大谷翔平選手の賭博スキャンダルは、日本人にも一因があるかもしれない
こんにちは。エバンス愛です。
先日、夫のマイクと私が講師を務める英語教材 "SPEEDIER READING" のラジオ収録をしました。テーマは、「大谷翔平選手の違法賭博スキャンダル」。
イギリスの雑誌The Economistから毎週記事を取り上げて日本語と英語のバイリンガル解説をしているのですが、今回は、大谷選手の通訳の賭博スキャンダルの記事を扱いました。
記事はこれ。↓
イギリスはほとんど野球が知られていない国なので、野球はめったに話題になる事はありません。でも、大谷選手はベーブ・ルースに匹敵する、歴代でも最も偉大な野球選手と言われていて、さすがにイギリスでも無視はできないようです。
記事の内容は、以下のような感じ。
SPEEDIER ラジオでは、このように記事の内容の要約を紹介して、その後、記事に取り上げられた文化、歴史、宗教、政治などについて夫のマイクと私が解説をしたり、あるいはディスカッションしています。
今回、この記事で私たちが注目したのは、日本とアメリカにおける「スポーツ通訳者の立場の違い」です。
■日本とアメリカの「通訳者」の違い
夫のマイクは、日本でも野球をテレビでよく見ているのですが、広島出身の私の影響で広島カープファンです。
あ、去年、中央ヨーロッパのスロバキアに行ったときに、広島に住んでいたことがある外国人とたまたま言葉を交わしました。相手が私たちに気づいてくれたのは、マイクが「HIROSHIMA」と書いたカープのTシャツを着ていたからでした(笑)。
その時の記事:
そんな、日本とアメリカの野球を両方知っているマイクに、「日本の野球での通訳の扱いを見ていて、アメリカと違うなと思うことは?」と聞くと、マイクはこう言いました。
「アメリカでは、通訳が選手の言葉を訳す時、
普通はテレビに通訳の姿が映ることはない。
そもそも、 アメリカでスポーツをプレイしたいなら、
英語力は必須だというのが常識。
たとえば、中南米出身の選手も
インタビューは英語で答えるし、
通訳はほとんど見たことがない。
ブロークンな英語でも、
彼らは全く気にせずどんどん話す。
一方、日本で野球の試合を見ていると、
海外出身の選手のヒーローインタビューでは、
通訳が必ず隣にいる。
そして一緒にお立ち台に上がり、
テレビにも映るし、
通訳が小声で訳している声すらも聞こえる。
こんな事は、アメリカではありえない。
日本では、通訳が目立ちすぎている」
と。
確かに、日本では水原一平さんはすごく有名で、いつも大谷選手とセットでニュースになっていますよね。日本人の誰もが一平さんを知っているし、いつもすごく注目されています。
日本人は、『英語を話せる日本人』が好きです。英語が苦手な日本人にとっては、日本語と英語のどちらもネイティブで、大スターである大谷選手の通訳をしている一平さんは、憧れの存在です。それで、日本のメディアが一平さんをいつも大きく取り上げるのだと思います。
アメリカでは、野球好きな人なら誰でも大谷翔平選手のことは知っています。彼は、アメリカに限らず世界の野球界の大スターです。これまで歴代最高の野球選手と言えば、ベーブ・ルースでしたが、そのベーブ・ルースを超えたのでは?と言われているのが、大谷翔平選手ですから。
でも、通訳の一平さんについては、外国人はほとんど誰も知らないし、気にもしていないはずです。
■通訳は目立ってはいけない
私自身通訳者ですが、普段の私だったら全くご縁のないような場所に招かれることもあるし、偉い人に会うこともあります。まあ、私の場合は、通訳の仕事を通じて会ったことがあるのは、せいぜい、大学の学長か県知事くらいですが。
でも、そういう人と会う機会があるのは、私が通訳として同行している人が重要な人物だからであって、私にその価値があるからではありません。
それでも、丁重なもてなしを受け、豪華なお食事を一緒にいただき、チヤホヤされ続けたら、いつしか、自分が重要人物かのように勘違いしてしまうのも、とてもよくわかる気がします。
もちろん一平さんも、主役は大谷選手であって、自分は目立ってはいけないことなんて、よくわかっていたと思います。でも、もしかしたら、いつも大谷選手と行動をともにし、(日本のメディアからは)スターのように注目され、チヤホヤされ続けているうちに、金銭感覚も狂ってしまったのかもしれません。
■「英語が不完全な日本人」に厳しすぎる日本人
日本人は、「英語が話せる日本人」を必要以上に特別視し、チヤホヤします。
その一方で、やれ「発音が下手」だの、やれ「ここの文法が間違っている」だの、同胞の日本人の英語の粗探しをする、とても「意地の悪い人たち」です。残念なことですが、あなたも、そういう人をたくさん見たことがあるのではないでしょうか?
