だからこそ! この貴重な鼓動を感じている間に! 私たちが生きている間に! さぁ、答えてください! 心臓が止まる前に!』
ぴ『水と二酸化炭素と光です』
ま(よし、イケた!)
ぴ(間違ってたらまえくんシバく!)
緑『・・・正解です! 正解ですよ、ぴちゃん! よく覚えていましたね! びっくりして先生の心臓が一瞬止まりました! そうなのです、光合成には水と二酸化炭素と光が必要なのです。では、ここでさらに復習を。光合成についての復習を。植物でもある場所でないと光合成はできません。光合成を行う場所は? 場所はどこ? 光合成が行われる場所。水や二酸化炭素があって、光が当たっても、それはある場所じゃないとダメなんです。だって、私たち人間は光合成をしないんだから。私たちに備わっていない、植物ならではのオリジナリティー。さぁ! それはどこ? 答えてぴちゃん! 心臓が止まる前に!』
ま(やべえ、ずっとみどりーなの視線がこっちに向いててフォロー出来んかった)
ぴ『よ、葉緑体』
緑『・・・の?』
ま(惜しい、正解と言ってもいい回答。それでも正解と言わないみどりーな厳しい)
ぴ『葉緑体の、緑の部分』
緑『・・・名称は?』
ま(そ! ぴちゃん! そ! 葉緑素!)
ぴ『えと、分か』
ま『葉緑素です(裏声)』
ぴ(ちょ! まえくん! さすがに無理あるやろ!)
ま(しゃーないやろ! 賭けやこれは!)
緑『・・・正解です! 正解! 葉緑素! ここに光が当たって、水と二酸化炭素があるのが光合成の条件! 正解! ぴちゃんが溜めるから、先生心臓3秒ほど止まりましたよ! 生きてる! 先生はまだ生きています! 素晴らしい! 生きてることは素晴らしい!』
ぴ(セーフなのかよ!)
ま(結果オーライ! やったもん勝ちや!)
緑『生きるために必要なモノ。それが光合成では作られる。ありがたい。本当にありがたい。心臓が動くことによって運ばれるモノ。光合成で作られるものは何? 2つ答えて。1つじゃだめ。2つ答えてもらいましょう。どうしましょうか、誰にしましょうか。早く指名しないと。私たちの心臓が動いているうちに!』
ぴ(まえくん! 答え何?)
ま(酸素とデンプン!)
ぴ(おけ!)
緑『それじゃあ! ぴちゃん! またまたぴちゃん! 今日はあなたにロックオン! 今日はあなたの日! 特別な1日! 最高の1日! さぁ答えて! 光合成でできるモノは?』
ぴ『酸素とデンプンです!』
緑『酸素はどこから出て来る?』
ぴ『ぴ?』
緑『二酸化炭素や酸素はどこから出入りするの? 復習! これも復習! 蒸散で水蒸気を出す役割もしているところ! 分かるよね? 簡単だよね? 初歩の初歩! これが1番簡単!』
ま(いやどちらかというとそっちはマニアックな方。確かに必須ではあるけど)
緑『どうしたの? 顔が死んでますよ? だめ! ぴちゃん、あなたは生きてるの! 心臓が動いている限りあなたは生きているの! あきらめてはダメよ! 思い出して、私たちの授業を。きっと覚えているはずよ。だって、授業の前後に予習復習をすれば覚えるはず。これを答えられないわけなんてない! 出来ないわけがない! だって先生の授業を受けたんだから! 出来ないはずがないわ! さぁ答えて! 心臓が止まる前に!』
ぴ(やばい、分かんない、泣きそう)
ま『気孔やったっけ?』
ぴ『え?』
緑『まえくん! 答えちゃダメでしょ! ぴちゃんに聞いてるんだから!』
ま『え? 俺答えてました? すみません、独り言が大きかったようです。いやぁ、確か気孔の孔辺細胞が開いたり閉じたりして蒸散や酸素の放出をしていたよなぁ〜って考えてて。あとアレっすね、水は根から道管を通ってくるし、葉緑素はクロロフィルのことだし、さっきぴちゃんはデンプンって答えてたけど、結局のところブドウ糖と無機物の結合により有機物が出来るってことだし、あとは』
緑『まえくん! 答え過ぎ! しゃべり過ぎ! 生き急がないで! 高校レベルまで含んでる! まだ死なないから! 中学生は中学生らしく生きるのよ!』
ま『あぁ、すみません、俺らの心臓が止まる前に答えといた方が良いかなって』
緑『素晴らしい! 素晴らしい心構え! だけど、まだ大丈夫! あなたたちは若い! 若いうちは若いうちの時間を使うのよ! 今しか出来ないこと! 今しか出会えない人! 今しか答えられない問題! 今しか使えない時間! それを効率よく回転させるの! 人は心臓が止まったら終わり。たくさんの現場を見てきて教師になったけど、やっぱり思うことはひとつ! 心臓が止まるまでは生きている! 心臓が止まるまではあなたたちの人生! 後悔はさせない! 1分たりとも、1秒たりとも無駄には出来ない! 今使うべき時間と、今使わなくてもいい時間の見極め! その見極めが大事! 優先順位! やらなければいけないことの優先順位! 学ぶときにしっかり学んで、休むときはしっかり休む! 予習・授業・復習! それさえしっかりしておけば、あとの時間は自由! 自由時間! その時間が大切! その時間で何をするか! 自己実現! 自分の時間を大切に! 音楽でも、スポーツでも、趣味や特技でも! 使える時間は生きている間だけ! 大切にしましょう! 授業は授業! 時間を無駄に出来ない! それじゃあ、今日の授業! 今日のテーマ! 今日は先ほど出た道管と師管について!』
ぴ(まえく〜ん! サンキュ〜!)
ま(みどりーな対策。想定しといてよかった)
ぴ(でも、むちゃくちゃ早口な中で、結構大切なこと言ってたよね)
ま(噂やとみどりーなは、命を救う職種出身の教師らしいからな。心臓が止まった人を前にした経験から、俺たちに対して、今を生きているという大切さを必死に教えてるんやと思う)
ぴ(だからあんな連呼するんだ「心臓が止まる前に」って)
ま(確かに本質だよ。ここで何学んだって、生きていなければ全ての知識や経験を活かすことが出来ないんだから)
ぴ(今の時間を大切にしつつ、しっかり生ききれよ!ってことか)
ま(とはいえ、極端過ぎるからなぁ、その強いクセが何度も職員会議での議題には上がってるみたいだけど)
緑『まえくん! では答えてもらいましょう! さぁ! さぁ早く! 予習が完璧なあなたなら出来るはず! 答えられるはず! 大丈夫! 基本も基本! 分からないわけないです! さぁ、答えてもらいましょう! 何? 何!? 答えはいったい何!!』
ま(おい! 全然問題聞いてなかったぞ! ぴちゃん聞いてた?)
ぴ(「どーかん」とか「しかん」って最初に言ってたで、それ関連じゃない?)
ま『えー、維管束です』
緑『・・・正解! 正解です!』
ま(マジかよ、当たったよ)
ぴ(とりあえず今は授業に集中しよう)
緑『良いですよ! 良いペースです! さぁ! どんどん答えてもらいましょう! たくさん知識を蓄えましょう! 時間は無駄には出来ませんよ! たくましく生きるのです! 人生を謳歌するのです! そう! 私たちの心臓が止まる前に!』
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