人形たちの白昼夢。
千早茜さんの12のお話です。
大好きです! 幼いときにみた悪夢のようで、青春時代の後悔のようで、
背伸びしてはいったフランス料理店のようで、
ひとときたくさん持っていた人形たちを思いだし、 悲しくなり、せつなくなり、怒りと喜びとさまざまな感情が沸き起こってきます。
コットンパ~ルでは死んだ蜘蛛が中に入っている大粒のネックレスを首につけ足首には青いリボンが巻かれている女性と人形を大切にしている男性との会話から始まる。
人形がそばにいつもいる。 美しくてとてもフェティッシュなエピローグ。
ここに出てくる男性はのちの物語の皇帝を書く残虐な性癖の男子にどことなく似ている。
もしかしたら成長した姿?と思わせる。
ブッタネスカ~赤い服を着た娼婦の館の話。
設定だけで充分に蠱惑的なのに、とっぱじめから鮮やかな青と鮮烈な赤、命の血飛沫から始まる。
残酷で悲しくて鮮やかに美しい作品だ。
身分制度の切なさ、切なさを越えた悲しさ。
茜作品には度々このような深い切なさと美しいほどの残虐さが 感じられる。
いきづらさ。
しかし主人公たちはけっして
そこから這い上がろうとはしない。
いまある自分をありのままに受け入れて笑い生きる。
魚神に通じる救いようのない運命、だけどそれはただただ生きようとした主人公たちの強さと希望であったような気がする。
死ぬ瞬間を産まれた瞬間と思うグレナデン。
カンタロ~プにまた探して貰えるようにうんと口を大きくあけて笑う。
カンタロ~プは教えたから。 泣くのも苦しいのも 悲しいのも笑っているんだよって。
辛い赤いパスタを食べる場面と、沢山の血液がとろとろ流れ溢れる場面。
青い空と高貴な身分の青い服、青いりぼん。
色彩の 魔術師だなと思った。
茜さんは食べ物や匂いや色や香りを書くのが本当に巧みだ。
読んでいるとお腹が空いたり、(汗)がでたり、鳥肌がたったりしてくる。
体感的作品と言うのかしら?
残酷なお話なのにヒロインが最後はしあわせそうで良かったな。と本当に思った。 そして泣けた。
この一作で四回泣けた。
本当に悲しいこと、さらさらとたんたんと書き綴る巧みさ。
悲しいことはたんたんと書かれると読んでいる私はもっと深く悲しくなる。
うんと泣いたあとにはいいものを読ませて貰ったと爽やかな気持ちになる。
茜さんの不思議なマジックだ。
(^-^ゞ
スブニ~ル。 このタイトルを読んだときかつて~ス~ベニ~ルショップで働いたことのある私はもしかして?と思った。
不思議な招待状がやがて暖かな物語となってゆく。
それにしても、こんなにも詳細なレシピで料理を語る~多分フランスで話題の最新式科学料理のフルコース?~ ひとはわたしは他に知らない。
一品一品が情景と重なり、仔細に描かれ、美しいフランス映画のようだと思った。
癒される一作です。
あぁ、お腹が空いてきた。(^-^ゞ
リュ~ズ
私はこの作品集の中でこのお話が一番好きだ。深く心に残った。
いっぽんの反戦映画を観た後のような感動が体中に染み渡った。
不思議な美しい人形たちに連れていかれた森には青いリボンがたくさん、
人形たちは人間のようだけれど感情はなく、ある使命のために造られた。
悲しい使命。
ヒロインと不思議な執事。 人形たち。 もうこれだけで心が奮い立つ。
まだ未読の皆さんのために、細かく書くのはやめておきます。
ビ~スト
獣、怪物と言う意味。
同じ名前のカフェで働いたことがある。
美味しい肉料理の店だった。
もののけ姫を思い出した。 人間の欲深さ、残虐さを風刺している。
欲の深い民と慈愛に満ちた民と美しい獣たちと自然と対話できる山の娘、山の守り神。
恐ろしく血なまぐさいラストになってゆくのだが~血や肉を書かせたら天下一品~ラストは美しく終わって嬉しかった。
ナウシカのようなアニメ映画になったらいいな。子どもたちにも大切な事を教える事ができる。
人間の生き方を考えさせられる優れた一作。
モノクロ~ム。
はじめの一行でここがどこか、わかった。
何度もみた映画を思い出した。
いづれも場所は同じ。
いきどおりと憤慨、正しい事を知る権利、やられてもやられても屈しない強い信念。
この物語も映画化されたら、たくさんのグラミー賞がもらえそうだ!
レ、ミゼラブル
をはじめて観たときと同じ怒りとしかたなさと感動がある。
茜さんの筆力って全く計り知れない。
アイズ
ポエム、散文詞、児童文学のような短くインパクトのある作品。
さまざまな様式を巧みに使いこなす凄いひとだ。
ワンフォ~ミ~、ワンフォ~ユ~。
紅茶好きの茜さんらしい一品だ。
紅茶をいれる場面の細やかさ、愛情たっぷりに登場人物たちを描いています。
ちょっぴり悲しく寂しくなる場面かあるけれど青いりぼんが最後を美しく可愛らしく締め括っています。(^-^ゞ
私も紅茶が飲みたくなりました。(^-^ゞ
マンダリン
皇帝の話をかく少年と蜜柑が好きな女の子のおはなし。
血生臭い残虐さを渇望する主人公はまるでドラキュラのよう。
ラストは大好きなこを目の前にして耐えねばならない渇望を拷問としたのか、それとも愛する子が病に苦しむ様子をみて拷問とするのか。
少年の~これは一体どんな拷問なんだろう~ が思われるところです。
深い。
ロゼット
天才的時計職人の偏屈な男。
男の心を溶かした少女。
少女の死によって殺戮人形をつくってしまった悲しい男の仕返し。
最後は。 。。
外国の童話のような ちょっと残酷で美しいお話し。
美しさの中に残酷さや深い悲しみを織り混ぜて造り上げるのは茜さんの独特な個性だ。
好きなところ。
モンデンキント
まるで自伝?と思ってしまうような読後感。
ナルニア王国や月の光り、図書館。すきなモチ~フに彩られたほろ苦い青春。
ちょっとミステリーな場面もあり 賢い二人を思わせる。
ミステリー小説や冒険物語が好きな二人だからこその絆なのだろう。
ヒロインが諦めずに出版したところでとても嬉しくなった。 (^-^ゞ
諦めないで夢を叶える。なんて素敵な事だろう! (^-^ゞ
世界が月の光で輝いて見えるようだ。
中学のとき、はじめて聴いた月の光、あまりの美しさにドビュッシーを尊敬した。
ブラックドレス
締め括りに相応しい歌だ。 おしゃれでセンスがよくて美しいものが大好きな茜さんらしいエピロ~グだ。
いまこうして12のお話をよみおえて頭のなかが鮮やかな赤と青で染まっている。
こころの中は哀しみと喜びと切なさでいっぱいだ。
胸奥に染み入るような物語。
ただ、ありがとう。といいたい。 m(__)m
ありがとう。
素敵なお話を残して下さって。
深く感謝いたします。
世界中のひとに読んでいただきたいと思いました。
そうしたら平和になるのに。と。
じゅね
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