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なぜ建築士に経営思考が必要なのか

「建築士のための経営入門」をコンセプトに掲げ、建築士の皆さまに経営の知識を提供する、会員制動画メディア【建築と経営のあいだ研究所】
通称“あいだけん”。

建築士が正しい経営思考の基礎や体系を学ぶためのコンテンツを、これまでに170本以上掲載してきました。

 今回はメインコンテンツである【建築設計事務所経営論】の【A-1】から、そもそも「なぜ建築士に経営思考が必要なのか」について、コンテンツを運営する高橋寿太郎さんとシブヤタカアキさんお二人の対談を通してご紹介したいと思います!

高橋 寿太郎/創造系不動産
シブヤ タカアキ/ファシリテーター


ちなみに本編動画を含め、あいだけん動画コンテンツの一部を公式Youtubeでも配信しておりますので、こちらもぜひチェックしてください!


 

なぜ建築士に経営思考が必要なのか。その3つの理由。

 

シブヤ
「なぜ建築士に経営思考が必要なのか」。なぜだと考えますか?

左:高橋寿太郎 / 右:シブヤタカアキ


寿太郎
経営
というと、建築設計事務所の方や建築士・設計者の皆さんからすると、「本業とは別の分野」というイメージがあるのではないでしょか。つまり「自分たちがやりたい建築を作るために、嫌だけどやんなければいけない、細々とした雑務。

これは大きな間違いで、逆です。

自分たちがやりたいことをやるための、まさに土台なんです。

自分たちが実現したい建築、実現したい空間、それを持続的に、中長期的に、長く実現させ続けるための、人やお金や情報。そういったことが経営なわけです

その土台作りが、経営学を学ぶ1つの大きな理由かなと思います。


シブヤ
建築士の皆さんが自己実現をするために、その土台に経営があるよということですね。

  

寿太郎
その通りです。それを初めて建築設計事務所に完全にカスタマイズした計画というのが、「建築設計事務所経営論」です。

 

シブヤ
一方で、建築の皆さんの身近な課題として、「次の仕事どうやって取ってくるのか。」があると思います。ここに経営思考は、どう効いてきますか。

 

 寿太郎
そこも大きな経営論のテーマです。
平たく言うと、「仕事をどう取るか」ということなのですが、【マーケティング】や、そういった分野の【経営戦略】。そういったことになります。結局、建築設計事務所も1つの大きな商売。商い。ビジネスのうちにありますから、「相手がある」話なのです。

その相手に対して、どのような関係性を作っていくか、しかも短期的にではなくて長い期間でどう作っていくか。ここに真剣に向き合わなければいけないです。

 

 シブヤ
なるほど。「仕事を確保してくる。」「仕事を取ってくる。」
ここを経営思考で出来るようになれば、設計事務所はうまく進んでいくということなんですね。

 

寿太郎
そうですね。そこに対する学びというのが、今まで建築界にはほとんどなかったですから。
私、「自分でどう仕事を取ってくるか」という風に言いましたけど、優れた色んなビジネスで、仕事が集まる会社には「仕事を取る」って言っている人はまずいないと思います。

当然「顧客の課題解決」であって、「どういう風に顧客に貢献するか」というのも、この「仕事を獲得していくため」の考え方になると思います。


シブヤ
最初は「自分のつくりたい建築をつくるための土台作り」
そして2つ目は「どうやって顧客の課題を解決して仕事を獲得していくか」

そしたら3つ目、何か「これが」というのはありますか?


 寿太郎
やっぱり2020年代になって時代がまた大きく変わろうとしています

実際に何が変わったかのかというと、日本ではインフレが来ています。単なる物価の高騰、建築費の高騰だけではなくて、いろんな建築設計事務所経営の環境が変わっていっているっていう実感が多くの皆さんにあるのではないかなと思います。

この時代に建築設計事務所を経営していく際に、そのクライアントワークによるこの収益性の波を、どういう風に少しでも平準化させるのかということ。ここは建築設計事務所経営論でも1つの大きな研究テーマになっています。

どういう形でいかにこの収益を平準化するかいうのを、いつの時代よりも現代の建築士の皆さんは考えていると思います。そこに対してもこの設計事務所経営論では切り込んでいきたいなと思っています。


 シブヤ
建築士が設計料だけではなくて、多様な報酬の受け取り方。これを考えていくっていうことですね。
今紹介していただいたこの3つ。

  1. 自分がつくりたい建築をつくるための土台作り

  2. 顧客の課題を解決しながらも、仕事を獲得していく

  3. 事務所経営の安定化。少しでも安定になるような多様な報酬の得方

これらを考えるのに、経営思考がマッチしている。必要である。というわけですね。

 

 寿太郎
そうです。過去のやり方をただ踏襲するのではなくて、新しいやり方を考えていかなければならない。まさに経営論・経営学が必要なタイミングなのかなと思います。


建築設計事務所経営論の8つのカテゴリー


シブヤ
建築士の皆さんに経営論・経営思考が必要になるタイミングは今だ。というお話がありましたけど、皆さんにどうやって経営思考をお届けするか。サポートしていくか。これが建築設計事務所経営論ということですね。

