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ぼくはくま|#青ブラ文学部
地獄で最も恐れられた白魔は、実は笑顔の似合う幼い男の子だった。真っ白な髪と透き通る肌を持つその姿は、闇夜に浮かぶ月のよう。人間の魂を食べることが仕事だった。
ある日、白魔は小さな掟破りをした。人間界に忍び込んだのだ。
「ぼくはくま」
幼稚園で出会った女の子に、そう名乗った。
「変だね。真っ白なんだもん」
女の子は首をかしげたが、すぐに笑顔になった。シーソーに乗って二人で遊んだ。上がったり下がったりする度に、女の子の笑い声が響いた。
(これがたのしいっていうきもちなんだ)
白魔は魂を食べることも忘れて、毎日を過ごした。しかし、ある朝のこと。
「おかしいわね。昨日まで元気だったのに」
母親の声が震えている。女の子は高熱で倒れ、目を覚まさなかった。
(このままじゃ、おねえちゃんがしんじゃう)
白魔は地獄の大掟を思い出していた。悪魔の魂を人間に与えることは、最も重い禁忌。でも――。
「おねえちゃん、おきて」
白魔は自分の魂を分けた。すると、女の子の頬に少しずつ色が戻り始めた。その代わり、白魔の体が透明になっていく。
「どうしたの?」
「ぼくはくま。ずっとおねえちゃんのなかにいるよ」
お題が全てひらがなだったので、ひらめきました
白魔導士ではありませんよ
お題は上記です
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