ロボット相撲の過疎化が進む理由
ロボット相撲とは
ロボット相撲は、今や世界中で行われているロボット競技の一つです。
1989年から行われており、大変歴史のあるロボット競技となっています。
ルールは簡単で、直径154cmの鉄板(土俵)の上に 1 VS 1 の形式でそれぞれロボットを配置して、相手を押し出した方が勝ちです。
プログラムを組んで自動で戦う自立型と、手動で操作するラジコン型の2つの部門が存在します。
大会はまず地区大会が行われ、勝ち抜いた選手は両国国技館で行われる全国大会に出場する権利が与えられます。
より詳しくは公式サイトなどで確認してみてください。
過疎化について
30年以上の歴史があるロボット相撲ですが、その競技人口は年々減少しています。
かつては9つの地区で開かれていた地区大会も、今や縮小、合併して6地区でのみ開催されています。
ここではなぜ過疎化が進んだかについて、私の意見をまとめていきます。
1:新規参入のハードルが高すぎる
現在のロボット相撲は何のコネもない初心者が独学で始めることはできません。100%無理です。
まずマイクロマウスや二足歩行ロボットなど、他のロボット競技で見られるスターターキットや完成済みロボットなどの類が一切販売しておりません。
つまり1から自力で設計、加工、回路開発を行う必要があります。
そして、ロボット製作の知識についても外に出ているものはほとんどありません。「ロボット相撲 作り方」などで検索しても詳しいことは一切出てこないと思います。
万が一出てきたとしてもそんなロボットでは試合に出てもボコボコにされるだけです。
なぜかというと、ロボット相撲の選手は基本的に自分のロボットの情報を他のチームに教えることを嫌います。
試合中以外はロボットを隠して見えないようにする人なんてざらにいます。
これは自分のロボットの情報を与えてしまうと事前に対策されてしまい、試合に負けやすくなってしまうからです。
そのため、ロボット相撲用のロボットを製作するための情報はコネがない場合は何一つ手に入りません。
頼み込んでも教えてくれない人がほとんどでしょう。
あと、普通に制作費が高いです。どれだけ安く作っても10万円はかかります。
他にもたくさんありますが、以上のことを踏まえると初心者がこの競技に独学で入ることは不可能です。
競技の歴史が浅い頃は皆探り探りだったので新規参入もそこそこあったようですが、「強くて勝てるロボット」が体系化してきた近年では新規参入者は全くいません。
人口は減る一方です。
2:強いチームが上位を独占する
ロボット相撲は"強いロボットを作れる人"がいるチームが強いです。
全日本の部は年齢制限も無ければ各チームの出場台数にも制限がありません。
自立型の場合はプログラムを選んでリモコンを押すだけなので操作スキルもいりません。
そのため一人でも知識がある人がいて、強いロボットを作れるのであれば、あとはそれを量産して適当な人を用意すれば簡単に上位を独占することができます。
これは特に高校生チームにおいて顕著に現れます。
ある年の大会で上位を独占した高校が次の年からは全く勝てなくなり、同地区の他の高校がその高校のロボットそっくりなロボットで次の年の大会を無双することが多々あります。
これはロボットを作れる先生が転勤したためです。
生徒は先生の指示通りにロボットを作るだけなので、自分でロボットの全容を把握していない人がほとんどです。
というか生徒が適当に作っても弱いロボットが出来上がるだけなので先生が許しません。
そのため、たとえロボットが残っていようとも整備もまともにできないので先生がいなくなったチームは弱くなります。
逆に新しく強い先生が来たチームは指示通りにロボットを作ればいいだけなので確実に強くなります。
このため、強い先生がどこかへいってしまった高校はすぐに弱体化して部員も減っていき、廃部します。
新しく高校生が部活を立ち上げようにも知識のある先生がいない場合は立ち上げることができません。
地区大会の高校の部は縮小するばかりで、現在はいきなり準々決勝から始まったりします。
もう地区大会なしでいきなり全国大会をやってもいいと思います。
3:「自立ラジコン型」の存在
ロボット相撲は「自立型」「ラジコン型」の2部門に分かれていますが、ルールの差はプロポで操作する or プログラムを決めて自動で戦わせる、の違いぐらいです。
両部門とも操作方法さえ守っていれば、どのようなロボットを使用しても自由なルールになっています。
そこで近年生み出されたのが、ラジコン型部門に自立型と同じロボットで出場してくる「自立ラジコン型」という存在です。
これはそのままの意味で、ラジコン型部門に出場して試合が始まった途端にプロポのボタンを一つ押すと自動で戦い出すロボットのことを指します。
センサーで敵を感知し、高速で敵を捉える自立型ロボットは人間の反応速度を高く超えており、並のラジコン型には簡単に勝つことができてしまいます。現に自立ラジコン型が優勝した大会もあります。
この行為はルール上反則ではありません。むしろ公式でも認知されており、問題ないことが明記されています。
ラジコン型は自立型よりもロボット製作のハードルが低く、初心者の多くはラジコン型に出場していました。操作技術でワンチャンスありますからね。
しかし、ある年から自立ラジコン型が急激に増えたことにより純粋なラジコン型ロボットの多くは活躍の機会を失ってしまいました。
自立ラジコン型が出てきた当初はかなり批判が多かったのですが、今では当たり前の存在となっており、実質的に「完全自立型部門」「自立&ラジコン型部門」の2部門となっています。
この体制に嫌気が差し、抜けていったラジコン型の選手もいます。
4.その他
個別に書くほどではない原因を箇条書きで紹介します。
・マナーの悪い選手が多い(反則行為の隠蔽など)。
・量産できる金と人員のあるチームが結局強い。
・世界大会を推しており、実際に開かれているが実質的に日本の一強状態で全然盛り上がっていない。
・運営にロボット相撲の知識がない。
・公式で練習試合、交流会などを行える機会がない。
多分他にもあります。
以上
ほとんど現体制への文句みたいなものになってしまいましたが、個人的にもこの過疎化の流れは今後も続くと思います。
最近では500g級、ミニ相撲などの初心者が参入しやすいようなプラットホームも考えているようですが、いまいち盛り上がっていないようです。
数あるロボット競技の中でもかなり選手によって個性が出る部類であり、ほんとに面白い競技だっただけに現在のこの状況は非常に残念です。
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