「Hey Hiro. What kind of places do you wanna make hotel ?」
お前はどんな所にホテルを作りたいと思ってるんだ、ヒロ。と、オランダ人でインドネシアに住んでいる友人Jorkに尋ねられた。
「土地に力がある場所に。」
南の国独特の色濃い夕陽が視野の片隅にあったせいか、分厚い波の音に囲まれていたせいか、自分の口から出た答えは自然とこんな表現になった。自ら言い放った言葉がぐるっと空気中を回って耳に入り、すっと心に落ち着くことがある。
そう、土地には力がある。良い土地、悪い土地、というものはおそらくどの観点から見るかによって違ってくるだろうが、そういったものを通り越して圧倒的に力を持ってる土地があると思う。
言葉で定義することは出来ない、しかし、はっきりと感じることができる流れ。
人も自然も、活き活きとそこにいられる場所。
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さて、そんなわけでスリランカ、ハワイに続き、神々の宿る島、Baliを訪れた。
インドネシアは9割がイスラムであるのに対し、ここバリは逆に9割がヒンドゥーの国。それもバリ・ヒンドゥーと呼ばれる特殊な宗派で、仏教とヒンドゥー教が長い歴史の中で独自に合わさり、人々の生活を彩っている。
道路を歩いているとよく目にする四角く折られた笹の葉。お花やお金、タバコ、穀物を神様にお供えしているという。
古びれた寺院、緑に輝く棚田、夕陽を浴びる偶像。いつも身近に神々を感じる生活が、ここにはある。
こちらに来てから毎日、ふと心落ち着く瞬間がある。それはきっとこの土地の深い自然だけではなく、バリ・ヒンドゥーの文化が果たす役割も大きいのかもしれない。
今回は、3つの目的があってバリを訪れた。
まずは1つ目は、スリランカで体験した「ヨガやサーフィンといった体験に特化した宿」をもっと深掘りすること。日本をはじめ他の国では見ることの少ないジャンルの宿だが、ことバリに関しては昔からかなりの数が存在する。
今回はその中でも特に評価の高いこの3つの宿に滞在することにした。
Mondo Surf Village
http://mondosurfvillage.com
Kima Surf Village
https://kimasurf.com
Dreamsea Surf Camp
https://dreamseasurfcamp.com
そして2つめは「旅、生活、仕事の境界線を曖昧にしていく宿」に滞在すること。Work Anywhere, Live Defferently. というコンセプトを掲げたCo-LivingとCo-Workingのための宿。ウェブによると「世界中からスマートな人々がここに集い、生活し、仕事をしている」とのこと。バリの他にもニューヨークやハワイ等、世界中に展開している。
Outsite
https://www.outsite.co
そして最後の目的は、近い将来この地でホテルをやるための敷地探し。そう、バリは強く展開したいと思う場所。
ここ数年、バリの観光客数は右肩上がり。経済も街も発展し続けている。土地の値段も、ホテルの宿泊費も、長期的に見ればこれからも変わらず上がっていくだろう。
しかし、ここに展開したいと思う理由は少し違う。上記条件はきっと、誰かを説得するための表面的な材料に過ぎない。
東京という都市から離れ、雄大な自然と神々を見上げる時、私の心は静かに形を変える。棘がなくなり、角がとれて、柔らかいものとなる。
きっとこれまで、この地を訪れた多くの人々が同じように安らぎを見出し、そして時にはその安らぎの中から新しいインスピレーションを見つけてきたことだと思う。
だからこそ、世界から人々が集い続ける。
自分たちの身をいつでもそんな環境の中に置けるようにしたいし、そしてこの地を世界に紹介する場所として、宿を構えたい。
また一方で、少しおこがましいかもしれないが、都市化していくこの街で自然と文化が埋もれないよう、ホテルとして出来ることを模索していきたいとも思う。
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LCCが勢力を付け、以前とは比べものにならない程安く世界を飛べるようになった。
どこに行っても4Gが繋がり、パソコンさえあれば働く場所を選ばない人達が増えている。
同時通訳のテクノロジーが進み、言語の壁を感じなくなる日も近い。
世界中で多様化する宿の形。そんな中で我々が次に描くホテルとはどんな輪郭をしているのか。
今回はここBaliで、特に体験に焦点を当てて考えてみる。
ホテルの未来を考える。toco./Nui./Len/CITANを手がけるBackpackers' Japan代表、本間貴裕のノート。