伝言

言語能力が灰になっていく
風が吹き、砂丘の向こうへとながれていく
だんだんとなにかの名前が口に出せなくなっていく
生クリームの上に積み木が重なって連なってく言葉をつかんで彼方
口を塞いでいるのは、私なのか
私を先週からずっと見続けているお前は、お前のせいじゃないのか
思いたつ
誰かに文を綴る
それは罪だと感じた
看板の文字が作り物みたいだ
物もうまく覚えられなくて、ふと
「誰の記憶だったかな」というぐらい無関心な装いでいて真実なのだ
看板の文字が作りものなのはなぜだろう
私の指が、作り物なのはなぜだろう
お前を指差す
私が指差す
鏡?
去年の私は私?
今のあなたはあの頃のあなた?
疑問が積み重なって、めんどくさくなっていく
私は昔から手紙がかけない
文字を連ねることができない
箇条書してるみたいに 。 が続いていく
そういう自分が嫌だった
そんなふうに、今も会話の合間に 。 を置いている今はどうだろうか、嫌いじゃない
むしろそういった私を嫌う人間を煙たがるぐらい
言語能力を返して
記憶能力を返して
「えっと、え、えっとね」
何だっただろう
何を返してと言おうとしたんだろう
それならば、忘れてしまう前に言おう
「ショートケーキが一番好き、いちごは昔酸っぱくて苦手だったけれど今では好きな食べ物だよ」


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