 

寿太郎
「建築設計事務所経営に適した経営学のカテゴリー体系っていうのは、どういうものがベストなんだろう。」とシブヤさんと考えました。

その結果が、8つ。

【A】「概論」
【B】「マインド」
【C】「マーケティング」
【D】「戦略」
【E】「人と組織」
【F】「お金」
【G】「経営環境」
【H】「事例」


建築士が学ぶべき経営論が体系化されている

 特に独立・起業しようとする設計事務所の方であるとか、設計事務所でもマネージメントマネージャーになっていこうとする皆さんには最低限知っておいてほしいなと思う、本当に最低限の内容だと思います。

 

シブヤ
簡単に、その8つのカテゴリーをご紹介していきたいと思います。
まず【A】は「概論」ですね。

 

寿太郎
ここでは、経営の6ピースの概念や、建築設計事務所経営論の8つの体系を説明しています。

 

建築と経営の6ピース

シブヤ
【B】の「マインド」はマインドセットが、経営者として重要なキーワードであろうというところですね。

経営者じゃない時と経営者の時の立場で、自分のマインドセットがどう変わるのか、またバイアスがあるのか、そういったところを紹介しています。

マインドセットの事例

寿太郎
私もいち経営者なんですけども、「9割ぐらいがマインドなのかな」っていう風に思います。

 

 シブヤ
続いて【C】の「マーケティング」ですね。皆さんが経営をどう分析して、どう戦略を立てて、というところの基礎的な部分を今回は動画で作成しています。
  

寿太郎
しっかりとした基礎の知識体系っていう感じですよね。
マーケティングという言葉が氾濫していますから、しっかりとマーケティングのいろはをここで学んでほしい。


シブヤ
寿太郎さんもよくお話をするバリューチェーンもここでご紹介していますね。


設計事務所のバリューチェーン

 寿太郎
そうですね。設計事務所においてバリューチェーンを考えるというのは本当に重要だと思います。それはなぜかというのが動画の中で語られているので是非ご覧ください。

【D】は戦略になりますけども、「戦略」という言葉もマーケティングと同じぐらい氾濫しているんです。営業戦略であるとか、人事戦略であるとか、もう色んなものに戦略つければ戦略って聞こえてくるんですが、そうではないんです。戦略っていうのはきっちり定義がある。

その業界の成功要因は何かと、つまり建築設計事務所をやろうと思ったらこれだけは外しちゃいけないんだよっていうのがあってですね。でもあまりにも設計事務所の中に居すぎると、それが何か分からなくなってしまう。だからそういう他の業界と比較しながら戦略的に考えていく。というのを【D】で話しています。

 

シブヤ
設計事務所のネーミング
なんか非常に分かりやすかったですね。自分の会社のネーミングを何にするのかっていうのを、「経営戦略的に考えるとこうだ!」っていうことが動画の中で語られていました。

【E】「人と組織」は2人で割と作りましたけれど、人と組織の部分、やはり建築士、建築設計事務所の経営で少し取り残されている部分かなという風に感じています。

 

寿太郎
建築物を考えるというのは、そこで使う利用者のことを考えるということで、人とか集団とかを考えるのに長けている。

一方で、経営的な面で、人や組織をどう作っていくかというのは、他の業界から比べるとやっぱり建築業界は一番遅れているのかなと。逆に言うと、そこが一番伸び代の部分だと思うんですね。そこについて、シブヤさんのレクチャーでは、リーダーシップの話であるとか、組織構造の話であるとか、多岐に渡っていて非常に参考になると思います。

 

 シブヤ
【F】の部分では、建築業界ではちょっと苦手系のお金の部分も。 

 

寿太郎
人が1番遠いのかなというお話もしましたが、やっぱりお金もそうですね。

ざっくり内容を説明すると、お金の仕組みを基本的に説明して、あとは事業ライフサイクル曲線と投資、創業期であるとか、中間期であるとか、円熟期にどういう投資すればいいのかっていうのをカテゴリー分けして説明しています。

あとは、借金経営はありなのか。と、経営者が持つべき貯蓄額ということで、ほぼタブーに切り込んでいる感じはあるんですけど、しっかり説明していますので、ぜひ早めにご覧いただければなと思います。

 

 シブヤ
先ほど「なぜ建築士が経営思考を学ぶべきなのか」っていうところの中で、経営の安定みたいなことがありましたね。非常にこの【F】のお金が関わっていて、先ほどの借金とか貯蓄額を持つべきなのか、これは設計事務所の安定に対してに大きな要素かな。と思いました。

【G】「経営環境」の部分ですけど、こちらは矢部講師にご登壇いただいて、経済の基本の「き」、これを我々も学ばせていただきました。

 