これは全くの個人的な意見ですが、誤解を恐れずに言うと、日本の、いや、世界の宝である大谷翔平選手がこんな大スキャンダルに巻き込まれているのは、私たち日本人にも責任があると思うのです。
大谷選手やイチローさんは、メディアの前で英語を話さないことで有名です。チームメイトとは、通訳なしで楽しくやりとりしている映像は何度も見たことがあるので、彼らも英語が話せないわけではないはず。でも、彼らがカメラの前で英語を話すのは、本当に、数えるほどしか見たことがありません。
前に、私の本館ブログで、イチローさんのスピーチを取り上げたことがあります。
2019年の引退セレモニーが、イチローさんが英語を公の場ではじめて披露したと言ってもいい場面でした。でも、フリートークではなく、原稿を読み上げるだけ。
大谷選手も、入団会見などで英語で話すことも少しはありますが、前もって作った原稿に基づくスピーチばかり。筋書きのないインタビューに答えるようなことは、今までなかったと思います。
イチローさんも、大谷選手も、大スターだからこそ、自分の意図と違うことをメディアに書かれたり、間違った情報が広まらないための予防策として、英語を話さないというのも理解できます。
でも、それ以上に
「日本人のせいで、彼らは公の場で英語を話せない」
のではないかな、と私は思ってしまうのです。
■スポンサーからのプレッシャー?
イチローさんや大谷選手は、数々の大企業の広告塔でもあります。そして、莫大な広告費を払っているそのスポンサーが守りたいのは、彼らの「完璧な」イメージ。
彼らが完全ではない英語で話す様子がテレビで流されてしまうと、完璧なヒーロー像が崩れてしまい、スポンサーにとって都合が悪いのです。なぜなら、顧客は、「日本人の英語に厳しい、粗探し好きで意地悪な日本人」だから。
なので、ブランドイメージを守るために、なるべく通訳を使ってほしい・・・という、スポンサーの意向も、もしかしたらあったのではないかな?と思うのです。(※完全な、個人の憶測です)
と、これを書いている途中で、この記事を見つけました。
大谷選手が、3日前に、通訳なしでインタビューにはじめて英語で答えたという記事です。まあ、こういうのが、いちいちニュースになるのが異常というか。
本業は野球選手なんだから、英語は完璧でなくていい。通訳ではなく、彼自身の声で言葉を聞きたい。そう、多くのファンは思っているのではないかなと思います。
というわけで、大谷選手に関する賭博スキャンダルは、私たち日本人の英語への向き合い方や、日本の英語業界にも、責任があるのではないか・・・と思ったので、今日の記事を書きました。
これからは、日本人が、英語ができる日本人を必要以上にチヤホヤするのを辞め、完璧な英語でなくても勇気を持って話している日本人を、バカにしたり粗探しをすることがなくなってほしいと思います。
そして、「言いたいことが相手に伝わったら、それでいいじゃない!英語は、コミュニケーションの道具なんだから!」というメンタリティで、自信を持って英語が話せる人が増えたらいいなと心から思います。そのためには、まずは、これを読んでくださったあなたから、変化を起こしていきましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
なお、上記の大谷選手の記事のラジオ音声は、来週公開予定です!こういった内容にご興味があれば、ぜひSPEEDIER READINGにご参加ください。
参加してくださったから、先日、以下のメッセージをいただきました!
この教材には私の1時間コンサルがついているので、勉強法や英語を活かした転職活動などのご相談にも乗らせていただきます!
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