早春の北。
桜木しのさんの八戸まのんが登場する小説を思い出した。
八戸のあめせんべいを噛みしめる。
堅く甘く懐かしい味。
北へかえると懐かしい菓子たちに再会する。
ごかってや羊羹、南部せんべい、がらな、かつげん、トラピストクッキー、白い恋人。
一日中、母と叔母と茶会をしている。
たべて、飲んで話す。
母は歩けないから横になったまま、すこし笑って聴いてくれている。
叔母は両膝を痛めていて、やはり椅子に座りっぱなし。
窓辺に集まる雀を眺めながら、茶会は一日中続く。
外には雪が降っていて、凍えて、母も叔母もあるくことができない。
部屋を締め切り、ストウブで暖めて、起きていられる間、話し続ける。
苦しいこと、つらいこと、医師とはなしたこと、治療のこと、妹たちのこと、甥のこと。
話は多岐にわたる。
しばらくはボケないだろうと安心した。
話し、茶を飲み、笑ったり、泣いたり、怒ったり出来ているうちは。
長生きしてほしい。
話し相手になってくれている叔母には感謝している。
吉報がある。
長く入院していた友人たちが、退院して自宅療養になった。
病院と自宅の往復の毎日のようだが、一歩前進。
自分の好きな時間が持てるしあわせを手に入れたろう。
この冬、友人の何人かが入院し、手術をうけ、退院し自宅で療養している。
治してまた一緒に茶ができる日が待ち遠しい。
時間は∞ではないが、友人たちには、このさき、ゆっくり、過ごし、茶をのみながら、菓子を食べながら、話す時間をたくさん持ってもらいたい。
ライオンのおやつをよんだひのことを思い出す。
あの日、大切な友人が亡くなった。
彼女は最後に食べたいおやつを食べることができたろうか。
いずれ、わたしも彼女と同じところへ逝くだろう。
そうしたら、また、一緒に菓子を食べ、茶をおかわりしながら、たくさん話そう。
しばし、待っててほしい。
命は終わるのではなく、あらたに繋がるための儀式なのである。
死とは、新たなる命をいただくための準備なのだ。
私たちは永遠を生きている。
生命と死について、深く考える北の大地での日々だ。
わたしも、やがては死ぬのだから。じゅね。
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