矢部講師

 寿太郎
マクロ経済とミクロ経済
の説明から始まるんですけど、ほぼそういういった知識が全くない状態で経営者としてやっていくっていうのはやっぱり不安なものなので、私も一緒に学ばせていただきました。

 

 シブヤ
最後のカテゴリー【H】のカテゴリーは「事例」になっています。

 

寿太郎
事例というのは、実際のケースを想定して「こういうケースに遭遇したら、あなただったら建築家として、経営者として、どういう風に対応しますか?」という、いわば模擬戦のようなものです。

単なる机上の知識ではなくて、「こういう状況であなたが持っているその経営学的な能力で何をしますか?」っていう正解はない問いに向き合うことで学びを得ることができます。今回もとある3dプリンターメーカーから設計の依頼を受けた時に、あなただったらどういう風に対応するか。という正解がない問を立てて、それを説明しています。

  

高橋・シブヤが推す動画

 

シブヤ
【A】から【H】までのカテゴリー
を簡単にご紹介してきました。

その中でも、「特にこの動画を見てほしい」、「まずはこの動画見てほしい」というのはありますか?

 寿太郎
私が担当した中では、やはり【D】の戦略、経営経戦略ですね。何でもかんでも「戦略」ってついて、何が本当に戦略的なのか、戦略って一体何なのかというところから、戦略的ではないというのはどういうことなのか。というのをしっかり説明しています。もう1本は、やはりお金のところですね。

貯蓄額から、借金の話から、投資の話から、色々してはいるんです。
ですが、経営学ではアカウンティング(会計)と、ファイナンスという2つの分野を合わせて、その特に基礎的なところを、【F】お金の項で説明しています。特に基礎的な財務会計の呼び方とか、管理会計の作り方とかですね、そういったことが説明されています。この【F-1】設計事務所経営のお金の仕組みについては、日々の活動がどういう風にお金に関わってくるのかっていうのを図で説明していますので、是非ご覧いただければなと思いました。

 

 シブヤ
私の方でも1本あげさせてもらうと、【B】のカテゴリー「マインド」ですね。その中でも【B-1】。シンプルに経営のマインドセットという講義がありますけど、マインドセットの持ちようで、結果が大きく変わってくるんだよ。ということを、説明させてもらっています。具体例を交えて説明していますので、是非そこで色々吸収していただきたいなと思います。

 

おわりに

 

寿太郎
建築設計事務所経営論でも、そしてそれを扱っている建築と経営のあいだ研究所でも、ベースになっているのは、『建築と経営のあいだ』という学芸出版社から出ているオレンジ色の私の書籍になっています。

『建築と経営のあいだ』学芸出版社

建築設計事務所経営論では、それをさらに深掘りするような形になっているので、辞書的な意味でも、ガイダンス的な意味でも、書籍を手元に置いて、位置関係を確認しながらご覧いただければ、と思っています。

冒頭に言いましたけども、「経営を考える」というのが建築設計事務所の本分とは違った、本分を成り立たせるための雑務、という風に考える時代はやっぱりもう終わっていると思うんですね。その本分をより効果を高めるため、より発揮するために必要な土台という風に考えて、一体不可分のものと考えて学んでいただければなと思います。

 

知らないことがたくさん出てくると思いますし、全く別々の分野を学ぶんだったら、なかなか遠い異国の知識のようなものかもしれませんけど、今回私とシブヤさんはもう完全に建築設計事務所に特化した経営論、つまり建築士の皆さんにだけ向けられた経営論を作っていますので、結構ね、楽しいと思います。

楽しみながらクリエイティブに経営学を学んでいただいて、そしてこれを学んでどうしていただきたいかというと、「自己実現」。自分たちがつくりたい建築をつくってほしい、しかもそれで収益を高めてほしい。会社の収益、個人の収益を高めてほしいんですね。そしてそれを中長期的に長く続けてほしい。

短期的に1回とか2回とかではなくてということですね。それを実現して、よりよい建築人生を送っていただきたいという風に思っています。


建築と経営のあいだ研究所って?

 
いかがでしたか?
建築と経営のあいだ研究所では、今回ご紹介した【建築設計事務所経営論】をはじめとして、【インタビュー動画】【ショートレクチャー】の3つをベースに動画コンテンツを提供しています。

【インタビュー動画】では、建築業界で優れた経営力を持つ先駆者の方々に、直接インタビューして、日々の活動や建築設計業務を「経営」の目線で掘り下げています。
過去には、谷尻誠さんや藤村龍至さんなどの著名人をはじめとして、レジェンド長谷川逸子さんから、勢いのある若手の高橋真理奈さんまで、幅広い面々にお話を伺いました。

【ショートレクチャー】では、インタビュー動画の内容に倣ったテーマで、各講師がインタビュー動画を深堀りした知識を提供してくれます。

また、会員限定のレクチャーや、会員同士のセッションも開催されていますので、メンバー同士の悩みの共有や、新しい人脈形成にお役立てください。

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